今回の取材をした第7戦の京都。谷田川選手が口にする目標の困難さに直面する場面があった。
最高速に達するストレート、4速から1速まで一気に減速してのコーナリング。1本目は止まりきれず土手にヒット。リヤバンパーを落としてパドックに帰ってきた。
その時のインカービデオを見た。ストレート、谷田川選手は自分の巻き上げたホコリで前方が全く見えなくなっていたのだ。その先にフルブレーキングの減速があると分かりながら、砂ボコリの中に飛び込んでゆく映像。思わず息を呑んだ。
道具を信頼できなければ、そんな芸当は絶対にできない。オーバーオールを狙うということはこんなにもリスキーなのかと感じさせられた。
「今年は2勝くらいしかしてないんじゃないかな? Dクラスとの争いは。
勝たなきゃ意味ないけれど、自分のスタイルは曲げたくない。そこですよね。今日はまさに、そのリスキーさからミスが出ちゃった結果ですね。そんなことではDクラスに勝てないですよね、SC3はもとより。
今まで食えていたのだから、やっぱりDを食わないと」
その日の谷田川選手の結果は2位に終わった。表彰台の2位の位置でメダルを受け取る。会場を後にする谷田川選手に、黒い帽子が似合ってますねと声を掛けた。すると、
「そう? 昔を知っている人は、みんなそう言うんですよ。自分じゃ意識したことなかったんですけれどね」
と笑顔で応えた。
タイヤを使いこなすことに必死だった2010年シーズン。不安に対して自分のスタイルを貫き通す中で見えた光明。そして8回目のチャンピオンという称号。
谷田川選手は次のシーズンに向けてテストの予定を組み込んだ。
「第6戦でチャンピオンも決まったので、この後のテストは行かなくてもいいかなとも思っていたんです。正直な話、経費もかかりますし。
でも待てよと、谷田川が行くことでタイヤが良くなる可能性があるんだったら、と。ADVANユーザーが速く走れるタイヤを作りたいって思いました。参加して今後の手助けになればいいなと思ったのです。
だからユーザーに対しては、これから開発してドンドン良いタイヤになるから、ということを言いたいですね」
ADVANのチャンピオンドライバーとして迎える2011年。さらなる活躍を期待したい。