見事に公約を果たした谷田川選手。だが第2戦からの5連勝という結果の裏側には、試行錯誤の連続だったという跡が見え隠れする。
まず第一にドライバーにとってタイヤを変えることは大きな決断。タイヤの特徴を体に覚え込ませ、瞬時に反応する。ましてやダートトライアルのように常に路面状態が変化し、再現性の少ない競技では路面とのマッチングに神経を使う。
これまで7度のチャンピオンを獲得している谷田川選手を以てしても、タイヤというマテリアルが変わるということはリセットに等しいことだ。
谷田川選手は去年まで、ADVANにどんなイメージを持っていたのだろう?
「マイルドなタイヤだなっていう印象があって、履いてみたいなって思っていました。超硬質路面になるとADVAN A036があって、丸いタイヤでそういう路面に合っているというイメージはありましたね。
今年の2月に初めて履いてみて練習やテストも含めて、とにかく走り込みましたよね」
第二に、今年に入って選手のコメントで顕著に現れてくる傾向がある。見た目と実際のグリップ感に差が生じるという言葉が増えた。全日本戦での路面整備の方法に、明らかな変化が現れているのだ。
「今年に入ってそういう路面整備が多くなってきたのかな?
とにかく固まっている路面が多い。今日なんかもケミコン(硬化剤)がだいぶ入っているし、圧をかけて固めていましたね。
それから今年は、2本目にA036で勝負という天候や路面が多かった。1本目それに近い路面になってくればA036でいったほうがいい。慣れるという部分もあるけれど、カバーしている領域が広くて使えるんですよA036は。
丸和の時(第2戦)はウェットだったのですが、1本目からA036を使いました。その時は、事前テストでかなり丸和を走り込んでいました。A035とA036を比較してみたら、A036のカバー領域が広いことが分かりました。そういうデータもあったのでA036を使いましたね。
今年は超硬質路面用タイヤを使っていることの方が去年に比べて多いですね」
確かに路面は走行前の慣熟歩行で実際に歩いて確認できる。だが硬くてグリップが良さそうに見えても、実際はスリッピーなフィーリングも多かった。
そして開幕戦を迎える。
「負けちゃいましたねぇ・・・、A035を履いて。自分の手応え的には悪くないと思いました。だけどタイムを聞いて、『エッ? なんで?』って。
それで第2戦の丸和までにA035とA036のタイム比較テストを3回くらいしました。内圧を色々変えて、そのタイヤの一番いいところのデータを取りました。
それで、まだ砂利があったり、ちょっと濡れていてもA036使ってみようってなったのです。そうしたら『アレ? こっち(A036)の方がタイム出るね』って。
それもあったので、ある程度迷ったらA036で行っちゃおうって。丸和の第2戦はウェットでしたが、A036を選択しました。周りからは、『えっ! もうA036なの?』って言われましたが、自分の中ではこの路面だったらA036のほうがタイムは出ると。
もちろんA036で走るとリスキーな路面もありましたが、A036の特性を活かして走らせればタイムが出るということは分かっていました。
それでA036を使ったんですよ。まぁ、きわどい時も多かったけれど(笑)」