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WTCCに初めて挑む日本人ドライバーとしてモンツァに渡った織戸学選手と青木孝行選手。
限られた短い時間の中で驚きや戸惑いを感じる部分もあったものの、
レギュラードライバー達に一歩も引けをとらない実力を見せて予選を終了。
いよいよ迎えた決勝レースではWTCCらしくスタート直後のアクシデントもあったものの
日本人同士で見応えあるバトルを展開してくれたのでした。
  
30台のマシンによって造り上げられた隊列がゆっくりと動き出す。
2008年10月5日、イタリアはモンツァ・サーキット。WTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)の第19戦、モンツァラウンドの第1レースがいよいよスタートの時を迎えた。
30台の中には日本人として初めてWTCCに挑戦する織戸学選手のシボレーラセッティ、青木孝行選手のBMW320si、そして谷口行規選手のホンダアコードユーロRの姿もあった。

ローリング方式でスタートする第1レース、織戸選手は20番手、青木選手は22番手からその瞬間を迎えた。
グリーンシグナル点灯と同時に勢い良く第1コーナーへと飛び込む各車。そして、そこではジェームス・トンプソン選手のマシンが姿勢を崩してコース中央でスピン、大混乱となっていったのである。
その瞬間について、青木選手はこう語る。

「僕はスピンしたトンプソンの真後ろにいたんです。だから1コーナーでは、トンプソン選手のアコードのドアに描いてあるホンダのマークが目の前に見えました(笑)。
『うわぁ〜、これは大変なことになってるわ〜!』なんて最初は他人事のように思っていたのですが、実際はそんなことを言ってる場合じゃなかった。結局、僕もサイドから他のマシンに当てられて芝生に落とされて、危うくスピンするところでした。」


対してグリッドでは青木選手の前だった織戸選手は、スタートで思わぬ"計算ミス"が生じていた。

「WTCCは日本のレースと違って、スタートシグナルが点灯すると同時に前の車を追い越せるんです。そのことをレースの前に聞いて、ひとつの作戦を考えました。
僕の位置からでは最終コーナーをターン中にスタートを迎えると、シグナルが見えないのです。そこで無線でスタートのタイミングを教えてもらって、一気にポジションを上げる作戦を考えました。
ウチの監督がモニターの映像を見ながら無線でタイミングを教えてくれることになったのですが、よりによってスタートの瞬間にはシグナルがモニターに映し出されなかった(笑)。
これでタイミングを逸して青木選手を含む何台かに先行されちゃいました。でも、どうせ1コーナーで何かあるだろうから安全に行こうと思いなおしていたら、案の定の展開になってある意味良かったのかもしれません。」


1コーナーでの大混乱、大きなダメージを受けることも無く通過した織戸選手と青木選手。
両者のポジションは接近、お互いを意識する位置関係になっていた。


1周目の混乱もおさまり、レースは随所で激しいポジション争いが繰り広げられていく。
WTCC屈指のハイスピードコース・モンツァ。長いストレートからコーナーにかけてサイド・バイ・サイドの応酬が展開される。
そして織戸学選手と青木孝行選手は、日本国内のレースではまず見ることが出来ないような日本人ドライバー同士の激しい接近戦を、WTCCという世界の大舞台で見せてくれたのである。
このバトルについて織戸選手にまずは振り返っていただいた。

「あんなに青木選手と二人で競り合うことになるとは、最初は思ってもいませんでした。
スタートで青木選手に前に行かれて、それに自分が追いついて。青木選手を一度は抜いたのですが、直線が主体のモンツァゆえに今度は抜き返されて。
最初のうちは他にも何台か周りにいたのですが、そのうち僕と青木選手の二人でやりあっているうちに、みんないなくなっちゃって。
とにかくバトルは楽しかったですね。日本ではもうちょっと遠慮して、あそこまではやり合わないだろうね。
良く知っている信頼出来る間柄だからこそWTCCという大舞台でバトルを出来たし、日本やマカオに向けての練習にもなりましたね。」


青木選手も、この激しい織戸選手とのバトルを楽しんでいたようだ。

「1周のうちに何度か順位を入れ替えるほど、織戸選手とはやり合いました。
最初のうちは互いのマシンが"コツ、コツ"と当たっていた程度でしたが、徐々にヒートアップして(笑)。」


織戸選手と青木選手は激しい接近戦でポジションを何度も入れ替えながら、周回を重ねて行った。
そしていよいよチェッカードフラッグまで残り僅かとなり、この戦いにも決着をつける時がやってきた。
ここで青木選手は、思いがけず自分がしていた"勘違い"に気づくことになる。

「実は無線の調子が悪かったこともあって、周回数を1周勘違いしていたんです。
モンツァではホームストレートがパッシングポイントなので、『これで最終コーナーを立ち上がってチェッカーだ』と勘違いした状態で、自分がファイナルラップだと思い込んでいた周の最終コーナーで織戸選手のインを突いて『良し、抜いた!』と。
ところがストレートを立ち上がって行ったらサインボードにはもう一周という表示で『あれ?』と。そして『あ、こりゃマズイな』、と気づいた(笑)。なぜならコース上に一か所、織戸選手が凄く速い一方、僕にとってダメなポイントがあって、必ずそこで僕が前にいると抜かれていたんです。
だから、『その場所で前にいるとマズイな・・・』なんて思いながらストレートを通過して1コーナーに入って行ったのですが・・・。
そこに行くまでもなく、1コーナーで織戸選手に押し出されちゃいました(笑)。」


"押し出した"とされた織戸選手は苦笑いしながら反論。

「あれは、クルマが跳ねちゃったの!
仕方のないレーシングアクシデントでしょう(笑)。」


もちろんこの結果に青木選手が怒り心頭、という訳ではないので、ファンの皆さんはご安心を。
青木選手自身も次のように語った。

「あの場所で当たるのは仕方ないことなんですよ。確かにポジションを下げる結果になりましたが、別にムッとするような気持ちにならないんですよ。
当てられることもあるけれど、逆に当てることもあるし。WTCCを走っていると細かいことを段々と気にしなくなってくるんですね。
レース中の接触なんて何回もあるから、感覚が麻痺しちゃんでしょうね。」


第1レースは織戸選手が15位、青木選手が17位。谷口選手も21位でフィニッシュ、全員がスターティンググリッドよりもポジションを上げてチェッカードフラッグを受けることに成功した。


インターバルを置いて行われた第2レース(シリーズ第20戦)。
織戸選手は17位でフィニッシュして2レースともに完走を果たしたが、青木選手は残念ながら3周目で他車と接触を余儀なくされてリタイアという残念な結果になった
青木選手が、その時の状況を説明する。

「前にいたクルマが単独スピンして、行き場を塞がれちゃって・・・。
インに巻いてそのまま行っちゃうのかと思ったら、途中で止まって今度はコースの中央に向かって下がる格好になって、僕の目の前に来ちゃった。」


ところで激しいバトルを自らも演じた両者だが、初めてのWTCCに参戦しての印象を改めてお聞きしてみよう。
織戸選手はWTCCは日本のワンメイクレースに近いという印象を抱いたようだ。

「僕がWTCCに出て感じたことは、最初は日本ではありえない凄いぶつかり合いというイメージが強かったのですが、決してそればかりではないという事。
接近戦という意味では日本でもヴィッツやマーチなどのワンメイクレースが、WTCCに負けないくらいに熱いですし。僕が昔走っていたミラージュのワンメイクレースにも似た感じがあったので、決して違和感はありませんでした。
ただ圧倒的にドライバーもマシンもチームもハイレベル。ゆえに接近戦のレベルもワンメイクレースよりは数段上の見応えあるものになっていると言えるでしょう。」


青木選手もWTCCについては決してアクシデントだけが見どころのレースではないと語る。

「ハイライトやダイジェストの映像でクラッシュシーンばかりが大きく採り上げられることが多いので、てっきりWTCCというのはそんなことばかりをやっているレースなのかと思っていました。
でも、凄く大きなアクシデントというのは、選手自身にとってリタイアという最悪の結果を招く事になるから、そうそう起こるものではないし起こそうとも思っていません。
コツコツと当たる程度は日常茶飯事でハイレベルなバトルが常に繰り広げられていますが、決してWTCCというのはアクシデントだけが"売り"のレースではないと思います。」


織戸選手がドライバーの立場から、WTCCのバトルとアクシデントについて次のように分析する。

「選手はみんな、自分は絶対に生き残りたいと思っている。それに、相手を飛ばしてまで勝とうとも思っていません。
時に起こる大きなアクシデントは、多分WTCCマシンの特徴的な部分にも原因のひとつがあるんじゃないかな。WTCCのマシンはタイヤが比較的フェンダーからはみ出しているので、タイヤ同士が接触すると大きく姿勢を乱してしまう事になる。
ボディ同士の接触であれば、とても頑丈に出来ているのでそうそうクラッシュしたりスピンするような事も無いと思いますよ。」


世界最高峰のツーリングカーレース・WTCC。派手なシーンもモータースポーツファンにとっては注目のポイントとなるが、随所で繰り広げられている世界レベルの激しいバトルこそ、最大の見どころでありWTCCの神髄であるとも言えるだろう。


モンツァでの戦いを終えて、いよいよWTCCはアジアでの2大会を残すのみ。
そして来週、10月24日(金)から26日(日)にかけては、日本で初めての一戦が岡山国際サーキットを舞台に開催される。

日本初上陸を果たすWTCCについて、織戸選手は次のように予想した。

「大半のドライバーやチームは岡山を走ったことが無いでしょうが、それは余り関係ないと思う。
WTCCというレベルの高いカテゴリーを戦ってきているのだから、それなりにマシンを合わせて来るだろうし、金曜のテスト走行を終えた時点でみんな雰囲気も掴んでいるだろう。
僕たちにとっては日本での戦いは気持ち的には楽なのも事実。環境はいつもと同じだし、周りにも知っている顔が多いし。」


世界最高峰のツーリングカーバトル、WTCC。
日本にも多彩な顔ぶれが上陸を果たすことになるが、青木選手はWTCCドライバーのフレンドリーさを物語るエピソードを披露してくれた。

「僕はアレッサンドロ・ザナルディ選手やトム・コロネル選手なんかのことを知っているけれど、向こうは僕のことを知らないはず。
なのにモンツァに言ってみると気さくに話しかけてきてくれて、『分からないことがあれば、何でも聞いてくれよ』って言ってくれたんですよ。」


織戸選手はドライバー同士が仲のよいWTCCの環境をこう分析する。

「やっぱりWTCCは"世界選手権"なんですよ。僕らから見ると他の国の選手たちはみんな"外国人"なんだけれど、実際には色々な国から集まってきている。
そして同じ舞台で戦う者同士、本当にフレンドリー。
モンツァでは自分のチームはもちろん、ライバルチームも、メディアも、とにかくみんながとても良くしてくれました。
そしてみんなが口をそろえて『日本を楽しみしている』と言ってくれた。シボレーのドライバーからは岡山国際サーキットについて聞かれたりもしましたね。」


一方で、青木選手は日本開催について違った観点の質問を受けたようだ。

「織戸選手の言うようにみんなフレンドリーでしたが、僕は岡山のレースやサーキットそのものについて聞かれることはありませんでした。
でも、『レースクィーンは何人来るんだ?』という質問はされましたが(笑)。」


いよいよ初上陸までカウントダウンが始まっているWTCC。
"FIA WTCC Race of JAPAN"に向けて、まずは青木選手がチーム体制や意気込みを語る。

「ウチは岡山については日本人スタッフも交えたチーム体制にしようという考えもあって調整を進めています。もちろんビカーズ・モータースポーツのメンバーも来日します。
日本での開催については世界的に注目が集まりつつあるので、その注目に対して結果を出していきたいと思っています。」


最後に織戸選手も岡山に向けた意気込みを強く語ってくれた。

「岡山では僕たち日本人にスポットがガンガン当てられると思っています。
今回モンツァに参戦できたことで、WTCC全体の雰囲気やクルマの特性も掴むことが出来ました。
岡山では間違いなく、モンツァよりも『グッジョブ(Good Job)!』なレースを魅せますので、ぜひ応援に来てください。」

 
"Real Cars. Real Racing."。
ホンモノのレーシングマシン、そしてホンモノのレースが、いよいよ日本・岡山国際サーキットにその全貌を現す日がやって来る。

画面左下のPlayボタンを押すと記者会見の模様を動画でご覧いただけます。
※ナローバンドの方はこちらのページよりご覧ください。

2008年秋、WTCCが日本に初上陸!
WTCCに日本人ドライバーが参戦!
WTCC対談 木下隆之さん×ピエール北川さん
WTCCタイヤ開発ストーリー
[2008.10.25-26] FIA WTCC Race of Japan =OKAYAMA=

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