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初開催となるWTCC日本ラウンドの前哨戦としても注目を集めたイタリア・モンツァ戦。
この戦いには史上初めて、3人の日本人ドライバーがWTCC参戦を果たしました。
その中で日本ではSUPER GTでもお馴染みの織戸学選手と青木孝行選手のお二人は
決勝レースで日本人同士の激しいデッドヒートも展開する活躍を見せてくれました。
このページではモンツァ戦を終えて日本に帰国したばかりの両選手に直撃インタビューを行い
WTCC初参戦の感想や間近に迫ってきた日本戦への意気込みなどをお聞きしました。
  
2008年10月7日。イタリア・モンツァサーキットでのWTCC初参戦を戦い終えた織戸学選手と青木孝行選手が成田国際空港に降り立った。
その足でインタビュー会場に現れた両選手の顔には若干疲れの色も見えるものの、話が進むに連れてWTCCの魅力を目を輝かせながら熱く語ったのである。

織戸選手はシボレーワークスの4台目となるラセッティ、青木孝行選手はインディペンデントトロフィーで参加するビカーズ・モータースポーツからBMW 320siでエントリー。両選手ともにモンツァ、日本、そして最終戦のマカオと三戦に挑む。

織戸選手はチームについての第一印象を次のように語った。

「まず日本からイタリアではなくスウェーデンに渡りました。僕はスウェーデンのシリーズで使っている、スウェーデンチームがメンテナンスする車で参戦するので、まずは現地のレースを見に行ってそこでチームとファーストコンタクトしました。
第一印象は、とにかくスタッフやメカニックがみんなとてもフレンドリー。お土産で持っていった"必勝"と書かれたハチマキもメカニックがしてくれましたしね(笑)。
ちなみにメカニックには元々トヨタのラリーをやっていた人がいたりと、ラリー色が比較的濃かったように思います。
スウェーデンシリーズを戦っているドライバーからも車のフィーリングを聞いたりして過ごしました。
当初予定していたテストドライブはキャンセルになったので事前に乗ることは出来ませんでしたが、シート合わせやミーティングをしたり、一緒にご飯を食べたりしてコミュニケーションを深めて行きました。
僕たちのチームはこれまで参戦している3台のワークスカーチームとは別になります。しかし情報の共有はあるんです。例えて言えばSUPER GTのワークスとサテライトチームのような関係かな。」


一方の青木選手はビカーズ・モータースポーツとのファーストコンタクトで少々驚かされたようだ。

「僕はレースウィークの木曜日にモンツァに入って、ここでチームと初対面でした。
正直、最初の印象は『こりゃあ大変だ』という感じ。
インディペンデントトロフィーでの参加なのですが、これは一般的に言えばワークスに対するプライベートチームということ。みんなが手弁当でやっている感じで、やはりチームの体制にやや弱い面が見えたんですよ。
さらに言葉の壁やチームのプライドもありますから、突然やってきた東洋人の意見はスンナリと受け入れられない面もある。
でも、最初は戸惑いもあったのですが、チームのみんなは色々と良くしてくれました。」


土曜日のフリー走行になって両選手は初めて自分のマシンをドライブすることが出来た。
この日は2本のフリー走行を終えると公式予選が行われるというスケジュール。限られた短い時間の中でマシンの特性を掴み、セットアップを煮詰めることが求められるが、両選手を待っていたのは想像を遥かに越えたマシンたちだった。

まず青木選手が、最初に乗ったときの驚きを語る。

「マシンの第一印象は『なんじゃ、こりゃあ!!』(笑)。
そう声が出るくらいに特殊なセットアップが施されていて、パッと乗ったら凄く乗りにくい車だったのです。
でもチームは何年もやってきてこのセットになっているのだし、BMWのワークスドライバーもこの状態で乗っているらしいので、これが基準セットということなのだろうと理解しました。
自分の基準とは随分かけ離れていますが、まずはマシンに合わせていこうとしてみました。」


対して織戸選手、やはりこちらのマシンも一筋縄ではいかなかったようだ。

「みんなにシボレーに乗ることについては『FF(前輪駆動)ですよね?』と言われてきました。自分としてはSUPER GTでもFF車に一時期乗っていたし、最初はFFということについては余り気にしていなかったのです。
ところが、いざ乗ってみると『うわ〜、なんだよコレは!』と(笑)。
とにかく真っ直ぐ走らなくて、常にクルマがフラフラしているんですよ。
あと、SUPER GTのIS350はシートポジションが比較的前なのですが、シボレーは極端に後ろのポジション。その差は1メートルくらいあったんじゃないかな。ドライバーズシートに座ると、もう全然見たことのない景色が拡がっていた。
最初は『これは乗れないな』とまで思ったくらい。
フリー走行は1回目の途中で運悪くガス欠になって充分走れませんでした。2回目に向けてちょっとクルマを安定方向にセットしてもらって、2回目ではクルマの雰囲気にはかなり慣れました。」


今回両選手にとってWTCC初参戦の舞台となったイタリア・モンツァサーキット。
織戸選手は過去にル・マンシリーズで走った経験があるが、青木選手にとっては初めてのコースとなった。

しかし経験者である織戸選手であっても、WTCCでもモンツァには少なからず戸惑いも最初はあったようだ。

「以前モンツァで耐久レースを走っていた頃は、良く考えたら長いレースなので車を労るために縁石に乗って走るようなことはしていなかったんです。
ところがWTCCは全然走り方が違っていて、むしろ縁石を使ってクルマの向きを変えて、どう攻略していくかが重要。
データを比べてみても、僕の乗り方は他のシボレードライバーと違っていたので、真似してみたり。
正直なところ今回はとにかく時間が無くて、初めてのWTCC、チーム、クルマ・・・、全てにおいて自分の中でマイナス要素を作ってしまって歯車を噛み合わせきれなかった感じがあります。」


青木選手も同じように続けた。

「確かに時間は僕も足りなかった。僕の場合はモンツァというコースも全く初めてだったし。
事前に車載映像を集めて研究もしましたが、残念ながらWTCCのモンツァ車載映像というのはさすがに見つかりませんでした。
だからレースウィークの金曜日に、チームにあったBMWの"自転車"でコースを一周したのがモンツァ初体験でした。」


ここで織戸選手が青木選手を羨んでの発言。

「いいよね〜、自転車があっただけ。俺たちなんか"ウォーキング"だよ。歩きだして、一つ目のシケインまで行ったところで、歩いて来たことを凄く後悔したもの。
でもね、モンツァというコースは簡単でレイアウトはとってもシンプル。
要注意なのが縁石で日本には無い独特な感じ。これを巧く使えるかはモンツァ攻略の肝。日本の感覚だと縁石カットをやるとクルマが壊れるからやめてくれ、って言われるけれどWTCCはそんなのお構いなしだから。」


モンツァ・サーキットの全長は5.770km、実は公道を封鎖して行うマカオグランプリのコースを除くとWTCC開催サーキットの中では最も距離が長い。ゆえにさすがの織戸選手も歩いて一周することは後悔したということか。
縁石については青木選手がこう語る。

「織戸さんの言うように、モンツァのコース自体は簡単。コーナーは3つしかないような感じですし。
でも、最初はどこまで縁石をカットして良いのか分からなくて戸惑いました。カットしていかないとタイムが出ないし・・・。」


レース経験豊富な両選手をしてもやはりWTCCというのは驚かされることの多いレースだったようである。


土曜日、初めてそれぞれのマシンをドライブして2回のフリー走行を終えた織戸選手と青木選手。その日のうちに公式予選に臨むという、やや慌ただしいスケジュールでレースウィークを過ごしていくことになる。

織戸選手は予選について次のように振りかえる。

「予選ではスリップストリームを巧く使い切ることが出来ませんでした。
シボレーもセアトも、フリー走行の段階からチームプレーでスリップを使い合う練習を重ねていたのです。しかし僕のチームはシボレーワークス3台の中には残念ながら混ぜてもらえなかった。むしろ『邪魔するんじゃないぞ』っていう勢いで。
フリー走行30分×2回である程度の雰囲気を掴んで、予選で初めてタイヤウォーマーも使いました。簡単に予選を振りかえればフリー走行よりは良い走りが出来ましたが、スリップを使い切れなくて1秒くらいロスした感じですね。」


方や青木選手もスリップストリームを使い切れなかったと振りかえる。

「僕はタイヤウォーマーを使ったのが初めてだったのですが、乗ってみても違和感などはありませんでした。
予選ではチームメイトからスリップを使い合おうという提案もありましたが、急ごしらえでは巧くいかないだろうという判断に落ち着きました。
そこでコース上でタイミングを図って、ワークス勢の後ろにこっそり潜り込んでやろうという作戦に。ちょうどセアト勢が来たので後ろについたのですが、見事にツブされちゃいました(笑)。
スリップを生み出して引っ張る役目の車が仕事を終えると先頭から後ろに下がって来るんですが、こいつに引っかかってタイムロスしちゃうんです。
スリップを美味しく使えるはずの周にタイムを伸ばせないという状況で、モンツァの洗礼を受けたという感じですね。」



織戸選手(中)、青木選手(左)と谷口行規選手(右)
こうして予選を終え、織戸選手は2分02秒045をマークして20位、青木選手は2分02秒698で22位という結果を残した。
実はフリー走行の結果も1回目は織戸選手が24位、青木選手が23位、ベストタイムの差は0.498秒。更に2回目も織戸選手が20位、青木選手が21位で、その差は0.205秒。
両者は常に僅差のタイムをマークし続けてきており、予選結果を受けたスターティンググリッドも近いものとなった。

この結果について青木選手は、次のように語る。

「どうして、いつも織戸さんが近くなのだろう、とは思っていたんですよ(笑)。たまたまなんでしょうけれどね。」

初出場同士の日本人ドライバー二人が偶然にも近いポジションからスタートを迎えることになったWTCC・モンツァ。
いよいよ迎える第1レース(第19戦)の決勝、ここでは織戸選手と青木選手が運命的とも言える日本人同士の激しいバトルを演じることになるのだが、スタート前の両選手には想像できなかった展開であったと言えるだろう。

【>> 後編につづく】


2008年秋、WTCCが日本に初上陸!
WTCCに日本人ドライバーが参戦!
WTCC対談 木下隆之さん×ピエール北川さん
WTCCタイヤ開発ストーリー
[2008.10.25-26] FIA WTCC Race of Japan =OKAYAMA=

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