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HOME / MOTORSPORTS / ADVAN FAN / Vol.44 News Index
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横浜ゴム・タイヤ材料設計部の瀧澤陽一。「コンパウンダー」と呼ばれる彼の仕事は、タイヤの"本質"とも言えるゴム、すなわちコンパウンドの開発である。
しかし一般的に瀧澤の仕事は理解するのが難しい面が多い。そこで瀧澤はコンパウンドというものについての考え方を次のように語る。
 
「そう・・・、自分で自分の仕事を説明するのは難しいですね(笑)。
いろいろな材料があって、何かと何かを混ぜると硬くなったり、柔らかくなったり・・・。大雑把ですが、基本はこんなところかもしれません。
もちろん単純に硬い・柔らかいを作るのは比較的簡単ですが、タイヤとしてきちんと高いグリップを得られるようにしたり、さらに摩耗性能なども考慮した上で作っていくのはとても難しいものです。」

 
大学で化学を専攻し、2003年に横浜ゴムに入社。以来これまでモータースポーツタイヤの開発一筋であるが、担当するカテゴリーはサーキットレースからラリーなどのダート系カテゴリーまで幅広い。
 
「いくつかのカテゴリーを担当していますので、シーズン中は多くの競技会に顔を出しています。
例えばA050の開発にあたっては、全日本ジムカーナの会場で実際に装着車両の走りを見て、ドライバーの声を聞くことが大いに役立っています。
全日本級のドライバーの場合、タイムデータだけではタイヤの性能を推し量れない面があるのです。なぜなら、多少タイヤに物足りない面があっても、全日本級の方々はそれなりにタイムをまとめて走られます。これでは真のタイヤ評価は得られません。
そこでタイムという数字も重要ですが、フィーリング、運転した生の声を聞くことが重要になってきます。
特に全日本級ドライバーと一般ユーザーではタイヤフィーリングの感じ方が異なる場合もありますので、じっくりコミュニケーションを取るようにしています。」

 
こうして得られたデータや評価を基にコンパウンドは更なる進化を遂げる。

「官能評価を分析する上では自分の中で"想像力"を働かせる部分も出てきます。そして、評価をどう具体的なものにつなげていくかがとても重要。
ですからコミュニケーション能力が高いレベルで必要になってきますね。ドライバーが感じたこと、言いたいことを如何に吸収するか。私は入社5年目ですが、ようやくそれがわかるようになってきたような気がします(笑)。」


瀧澤は謙遜しながらこう語るが、こうした日々の積み重ねがタイヤの性能を進化させていくのである。
ところでコンパウンダーである瀧澤にとって、タイヤの性能として求められる要素はどのように位置づけられているのだろうか。まずは"摩耗"について聞いてみた。
 
「競技用タイヤについては、摩耗というものはグリップ力が上がると救われるものなのです。
一般のタイヤでは走行することでタイヤが回転して摩耗するのですが、競技用タイヤの場合はグリップの不足に起因して横滑りすることで摩耗が進むケースが多いですね。例えばフロントのグリップが足りないから、大きい舵角を与えて曲がることで摩耗が進む、というように。
これは特にジムカーナで顕著に現れるので、今回のG/2Sでも至上命題はスタートからフィニッシュまで持続する高いグリップの実現にありました。」

 
一般的にはグリップと摩耗は相反する、つまりグリップを高めると摩耗も厳しくなると捕らえられがちの面もあるだけに、瀧澤が語った内容は興味深い。
しかし、当然だが闇雲にグリップばかり上げれば良いという簡単なものでもない。

「ソフトコンパウンドにするのにも限度があります。タイヤには耐久性も求められるので、どこまで突き詰めて両立させるのかがコンパウンダーの仕事の"肝"であるとも言えるでしょう。
実はコンパウンダーにとっての大敵は"熱"です。ある程度の発熱が無ければグリップを得られませんが、熱が上がりすぎるとフィーリングが悪化します。ゴムは温かくなると柔らかくなって剛性が落ちるものなのです。
ここを官能評価とタイムなどのデータで突き詰めていくのですが、走りを見た上でドライバーとの意見交換を重ねていきます。」

 
相反する、ともに譲ることの出来ない性能を両立させるためにタイヤとしてはどのような特性を持つものがベストなのか。コンパウンダーとしての理念を瀧澤はこう語る。
 
「競技用タイヤで言えば、全部が平均点のタイヤというのが一番良くないと思っています。
しかしA050はユーザー層が幅広いので、極端にどこかを"尖らせる"ことは出来ません。
とは言っても戦える武器であるためには"尖っている"部分が必要なのも事実です。全部が平均点のタイヤで勝つことは難しいでしょう。
A050は接地感とグリップはコンパウンドで性能を補えたと思います。そしてパターンで力強さを実現し、構造で整えて仕上げたという感じでしょうか。」

 
コンパウンダーとしての"哲学"を持ちつつ、パターンや構造といった要素と連携して高い性能を実現したADVAN A050。
なかなか表に出てこないコンパウンダーという立場の瀧澤だが、自信を持ってA050、そして今回デビューしたG/2Sコンパウンドの性能を語った。
 
「コンパウンダーとして研究や実験、そして実戦を重ねてきたなかで着実にコンパウンドを進化させてきました。
その結果として優勝や表彰台を獲得したときは素直に嬉しく思いますし、それが仕事の"やり甲斐"にもつながっています。
印象に残っているのは2005年のSUPER GT。オフシーズンのテストではグリップの持続性をテーマに改良を進めていたのですが、コンパウンド改良の評価をきっちりと重点的に行って出来上がったものをシーズン開幕戦の岡山ラウンドに投入しました。
これが狙い通りの性能をレースで見せて、全くタレることなく優勝を飾りました。この時は、良い意味で『はまった』という感じで、とにかく結果につなげられて良かったと素直に思いました。」

 
瀧澤は"コンパウンドは開発出来る範囲がとても広く、やり甲斐のある仕事"と最後に付け加えた。
担当者それぞれが自信を持ち、かつ決して奢ることなく日々開発を続けて進化を続けるADVAN。その性能は世界中のモータースポーツフィールドで輝かしい栄光の歴史となって実証されていく。
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