2007年にデビューしたADVAN A050。
名作"ADVAN A048"の系譜を受け継ぐタイヤであり、独創的なパターンデザインをはじめとして性能を大幅に進化させて登場、大いに注目を集めた。
中でも全日本選手権をはじめとしたジムカーナ競技の世界では、その戦闘力が話題を集める。2007年のシリーズにおいてN1クラスでチャンピオンを勝ち取ったことは記憶に新しいところだ。
そして2008年。ADVAN A050には新たにG/2Sコンパウンドが設定され、一層その戦闘力を高めた。
このG/2Sコンパウンドについて、横浜ゴム・タイヤ材料設計部の瀧澤陽一は、その開発テーマを次のように説明する。
「ゴム、すなわちコンパウンドでグリップを出すことが至上命題でした。特にジムカーナ競技ではスタート直後から最大のグリップを得られ、フィニッシュまでその特性とフィーリングを保ち続けることが求められます。
また、コンパウンドでも剛性感を充分に出すことも大きなテーマでした。
私の仕事は、グリップ力や耐摩耗、発熱などの性能を、コンパウンドの面から調整や新規材料開発を通じて高いレベルで実現することです。」
瀧澤は2003年に入社、これまでの5年間をモータースポーツタイヤの開発一筋に過ごしてきた。
俗に"コンパウンダー"、または"ゴム屋"と呼ばれる彼の仕事はコンパウンドの開発である。
そもそも、ADVAN A050の開発にあたり、どのように携わってきたのかを振り返って瀧澤はこう語る。
「A048に対して、絶対的なグリップ向上が求められたのでコンパウンドとしては柔らかさを追求しました。
柔らかくすると摩耗に厳しくなるのですが、その点でA050はパターンの存在が大きかったですね。
曲線的になったA050のパターンは摩耗や損傷に強いので、A048よりも柔らかいコンパウンドを使えるようになったのです。コンパウンダーとしては、このA048からA050へのパターンの進化によって、出来ることの幅が大きく広がりました。」
この連載企画の最初にも記したが、タイヤを構成する要素として「構造」「パターン」「コンパウンド」の三つがある。
これらが全て高い次元にあり、かつお互いに協調し合うことでタイヤの性能は飛躍的に向上する。
「A050は最初にパターンを決めました。これを受けて私が担当するゴムの開発が進み、最終的には構造で仕上げていくという流れによって、タイヤとしてのトータル性能を高めていきました。」