「デザイナー」という職業から、皆さんは何を連想されるだろうか。華やかさであったり、前衛的な感覚の持ち主、というイメージがあるのではないだろうか。
では「タイヤのデザイン」と言われるとどうだろうか。タイヤは一般的に"黒くて丸いもの"と表現されるが、一見するとそこには"デザイン"というものが入り込む余地が無いようにも思える。
横浜ゴム・タイヤ第一製品企画部デザイングループの遠藤謙一郎。
彼の名詞には「DESIGNER」とプリントされている。
「私が所属しているデザイングループでは、ADVANグッズの靴やバッグなどのアパレル的な商品デザインもしています。こうしたアーティスティックな世界の一方で、タイヤのパターンなど工業デザイン、というかエンジニアリングの世界に携わるデザインも行っています。
基本的に所属する全員がタイヤのデザインを手がけています。その上で販売促進ツールや広告、展示会のブースなどのデザインも分担して行っています。」
2004年12月、横浜ゴムは本社ビルの一角に「ヨコハマデザインセンター(YDC)」を設けた。
ここには「立体モデル造形システム」などの先進機器を配するなどして、タイヤのアピアランス(外観)向上と商品開発のリードタイム削減を図っている。
また、試作モデルを実車装着するためのタイヤ交換設備を有する点は、ここが単なる"デザイン工房"ではなく、重要な"開発の一拠点"として機能していることの裏付けでもある。
「私たちは純粋な"アーティスト"ではなく、あくまでも"工業デザイナー"です。
その仕事とは、商品コンセプトを可視化することであると言えるでしょう。
特にタイヤのパターンデザインというのは、あくまでもエンジアリングの領域です。つまり、個人的な感覚をそこには盛り込まず、あくまでも性能を突き詰めることが第一の目的です。
"格好良い・悪い"という個人的な感覚については、タイヤではサイドデザインで反映させていますね。」
商品のコンセプトを具体化し、その性能を引き出す役割をになう"デザイナー"。
では、今回デビューしたADVAN A050のトレッドパターンについては、どのような経緯で決定したのであろうか。