近年はコンピューターの進化などを背景に、タイヤに限らず工業製品の開発事情は大きな様変わりを見せている。
その昔は手作業で多くの試作品を作って試験を繰り返したりしたものだが、今ではコンピューターを駆使したシミュレーションが実試験に取って代わったという話も珍しくない。
しかしタイヤの開発現場ではシミュレーション技術の発達やコンピューターによるデータ解析も重要な項目であることに変わりないものの、それと同じように実際に車に装着してのテスト走行を通じて得られるものは非常に多い。
「ADVAN A050の開発では、おおよそのベースが出来上がったところでサーキットなどに持ち込み、車に装着してのテスト走行を行いました。
実際の走行を通じて、開発の道筋がより明確になった部分もあります。」
横浜ゴムモータースポーツ部技術開発2グループでADVAN A050開発を担当した丹羽正和はこう語る。
ADVAN A050の場合、実に幅広いユーザー層があり、活躍のフィールドもジムカーナ、サーキット、ターマック・ラリーと様々だ。
「ジムカーナとサーキットを比べると、ジムカーナは停止状態から急加速で短い距離を走りきります。対してサーキットは周回を重ねることである程度の距離を走ります。
このどちらかに重きを置くということはADVAN A050では決して出来ません。それぞれのユーザーさんに満足して頂けるポテンシャルを実現しなければならないのです。」
いかなるフィールドでも高いポテンシャルを発揮するタイヤを造るために。
丹羽はADVAN A050の試作品をテスト走行の舞台へと持ち込んだ。
「テスト走行は規模の異なる数カ所のサーキットコースなどで行います。それらはユーザーさんにとってもタイヤの性能を評価する上で重要な意味合いを持つコースでもありますね。
走行中、私は車の動きを外から見ながら『ここをこうしよう、あそこをこうしよう』と考えていきます。つまり、走行風景を見ることが出来ないようなコースではテストにならないということですね。
ちなみにラリーステージに関するテストをする場合は、私自身がナビシートに乗り込んでドライバーがどのように車を動かしているのかを見ています。挙動については体感で得られますからね。
ラリーは競技も2人乗車なので、私は"重り"の役割も果たしている、ということです(笑)。」