モーターと並んで、EVを構成する重要なパーツがバッテリーだ。EVを一般ユーザーも広く購入出来るようになった今日では、EVの性能を航続距離で語る機会も多く、バッテリーは従来のガソリンエンジン車における燃料タンクと同義に捉えられている風潮も見受けられる。
しかし塙選手によると、その捉え方は誤りだと言う。モーターはパワーを伝えるための媒体であり、EVにおけるエンジンに相当するものがバッテリーであるというのだ。つまり、一口にバッテリーと言っても様々なタイプがあり、目的に応じて最適なものを採用することがまずは重要なポイントとなる。
その点、「HER-02」では当時の三洋電機(現:パナソニック)製の「18650」と呼ばれる円筒形のものを6700本つないで搭載している。このバッテリーはラップトップパソコンなどにも用いられている型式のもので、電気街などの店頭でも売られているものだ。しかし、厳密には同じ型式でも「容量型」と「出力型」があり、長時間使用に適した前者がパソコンなどに使われている一方、短時間で大きなパワーを使う電動工具などに後者が用いられている。
「HER-02」はパイクスピークの限られたコースを短時間に走ることが前提のため、「出力型」のバッテリーを採用。ガソリンエンジンで言えばDOHCのようなパワフルなものを搭載している、という例えがわかりやすいかもしれない。
このバッテリーを車両開発の時点で、可能な限り搭載した「HER-02」。全体容量は37kWh(385V)となり、これは一般家庭で使用する4日分の電気に相当する。ゆえにラップタイムが向上している現在でも搭載量に余裕があり、さらに劣化もほとんど見られないことから、2010年から現在まで同じバッテリーを継続使用しているのだ。