−タイヤは昨年に続いて、BluEarth-A(ブルーアース・エース)を装着しますね。
塙郁夫選手 :
昨年に引き続いて、市販のBluEarth-Aを装着して戦います。このタイヤは、みなさんがタイヤショップなどで購入するものと全く同じ、低燃費タイヤとして広く認知されている商品です。
僕のパイクス参戦は、初年度の2009年にGEOLANDARというヨコハマタイヤのオフロードブランドのアメリカ向け市販品を装着して戦うところから始まりました。その次の年も市販タイヤ、2011年こそ市販前のプロトタイプを装着しましたが、昨年からはBluEarth-Aを装着しているので、やはりこれも市販品なのです。
良く聞かれることのひとつに「どうして低燃費タイヤで戦うんですか?」という質問がありますが、あのEVレーシングマシンにADVANを装着すればタイムは簡単にポンと上がるのは分かりきっていることなのです。特に完全な舗装路となった今のパイクスピークでBluEarthとADVANを比べること自体がナンセンス。でも、低燃費タイヤよりスポーツラジアルと考え始めると、最後には究極のレーシングスリックタイヤに行き着いてしまうので、それは僕たちにはやる意味がないな、と。
−つまり、低燃費タイヤであるBluEarthで戦うことにこそ意義がある、ということ?
塙郁夫選手 :
そうですね。もちろん僕の場合、ADVANを履きたいと言えばヨコハマタイヤだって用意してくれるし、BluEarthブランドでもスポーツ性能を高めたスペシャルタイヤを作ってもらうことだって無理ではないんです。
でも、そこをあえて市販品のBluEarthでやっていこうと、僕が腹をくくっているんですよ。
僕たちは最初に自分たちが進むべき道を決めておいて、その“灯台”を目指して戦っているんです。タイヤやマシンをハイスペック化してハイパワー競争に混ざって行っても、豊富な資金を持っているチームにあっと言う間に飲み込まれてしまうのは目に見えていますから。
そうではなくて、僕たちはあくまでも低燃費タイヤでもここまでのタイムを出せるんだよ、ということを実証していきたい。
だって、スペシャルタイヤを履いて勝っても誰に喜んでもらえますか? それよりも、今からユーザーのみなさんに買ってもらおうというタイヤでレースをして好タイムを出せたんだよ、というのが本来あるべき姿だと思っているんです。
−昨年からハイパワーを誇るEVの参戦が増えてきています。
塙郁夫選手 :
これはもう、数年前からの想定通りなんです。むしろ、僕が予想していたよりも、ちょっと遅いくらいで(笑)。
どこかで資本力のあるチームが嵐のようにやってきて、それが去った後は何も残らないんじゃないかという危惧を持っていました。少し自分が思っていたよりも遅かったですが、やっぱり去年になって“嵐”はやってきましたね。もちろん僕たちと方向性の違いはありますが、パイクスピークをEVで戦うことが注目を集めて、日本でも新聞や雑誌などのメディアで採り上げられるのは嬉しいことです。願わくば、長く続けてほしいですよね。