TEAM YOKOHAMA EV Challenge
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雲に向かうレース -パイクスとは?
ヨコハマタイヤの挑戦 -"Speed & Eco"を支えるタイヤ
進化を続ける先駆者 -塙郁夫選手にきく
伝統のカラーで新たな挑戦 -奴田原文雄選手にきく
2012年、戦いの記録 -サマリー・レポート
これがパイクスの走りだ! -ストリーミングムービー・ギャラリー
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今年のパイクスピークは、日本において近年に例の無いほど注目度を高めている。その理由はEVが一気に参加台数を増やしたことで、EVを対象とするクラスの総勢は塙選手を含めて7台にもなるのだ。さらに同じくヨコハマタイヤを装着して戦う奴田原文雄選手のマシンはTMG(トヨタ・モータースポーツ・GmbH)の手によるものであり、他のライバルたちも自動車メーカーや公的団体の支援を受けているなど、まさに"EVモータースポーツ元年"と表現できそうな顔ぶれが揃う。

そんな中でプライベーターとして誰よりも早く、EVモータースポーツの先駆者として2009年からパイクスピークに挑み続けている塙選手。注目度の高まる今年のパイクスピークへ臨むにあたっての思いをお聞きした。
「正直、肩の荷がちょっと下りた気もしているんです」

塙選手は、今年のパイクス参戦についてこう表現した。これは、同じヨコハマタイヤを装着して奴田原文雄選手が参戦することについてお聞きしたことへの答えである。

今年のパイクスピークにはヨコハマタイヤを装着するEVが2台参戦する。一台はエコタイヤの「BluEarth-A(ブルーアース・エース)」を装着した塙選手のマシン。もちろん塙選手ご自身が作り上げ、2010年から投入したEVレーシング、HER-02だ。そしてもう一台は、F1も手がけたTMGによるP002。こちらは競技用スポーツラジアルタイヤのADVAN A048を装着して臨む。

「僕は2009年から一人でパイクスピークをEVで戦ってきて、EVの凄さをみんなに見せなければならないという使命感を持っていました。ある程度はガソリンエンジンとガチンコ勝負をして、勝たなければならないという思いですね。だから、昨年のレースが終わった時点で、2012年か2013年用のマシンとして、総合優勝を狙えるマシンの設計図も描いていたんです。それこそツインのハイパワーモーター搭載で、4WDで、というスペックで、間違いなく9分台をマーク出来るようなマシンを、です」

塙選手のマシンは2009年に参戦した初代のER-01から、極端にハイパワーな仕様とはせずに、あくまでもEVの特徴であるエネルギー効率の高さを訴求し、これを武器として戦うスタイルを貫いてきている。
しかし、今年のパイクスピークには同じEVながら、ガソリンエンジンに匹敵するハイパワーなスペックを誇るマシンが、次々と参戦を表明した。

「総合優勝を狙えるマシンを思い描いたのですが、現実的には予算の制約もあって厳しいな、と思っていました。そこに、次々とライバルたちが参戦を表明してきたんです。
そこで、自分の中で『待てよ』という思いが出てきました。勝つことにとことん拘り、勝たなくてはならないチームやドライバーが、勝つべき体制でパイクスピークにEVで参戦してくる。ならば僕が何も借金までして化け物のようなハイパワーマシンを作ってやる必要も無いのかな、と(笑)。

元々、EVはエネルギー効率が良くて、その上で乗っても楽しんだよ、ということをアピールするために始めたプロジェクトなんです。だったら何もガソリン車をやっつけて総合優勝してコースレコードを樹立するというのは、他の人がやってくれるのであれば、僕にはもっと違うやるべきことがあるだろうと思いました」
同じEVであっても、塙選手のマシンはスペックの数字だけを見ると、拍子抜けするほどのシンプルさだ。例えば最大出力は190kW(258ps)でシングルモーター。ライバル勢はモーターを2基、3基と搭載しているケースがほとんどで、出力もさらに大きな数値を誇っている。
しかし、この点について塙選手は過去3年の参戦経験から、次のように語る。

「僕がこれまでの参戦で掴んだ簡単な方程式があって、『EVはガソリンエンジンの半分のパワーで勝てる』と思うんですよ。
具体的に言うと、僕が昨年マークした12分台のタイムを出すには、ガソリンエンジンなら500psは必要なんです。でも、僕のマシンは258ps相当ですからね。

一昨年、まだEVクラスの設定がなくてエキシビジョンクラスで参戦したときに、EVのコースレコードを破ったと同時にエキシビジョンクラスでも優勝しました。
この時に戦った相手というのが、ACコブラとかそのレプリカとか、V8エンジンを積んで500〜600psを誇るマシンたちだったんです。その中で僕は勝つことが出来たので、『ガソリンエンジンの半分のパワーで勝てる』という方程式を確信しました。
ということは、最近の総合優勝は1000ps近い最高出力のエンジンを積んだマシンですから、EVならば瞬間的に500psのパワーを用意すればいいんです。僕のマシンをツインモーターにして4WDにしちゃえば、出来てしまう領域なんですよ」

先に塙選手ご自身も語ったように、まさにツインモーター+4WDの仕様も設計図を描いたことがあるという。しかし、結果的に塙選手は従来と同じスタイル、決して強大なパワーを誇ることの無いマシンでの参戦を継続することにした。

「今年参戦してくるマシンたちは、僕の方程式から言えば9分台のタイムを出して当たり前なんです。でも、勝てるまでパワーを上げて挑む、というスタイルを僕は決して望んでいません。EVだからこそ、エネルギー効率の良さを追求したいと思っているんです。
これから世の中のEVで主流となるべき第三世代の新しいモーターユニットを使い、相性の良い転がり抵抗の少ないエコタイヤを装着して、なのにパイクスピークで早いタイムを出して、乗れば軽快で楽しくて、というのが理想であり、その素晴らしさを実証するのが僕の役目なんだろうな、と思っています」
ヨコハマタイヤの参戦コンセプトを紹介したページで、横浜ゴムの白井CMPは"ふたつのスタイルでの参戦に注目してほしい"と語っているが、まさに塙選手が語った"エネルギー効率の良さを追求する"というのが、そのうちのひとつのスタイルである。

そんな塙選手のもとには多くの期待を寄せるメッセージも届けられているというが、塙選手ご自身は自らのスタイルでの挑戦を理解してほしいと語る。

「僕のところには、多くのみなさんから『EVで参戦する先駆者として、勝ってください!』というような応援、激励の言葉もいただいています。でも、正直に言えば他のチームとはちょっと戦う土俵が違うのかもしれません。

みなさんに『今年の目標は?』と聞かれたら、自信を持って『11分台を記録することです』と答えています。昨年は12分20秒というタイムでしたが、今年は全面舗装路になるので、状況を考えたら目指すのは11分台。

実はHER-02を製作した段階で、『このマシンは11分台に入るポテンシャルを持っています』と公言していたんですよ。まだEVでは15分台がやっと、というタイムの時代に。
だから、僕の中では今年11分台をマークできたら、文句無しのコースレコード更新なんです。ハイパワーのライバル達が10分を切ったとしても、戦うスタイルが異なる僕にはあまり関係のないことなんですよ。

パイクスピークもこれからEVでの参戦は増えてくるような気がします。そうなったら、将来的には同じEVでもシングルモーターと複数モーターのマシンでクラス分けをするといったことも、検討する必要があるでしょうね。今の状況はSUPER GTのGT500クラスとGT300クラスどころか、極端に言えばF1とSuper-FJが一緒に走っているようなものですから(笑)」


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