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HOME / MOTORSPORTS / ADVAN FAN / Vol.135 News Index
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2013年5月24日、ヨコハマタイヤは「ADVAN A053」を日本市場で発売した。このタイヤはラリーやダートトライアルといった、グラベル(非舗装路)を舞台とする競技に向けた商品であり、海外のグラベルロードでその性能を鍛え上げてきたものである。
車両の進化にともない、ハイパワー・ハイスピード化しているラリーとダートトライアル。2013年シーズン、満を持して投入された「ADVAN A053」、その強さと速さの真価に迫る。
ADVAN A053のストーリーを語る上で、2006年のP-WRC(FIAプロダクションカー世界ラリー選手権)は欠かせない1ページだ。

この年、Red in BlackのADVANカラーをまとうランサー・エボリューションを駆って参戦した奴田原文雄選手は、第5戦の「Rally JAPAN」で堂々のシリーズ2勝目を飾った。ヤリ-マティ・ラトバラ選手を猛追した奴田原選手、その気迫に押されたかラトバラ選手は終盤にコースオフ。対する奴田原選手は安定した走りでマシンをフィニッシュまで運んで、日本のファンが待ち受けるポディウムで笑顔を見せた。
そして続く第6戦「キプロス・ラリー」。鋭利な石が多い過酷でタフな一戦を、奴田原選手は再び制して強さを見せた。
この年、奴田原選手の走りを支えたタイヤが、現在のADVAN A053のプロトタイプであった。その後、ヨコハマタイヤは海外市場向けに満を持して新しいグラベルタイヤ「ADVAN A053」を投入。ハイスピードな海外ラリーにおいて優れたパフォーマンスを見せて世界の道を駆け抜けてきた。

近年では2011年からのIRC(インターコンチネンタル・ラリー・チャレンジ)、そして2013年からのERC(FIAヨーロッパ・ラリー選手権)が代表的な主戦場となり、ヨーロッパを中心に伝統ある大会で速さを磨き上げてきている。
一方、日本国内のラリーに目を転じると、ヨコハマタイヤは「ADVAN A035」を武器として幾多の栄冠を手中におさめてきた。例えば2002年から2006年まで、5年連続で全日本ラリー選手権のC/JN4クラスを制覇してきたことが、強さの証左として広く知られているところだ。

しかし、当然ながら時間は絶え間なく流れ、技術の進化も留まることはない。近年はラリーマシンのハイパワー化、ハイスピード化も進み、タイヤにはさらに高いパフォーマンスが求められてきている。

そのような背景もあり、ヨコハマタイヤでは2013年5月22日に「ADVAN A053」を日本市場で新発売した。もちろん単に海外で販売していたものを日本市場にそのまま投入したのではなく、日本のラリーやダートトライアルに最適化した“日本仕様”としてである。

この日本仕様の「ADVAN A053」、そのコンセプトについて開発のまとめ役となったヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナルのエンジニア・八重樫剛が次のように解説する。
「海外で売っているADVAN A053のコンセプト自体、路面を選ばない、天候を選ばない、というものです。
ただ、海外ラリーでは雨などの状況に応じてハンドカットを入れられるので、そこで調整が効くという部分もあるのです。日本のラリーでは規則上、ハンドカットは許されていません。

しかし、ハンドカットは出来ないにしてもADVAN A053が培ってきたメリットも大きいものがありますので、日本国内でも展開する運びになりました。
そこで国内展開するにあたって必要となるのが、日本の道への対応です。日本の林道は海外ラリーのステージに比べて速度域が低く、一方でツイスティであり、砂利が多くて掘れやすいという特徴があります。
これらに最適化するためのチューニングを施したのが、日本仕様のADVAN A053なのです」
結果として、海外市場で先行発売されたかたちとなったADVAN A053。日本市場への投入にあたっては、まずは公道を走ることが出来るタイヤであるという大前提をクリアする必要もあったと八重樫が振り返る。

「自動車も国によって法規や規制の違いがあるように、タイヤにも日本で公道を走るために求められる条件や基準があります。ADVAN A053は、元々が海外市場向けとして生まれたので、その点を考慮していなかったんですね。しかし、日本市場に投入するには、ラリー車やダートトライアル車が公道を走りますから、日本の基準をしっかりクリアしていかなければならない。

その点については、実はIRCへの参戦がひとつの鍵になりました。IRCに参戦するようになって、いろいろな状況に適用させるための構造面のチューニングを施していったら、日本国内の基準に対応する方向性になったのです。競技での性能を追求していったら、とてもフレキシブルな特性を持つタイヤになってきたんですよ。こうした流れから日本市場への投入に向けたスピードが加速していったのです」
ADVAN A053日本デビューの背景にあるというIRC。もう少しIRCで得たものについて聞いてみよう。

「IRCを通じて、ヨーロッパの路面を走るには“尖った性格”のタイヤではダメだ、ということが判ってきました。路面状況、天候、いろいろな条件をあまりシビアに選ぶタイヤでは、戦う上で厳しいんですよ。
それはヨーロッパ域内の異なる大会同士はもちろんですが、同じ大会の中でも『あっちのステージと、こっちのステージでは、全くコンディションが異なる』ということも珍しくないですから。
そうなると、全てのシチュエーションで満足出来る高いパフォーマンスを持ったタイヤが必要とされるわけです。そのような性能を得るためには、タイヤ自体の適応幅を広く取らなければならないんですね。

そして、そこを追求していくと車種も選ばなくなってきます。IRCではスバル・WRX STIがメインですが、もちろん三菱・ランサーエボリューションのユーザーさんも多くいらっしゃいます。国内のラリーにデビューした今年の第3戦・福島でランサーとWRX STIがライバルを圧倒してワン・ツー・フィニッシュを飾ったことでも、その点は実証されましたね」
タイヤの開発要素を大きく3つに分けると、構造/コンパウンド(ゴム)/トレッドパターンとなる。それぞれのポテンシャルを高めつつ、トータルバランスを高次元に昇華し、優れたタイヤが生み出されるわけだ。

ADVAN A053を日本市場に投入するにあたって、これらの要素について必要な見直しを施している。

これらの要素の日本市場最適化について、八重樫が解説する。
「まず構造についてですが、日本はヨーロッパに比べて速度域が低いので、その部分に割り振っている面をほかに振り分けることが出来ます。
いくつかの要求についてチャートで示したときに、ハイスピードへの対応はヨーロッパのレベルまで必要ないので、日本で求められる中低速域のトラクション性能に“厚み”をもたせています。

次にコンパウンドですが、これはラリーでの耐久性を重視したMコンパウンドと、ダートトライアルやラリーのショートステージ向けのSコンパウンドを用意しました。
そしてトレッドパターンですが、これは海外仕様と日本仕様で変えていません。元々は海外ラリーでハンドカットされることも前提のパターンだったので、その部分については正直なところ日本で戦う上での懸念もありました。実は開発の過程では、基本的なパターンは変えずに溝面積を増やすなどのトライも行ったのですが、そうするとADVAN A053が持っているメリットが薄らいでしまうこともわかったのです。

そこで、あえてパターンを変えることはしないで、ADVAN A053が本質的に持っているポテンシャルを活かすことにしました」
こうして、海外の道で鍛え上げられ、日本の道に最適化されたADVAN 053が満を持してデビュー。

全日本ラリー選手権では、福島県で開催された第3戦がデビュー戦となったが、序盤からADVAN A053を装着した奴田原文雄選手組の三菱・ランサーエボリューションと、柳澤宏至選手組のスバル・WRX STIがライバルを圧倒する速さで、高いポテンシャルを遺憾なく発揮。
両者が主導権を完全に握ったままで2日間にわたる競技は進んでいったのです。
その結果、文句無しのデビューウィンをワン・ツー・フィニッシュで達成。特にドライバーからは優れたトラクション性能を高く評価するコメントが寄せられ、開発コンセプトが正しかったことを証明した。

LINK >> 2013 全日本ラリー選手権・第3戦(ADVAN A053デビューウィン) 大会レポート

もちろん大きく進化しているのは、トラクション性能だけではない。ADVAN A035から受け継がれた優れた直進走行性やハンドリング応答性、コーナーリング性能はさらに高い次元へと進化している。また、非対称・方向性パターンにより、ブレーキング性能の向上や、コーナーリングスピードの向上とコントロール性能の向上が実現している。

誕生の時から現在まで、国内外のグラベル競技で強さを見せてきているADVAN。
ADVAN A053の日本市場投入によって、国内ラリーやダートトライアルにおける新しい時代が幕を開けたのである。
[UPDATE : 27.Sep.2013]
           
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