SUPER GTの話題に続いて、次に折目選手には“レーシングドライバー”という職業についてお聞きした。
プロスポーツ選手としてのひとつのジャンルであるレーシングドライバー。しかし、野球やサッカーなどとは違い、“プロへの道のり”は多岐にわたる。
この特集の最後に、折目選手に“プロのレーシングドライバー”として必要なことは何か、についてお聞きした。まずはアスリートに共通する“体力”についてである。
「基本的にはジムに行って、ウェイトトレーニングをやっているのですが、フォーミュラ・ニッポンに乗っている時は内容がかなり濃くなりましたね。ノンパワーステアリングになったタイミングでもあったので、それはそれはハードなトレーニングをしました。
『レーシングドライバーに必要とされる体力はどの部分が最も重要なのか?』というのは、難しい質問でもあります。
ひとつ言えることは、バケットシートに座って全身をシートベルトで留められて、動くのは手と足だけという状態は、心肺機能がとても重要だということでしょうか。フォーミュラの場合、人によっては心拍数が180くらいで走っているんです。
走っていると何度も首を中心に体が左右に動かされるし、アクセルやブレーキ、クラッチを何回も蹴飛ばすし、コーナーリングでは猛烈なGが働いて、血液がグーっと圧迫されて寄ってくるのがわかるんですよ。
そうなると血液が循環しにくくなってしまいます。だから本当にトレーニングが出来ていないと乗れないんです」
レース中のドライバーにかかる身体への負担は、想像を絶するレベルにある。それを克服するためのトレーニングとは、具体的にどのような内容なのだろう。
「とにかく走らされましたね。
たとえばウェイトトレーニングも『15分を何セットかやりましょう』というのではなくて、僕のトレーナーは『何十回を1つのセットにして、何十セットしましょうね』って。それだけで100回を超えるんですよ。
それこそ吐くくらいのトレーニングをしていましたからしんどかったんですが、だんだん耐えられる身体機能がついてきたし、最終的に僕はそのおかげで心配機能の強化が出来たと思います」
基本的な体力を身につけることは当然として、ほかにもプロのレーシングドライバーに求められるものは多い。
折目選手はこれからのレーシングドライバー像とモータースポーツについて、最後にこう締めくくった。
「時代によって、レーシングドライバーに求められることって変わってくる部分があると思います。
他の時代のことを僕が言うべきではないとも思うんですが、たとえば僕が今現在で何を頑張らなければならないかって言うと、ドライバーとして速いというのは当然のことだと思うんですよ。その上でさらに、谷口さんのように“走れて、喋れて”というような柔軟性も、今、そしてこれからのドライバーには必要だと思います。
なぜかと言うと、これからのモータースポーツは何かをしていかないと生き残っていけない気がするんです。ところが残念なことにレースの運営側がやっているプロモーションはまだまだ足りない部分も多い。だからドライバー個人で頑張ることが求められているんです。
オーストラリアのV8-Uteレースもそうでしたが、お客さんやスポンサーさんがレースにお金を落としても良いと思うだけの速さ、そして全体としてのエンターテイメント性、そういうことがこれからはより大切になってくると思います」