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HOME / MOTORSPORTS / ADVAN FAN / Vol.103 News Index
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雄大な南半球のオーストラリアは、アジアや欧米とはまた異なる独自の自動車文化が育まれてきました。

その代表格とも言える存在が、「Ute(ユート)」と呼ばれる乗用車ペースのピックアップトラック。日本でも1970年頃までは例えばクラウンにもリアセクションを荷台としたピックアップが存在していましたが、今ではすっかり姿を消してしまっています。
比較的大型のセダンをベースに2ドア/2座席化(一部には4ドア/5座席も有)して、車体後部はフラットデッキの荷台としたUteはオーストラリアで人気のカテゴリー。そんなUteをベースに仕立てられたマシンによるレースシリーズのひとつが、2001年に発足した「V8 Ute Racing Series」です。

2010年は全8戦を開催、それらはオーストラリア国内最高峰の「V8 Supercars」レースのサポートイベントとして行なわれ、年間で120万人以上の観客動員を誇り、同時にテレビ中継や専門誌、新聞などのメディア露出も多く、メジャーなスポーツのひとつとして幅広い人気を集めています。
マシンはオーストラリアの自動車メーカーであるホールデン社が製造する「ホールデン VE SS Ute」と、オーストラリア・フォードが生産している「フォード BF XR8 Ute」が参戦。ともにV型8気筒の大排気量エンジンを搭載した「Ute」と呼ばれるピックアップスタイルで、両社は市販車でも人気を二分しています。

改造範囲は非常に限られていて、エンジンやトランスミッションなどは基本的にオリジナルのまま。足回りについてはキャンバー角やホイールベース長、最低地上高などが厳密に定められています。その上でサスペンションなどはもちろん、エンジンまわりから駆動系など多くの部位に対して認定部品が指定されています。
つまり、日本でも身近なカテゴリーである「N1」に似た存在と言えるのが「V8-Ute」のマシン。例えばコクピットはオリジナルのダッシュボードが保たれている点なども、N1マシンに近いものがあると言えるでしょう。
駆動方式はFR(後輪駆動)、車両重量はレース仕様でも1,810kgと相当なヘビー級。その上でリアは空っぽの荷台なので重量バランスはフロントヘビーという特徴が有ります。

「V8 Ute」の走りを支えるタイヤは横浜ゴムがオフィシャルタイヤサプライヤーをつとめるワンメイク。使われているのはレーシングスリックではなく、競技用スポーツラジアルタイヤの「ADVAN A048」。タイヤサイズは235/40R18で、MHコンパウンドが規則によって唯一使用できるタイヤに定められています。
 
 
2010年12月3日から5日にかけて、シドニーで開催された「Sydney Telstra 500」。
シリーズを締めくくる最終戦は一般公道を封鎖した特設コースを舞台としたストリートレースでしたが、この一戦に日本からSUPER GTなどでもお馴染みの折目遼選手が出場しました。
日本人として初めて「V8 Ute Racing Series」に出場して、オーストラリアならではのUteレーシングマシンを駆った折目遼選手。まずはこの、オーストラリア参戦についてお聞きしました。
 
Ryo Orime PROFILE
■折目 遼 選手
1982年・京都府出身。
1998年、高校生になるとレーシングカートの活動を開始。'99年には琵琶湖選手権に参戦してシリーズチャンピオンを獲得。2000年に鈴鹿レーシングスクールSRS-Fを受講、翌'01年にフォーミュラドリームで4輪レースにデビュー。
'03年にM4マスターズクラスのシリーズチャンピオン、'05年には全日本F3選手権に参戦するとともに、スポット参戦したアジアフォーミュラルノー第5戦で優勝を飾る。
'06年にフォーミュラ・ニッポンにステップアップ、'07年からはRE雨宮よりSUPER GTに参戦。'10年は12月にオーストラリアで開催されたV8-Utesシリーズの最終戦に、日本人として初めての参戦を果たした。
 
2010年11月、V8 Uteへの参戦オファーを受けた折目選手。僅か3週間後にはレース本番という慌ただしいスケジュールの中、日本ではほとんど知られていないオーストラリアのモータースポーツについて情報収集から始めることになった。
折目選手自身も「それまで全く知らなかったレース」と言うが、インターネットで調べて出場する「Sydney Telstra 500」では3つのカテゴリーが開催されることを知る。

「最初はトップカテゴリーに乗るのかと思っていましたが、そうではないと知って若干落胆した部分もありました。
でも、実際に現地に行ってみたらとんでもない。落胆するような要素はどこにも無くて、とにかく盛り上がり方が凄いレースイベントでした」

SUPER GTを戦う折目選手を驚かせた盛り上がりの凄さ。それは、レース前のテスト段階から実感したという。

「クローズドのコースで2回テストをしました。何の知識もなく車を見せられた最初の印象は『めっちゃ普通のトラックやんか』という感じで(笑)。独特の挙動もあって、それに慣れながら走らせていたら、Uteのレースに日本人が出場するのは長い歴史の中で初めてということもあって、テレビや雑誌や新聞といったメディアが取材にも来てくれていました」

レースと自分自身に対する注目度の高さを感じた折目選手。
無事にテストを終えてレースが行なわれるシドニーへと飛行機で移動していた時に、折目選手はさらにこのシリーズがオーストラリアで高い人気を誇っていることを実感させられることになる。

「10日くらいオーストラリアに滞在したのですが、テストを終えてから国内線の飛行機で移動していたら、隣の席に座ったごく普通のお爺さんが『お前のこと、知ってるぞ』って話しかけてきたんです。
どうして知っているのかを聞いたら、『お前はUteのドライバーだろう。新聞に載っているのを見たぞ。応援しているから頑張れよ』って言ってくれた。
そんなこともあって、Uteというシリーズを含めて、モータースポーツそのものが何か日本とは違う格付けにあるのかな、ということに気づいたんです。テレビをつけたらレーシングドライバーが沢山出ていて、ニュースはもちろん、コマーシャルなんかでも頻繁に登場している。とにかくドライバーがとてもフューチャリングされているということに凄く感銘を受けましたね」
 
 
最終戦の舞台はシドニーのストリートコース。
折目選手にとっては初めてのマシンであることに加え、公道で行なわれるストリートレースへの出場も今回が初めての経験となる。

まずはマシンについて、テストを通じてどのような印象を受けたのかを聞いてみよう。

「クルマは至ってシンプル。SUPER GTのマシンにように、空力性能を突き詰めて考えながら作られている訳でもありませんし、どちらかというと“一般車をレーシングカーに仕立てました”という雰囲気で、N1車両に近い感じですね。車両重量は1,810kgもあって、基本的にフロントヘビー。バランスもレーシングカーとは思えないバラバラさ(笑)。
でも、こういうところでも日本との違いは感じましたね。日本ではクルマをとことん追求して、それをお客さんに“凄いでしょ”ということを解ってもらおうとしますけれど、オーストラリアの場合は市販車の原型を留めた上で、それを運転しているドライバーが凄いでしょう、とアピールしているように見えますね」

シンプルな造りのマシンは、ベースがピックアップスタイルということもあって独特な挙動もあったようだ。
実際のレースが行なわれるシドニーのストリートコース、まずは2回のフリー走行で折目選手はその感触を確かめつつコースインしていく。

「事前にテストしていたのでクルマの基本的な感触は解っていたので、フリー走行ではまずコースを覚えることに専念しました。タイムについては2回目のフリー走行の最終ラップか、その手前でセッションのベストラップを出せれば良いかと思って。
なぜかというとストリートコースなので、クラッシュして次はもう走れませんよとなったら意味がないので。なので、周りの状況も見ながら徐々にタイムを上げていくことにしたんです」

参加台数も30台以上と多いため、コース上での“渋滞”にはまる場面もあったが、概ね順調にフリー走行を消化した折目選手。レースウィーク金曜日のフリー走行が終わり、スケジュールは土曜日の予選と決勝Race・1、そして日曜日の決勝Race2&Race3へと進んでいき、シドニーはますます盛り上がりを見せていくことになる。


【>> 第2回につづく】
[UPDATE : 11.Mar.2011]
           
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