12周目で接戦を制してトム・コロネル選手をパスした谷口行規選手。あとはゴールに向けての力走が続くが、コクピットで谷口行規選手はいつも以上に1周を長く感じていたという。
「コロネル選手の前に出て、どんどんミラーに映っているコロネル選手は離れていきました。なのに雨が強くて自分はスピンしそうになって(笑)。後ろもそこそこ離れたし、視界が悪くて前は見えないしという状況なので無理はせずに、とにかくゴールまでこのままたどりつきたいなという思いでした。
ストレートを通るたびに残り周回がサインボードで示されますが、『あ〜、まだ3周もある〜!』という感じで(笑)。3.7kmのコースがいつも以上に長く感じましたね」
残る周回も力走、16周を走りきって日本人ドライバーとして初めてインディペンデントトロフィーの優勝を飾る栄光のチェッカードフラッグを受けた谷口行規選手。
日本人として初めて表彰台下のパルクフェルメにマシンを入れて降りてきた谷口行規選手だが、意外なまでに冷静な雰囲気で表彰台へと上がって行った。
「いや、もう実感が無かったんです。『やったー!』という感じじゃなくて、『あれ?これ、いいのかな?』という感じで(笑)。
無線ではエンジニアから『Good Job!』と言われていたのですが、チェッカー後にピットロードに入ってきたら『これどうしたらいいの?どこに行けばいいの?』とそればかり無線で言われて。
『車検場じゃないか?』なんて言われて、それは違うでしょと言ったら今度は『ピットに戻ってこい』って。表彰台の下に行くんじゃないの?と聞いたら、『ああ、そうだ、そうだ』って、なんだかドタバタして(笑)」
マシンをパルクフェルメに入れると、間髪入れずに表彰式がスタートする。日本のレースではフィニッシュから暫定表彰式までに若干時間が空くことも珍しくないが、WTCCの場合はテレビ放映との兼ね合いもあって、こうしたスケジュールは無駄なく進められていく。
日本人として初めてWTCCの表彰台に総合トップ3の面々と並んで立った谷口行規選手。横浜ゴム・取締役常務執行役員の野地彦旬からインディペンデント優勝トロフィーを受け取り、WTCC史に栄光の1ページを刻んだ。
「そうですね、トロフィーを手にした瞬間に『これ、持って帰っていいのかな?』って(笑)。トロフィーはきちんと持って帰って家に置いてありますが。
表彰式、記者会見とやってピットに戻ったら、『ほら、次はすぐに第2レースだから』と」
やや慌ただしく第2レース(第20戦)に臨んだ谷口行規選手。
雨足が強まってコンディションが難しくなった中、第2レースもインディペンデントトロフィー6番手でしっかり完走を果たした。