2008年3月某日。とあるクローズドコースを疾走する、一台の三菱ランサーエボリューション]。真っ白なボディ、まさに"出来立てホヤホヤ"のラリーマシンを駆るのは、全日本ラリー選手権で幾多のチャンピオンを手中におさめてきた奴田原文雄選手である。
「エボリューション]、いいですね!
特に乗った感じで圧倒的に良いなと思えるのが、車がとても安定していること。トラクションも路面にすごくかかるので、中・高速コースや荒れたグラベルなどではより速さが光るでしょう。」
車から降りてきた奴田原選手は笑顔でエボリューション]を走らせての好印象を語る。
第二世代の「エボリューションII」から実戦でステアリングを握ってきた奴田原選手は、歴代の"ラン・エボ"とともにそのラリー人生を歩んできた。まさに「ランエボ・マイスター」である。そしてRed
in BlackのADVANカラーをまとうマシンで数多くの栄冠をその手中におさめてきた。
「基本的なキャラクターは最新型の]になっても、それまでのエボリューションにあったものを受け継いでいますね。
例えばエンジンの力強さとか、低・中速の溢れるようなトルク感とか、コーナー立ち上がりでの高いトラクションなどです。」
奴田原選手の口からは次々に好感触を語る言葉が飛び出てくる。2008年、シリーズチャンピオン奪還に向けての手応えは十分ということだろう。しかし、今回のランサーエボリューションはとても大がかりなフルモデルチェンジを受けた車であることも事実。
「そうですね、シャーシもエンジンも駆動制御も全てが新しくなったので、現時点では手さぐり状態という現実もあります。必要なパーツも全てが完全に揃っているわけではないので、これから走らせつつ開発も進めていくということになりますね。
しかし、例えばボディはノーマル状態でも剛性が高く素性の良さを感じますし、サスペンションもノーマルの基本状態が良いので思っていた以上にコーナーリング能力が高いですね。更に足回りでいえばサスペンションが試作段階から良いものが出来てきているので、全く不安はありません。
エンジンはアルミブロックになっていますが、正直なところ過酷なラリーでの耐久性については未知数の部分もあります。電子制御についても現時点では何も触っていないのですが、ここはこれからの課題ですね。」
ボディサイズが拡大され、ホイールベースやトレッドが拡大されたことからポテンシャルの変化が気になるところであったが、思っていた以上にコーナーリング能力も高いと奴田原選手は評価した。
そして、その高い走行性能には、もちろん走りを支えるADVANの存在がある。
「ADVANタイヤは元々ポテンシャルの高いものですが、エボリューション]ではサイズが18インチに拡大されたことも大きな戦闘力の向上につながっています。トラクションやグリップが圧倒的に向上し、やはり18インチのほうが良いな、と確実に感じられますね。」
シーズンインに向けてテストを重ねている中で、奴田原選手は確実に手応えを感じているようだ。
「エボリューション\と比べると、中・高速コースは圧倒的に戦闘力がアップしているでしょう。北海道でのラリーなんかは得意とするところでしょうね。
逆に狭くてクネクネしたようなステージはちょっと苦手かもしれません。しかし、そこはセッティングを合わせることで対応しつつ、エボリューション]の長所を活かす走り方で組み立てて攻略していこうと思います。」
自信にあふれる「奴田原スマイル」で語ってくれた奴田原選手。
来るべき開幕戦に向けて、ニューマシンの開発は更に進められる。そう、既にメンテナンスガレージやテストフィールドでは2008年の戦いが始まっているのだ。