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インタビュー
[Photo]
"ドリフト"と言えば絶対にこの2車種を抜きに語ることは出来ない。
「AE86(カローラレビン・スプリンタートレノ」と「シルビア」である。
 
"スポーツカー冬の時代"と言われるようになって久しい今日、新車では手に入れられなくなりつつある後輪駆動のライトウェイトスポーツカーとして、「名車」として広く認識されるようになってきた車種。
 
そしてこれらに徹底してこだわり、アマチュアからトップドライバーまで幅広いドリフト愛好家にその名を知られているドライバーがいる。
 
吉岡稔記選手。D1グランプリにAE86で参戦を続け、今や"ナンバーワンのハチロク使い"として上位争いに常にその名を連ねている。

「ドリフトを始めた頃はFC3S型RX-7に乗っていたのですが、ドリフトが上手いAE86乗りの方がいて『自分もハチロクに乗れば、あんな走りができるんじゃないか』と思って乗り換えました。そうしてレビンの3ドアを買ったのが10年ちょっと前のこと。
しばらくして次のクルマに乗り換えるときには、本当はソアラとかパワーのあるクルマが欲しいと思ったんです。でも、結局AE86を捨てきれず、同じレビンの3ドアを買って、キャブのメカチューン仕様にして乗っていました。そのクルマで、99年に全国誌の大会に出るようになりました。
そして、D1グランプリが発足して参戦するようになり、2004年からはDroo-Pさんのドライバーとして乗るようになりました。」

 
1983年から1987年にかけて生産されたAE86型は、レビン・トレノとして最後の後輪駆動モデル。
レビン・トレノが前輪駆動に生まれ変わったのと入れ代わるように、1988年に登場して一躍人気を集めたのがS13型シルビア。アーティスティックなデザインと卓越した走行性能が人気を集めたが、時とともにドリフトベースとしても注目を集め、1993年に登場したS14型、そして1999年に登場して2002年に生産終了したS15型まで、三代に渡ってドリフトファンからも支持されたモデル。
そして現在のドリフト界において最もシルビアを知り尽くした男がいる。
 
「グリップでもドリフトでも、シルビアっていうクルマは走りやすいんだ。ここを変えたらよくなったっていうのがよくわかる。何かパーツ付けてやればどんどん良くなるんだ。
現実に今、アマチュアの最速はパワーに勝るGT-RでもFD3Sでもなくてシルビアなんだよ。そのぐらいシルビアって変化の度合いが大きいし、乗っていて楽しい。楽しさがやっぱりイコールなんで最高の素材。そしてパーツも豊富だし、チューニングの素材としては一番いいクルマだよ。」


こう語るのはピンク色のシルビアを駆ることでお馴染みの岡村和義選手。ヤシオファクトリーを率いる卓越したチューニングセンスとテクニックでも良く知られている。
 
では、まず"AE86使い"として知られる吉岡選手に、現在乗っているAE86について聞いてみよう。

「このハチロクは簡単に言うと、軽くて、パワーがあって、でかいタイヤを履いている、という感じです。タイヤはADVAN Neova AD07ですが、グリップが高くて安定しています。
しかし、NOSを使っているので走行中に大きなパワーの変動があり、ごまかしが効きません。セッティング的にはジャジャ馬ではないのですが、アクセルの踏み方ひとつで変わってしまうんですよね。アクセルを踏んでないと戻っちゃいますから、上手く踏み続けられるためのラインを見つけます。」


ターボを搭載していない吉岡選手のAE86にとって大きな武器となる「NOS」。パワーアップ効果は絶大で、富士スピードウェイでのD1ではスピードガン計測で180km/hを超える値をマークしたという。
では、「NOS」とはどういったものなのだろうか。

「大気中の空気の1.5倍もの酸素を含んだ亜酸化窒素をシリンダーへ送り込むことで、より強い燃焼を得るという原理のシステムです。
このマシンには、10kgボンベを2本ツインで搭載し、同時に吹くようにセット。ドラッグレースなどでよく用いられる、燃料も同時に噴射するウェットショットではなく、ガスのみを噴射するシンプルなドライショットを採用し、HKSのF-conV Proでセッティングしています。
コースにもよりますが、エビスサーキットなら6本程度は走れますね。しかし、今は2本走行を目安にして新品のボンベに換えています。
最高で320psぐらい(約80psパワーアップ)になりますから、ノンターボエンジンにNOSは非常に効果的ですね。」
 
仕組みが分かると気になってくるのがNOSの使い方。吉岡選手は走行中に、どのようにNOSを使いこなしているのだろうか。
 
「アクセル開度90%以上で、かつエンジン回転数4500rpm以上という条件になると、自動的に亜酸化窒素を吹くようになっています。
やはり、優勝したオートポリスや、富士などのようなハイスピードコースになればなるほど、効果が高いといえますよね。
だんだんパワーも上がってきて、ほかのターボ車にひけをとらないレベルまで上がっています。そうなるとハチロクがローパワーでダメだという話にはならないでしょうね。」
 
一方、ターボエンジンを搭載してパワフルな素性の持ち主であるシルビア。S15型が搭載しているSRエンジンとはどのような特性の持ち主なのかを岡村選手に聞いてみた。
 
「SRエンジンは、10年くらい前までは『ガラスのエンジン』などと言われてた。みんな380馬力ぐらいまでパワーアップして壊しちゃっていたんだよ。
でもオレたちが頑張って勉強するようになって、壊れなくなった。今乗っているクルマだって600馬力ぐらい出ているけれど、そこまでパワー上げてもトラブルが少ない。
他の車種ではパワーを上げていくと1年間で1機のエンジンじゃ走れないものもある。でも、このクルマなんて3年くらいオイル交換だけで、そのまま600馬力で走れちゃうんだから。4気筒のコンパクトなエンジンのわりに馬力もトルクも出せる。それが支持されている理由じゃないかな。
こうなったのも、我々がウイークポイントを発見して、ECUのマップとか、ここをこうすれば壊れなくなるということがわかったからだと思う。
今日もこれだけいっぱいいても、SRでエンジンブローしてるクルマって、ほとんどいないでしょう?」


ベースエンジンの素性の良さを見抜き、耐久性の向上も含めたポテンシャル向上を果たすためには、岡村選手らチューナーが日々積み重ねてきた努力が背景に存在していることは決して忘れられない事実。
ところで耐久性といえば発熱が多いターボエンジンならではの部分として冷却性能の向上も大切な項目である。

「自分のS15はエアコンも外したし、エンジンの仕様からしても、水温が上がるような心配はないよね。
ヤシオファクトリーはもともとラジエター屋だし(笑)、S15用のラジエターも何種類かラインアップしているけど、この車には『スーパーライトR』という、銅3層のコアを使用したタイプを使っているんだ。アルミも設定しているけど、ドリフトはこれで十分。
もうひとつはエンジン特性。GT3037タービンを使っているけれど、これがすごくパワーを出してくれる。ブーストは1.7kgf/cm2。ドリフトは下があればあるほどいいから、そのあたりも勉強して、あまり回さなくてもパワー&トルクが出るようにセットアップしている。
同じエンジンだけど、グリップだけではなくてドリフトもやることによって、さらに勉強して、チューニングという部分についても、どんどん進化しているんだ。勉強しないと置いていかれちゃうんで(笑)。」


自らドライバーとしても活躍する岡村選手、数々の経験がチューニング技術に反映されているのは言うまでもないだろう。
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