ここで再び吉岡選手に登場いただき、AE86に対する"コダワリ"についてお聞きした。パワーを追求した結果であるNOS搭載のマシンだが、ベースからハイパワーのマシンに乗ろうと思ったことはないのだろうか。
「ステップアップのためにAE86から別の車種に乗り換えたいという気持ちもないわけではありません。確かに今のD1GPで勝つには、他のハイパワー車に乗り換えたほうが手っ取り早いかもしれませんよね。
ただ、ここまでAE86でやってきましたから、ありきたりのクルマに乗り換えると、せっかく自分のカラーが消えちゃうんじゃないかと。また、Droo-Pの松岡さんはじめ、ここまでやってくれる体制がありますから、クルマもちゃんと仕上がっているし、やめるのはもったいないと思っています。
戦闘力も今や、ターボ車に遜色ない走りを見せられるようになっていますからね。」
こう語ってくれた吉岡選手、やはり当面はAE86との"二人三脚"でドリフト界に君臨し続けることになりそうだ。
一方の岡村選手はADM、D1ストリートリーガル、そしてD1グランプリとステップアップを果たして現在に至っている。果たしてそのステップアップの背景には、どんな練習やテクニック上達術が隠されているのかを最後にお聞きした。
「ADMに出だした最初の1年は、クルマがドリフト仕様じゃないし、オレの頭の中では『速いドリフトのほうがエライ』としか考えてないから、角度も浅いし…、考え直したのがADM卒業の年。あのときはショップのオレですらタイヤ代がものすごかったよ(笑)。
練習を重ねて試行錯誤したけれど、例えば15分の練習だと後半になって自分の調子の良さが出てくる。それでは1本勝負、2本勝負では、絶対に勝てないんだ。そのことに気がついたのが、D1グランプリ出場権を取ってから。
翌年からは、1本、2本しか走らない練習をして、走り方のコツを覚えていった。それが2004〜2005年のこと。そしてクルマのほうもドリフト仕様に仕上げていったら、とてもドリフトがしやすくなった。
そういうことがわかってくると、得点の出し方だとか、3本勝負の組み立てなどもわかってきたよ。上手いとか下手ではなくて、D1という競技は、その3本にいかに合わせられるか、が大事なんだ。ココが弱い人はダメだよね。
それと、オレは意外と本番に強いタイプなので(笑)、"緊張"よりも"集中"できる。ゼッケンの後ろのほうの人を見ていると、みんな練習はものすごく上手くても、3本でダメ。これだけギャラリーいっぱいいたりすると、やっぱりどうしても平常心で走れないんだ。
最近はあまり練習してないけど、「岡村義塾」っていうスクールを月1回開いて、初心者10人を対象に僕が教えてるんだ。教えてること自体が自分のスキルアップになって、勉強になる。
追走は今まであまり練習したことがない。ノリで行っちゃうので(笑)。最初に相手に一発かましてビビらせといて、それからスタートするので、オレのほうがアドバンテージある状態で走れるんだよ。」
吉岡選手と岡村選手、それぞれのクルマに賭ける"思い"は実を結び、現在ではともにD1グランプリの上位に常にその名を連ねる強豪選手としてファンの声援を集めている。