ヨコハマタイヤは、1983年から30年にわたってマカオ・グランプリのF3にオフィシャルタイヤを供給してきました。
昨今、ワンメイクタイヤ制が導入されているカテゴリーは少なくありませんが、これだけの長い期間を単一のメーカーがサプライヤーとして供給しているケースは、マカオ・グランプリをおいて他にはありません。
では、マカオ・グランプリのF3用タイヤに求められる性能とは、どういったものなのかという疑問を持ったファンの方もいらっしゃるかもしれません。
その答えは、一番には「全ての車両に同じ性能のものを供給するように品質を高めること」であると言えます。
ワンメイク、つまりみんなが同じものを使うわけですから、タイムのみを重視した性格のタイヤである必要というのは小さくなります。とは言っても、F3の世界一を決めるレベルの高いレースですから、ある程度のタイムを出せるタイヤである必要があることも、矛盾しているようですがこれまた事実です。
基本的な性能としては、前述のように路面μが低くてエスケイプゾーンが無いストリートレースということで、あまりピーキーな性格のものは適切ではありません。タイヤの使用本数についても規則で定められているのですが、クラッシュの多いレースでもあるので対外傷性、つまり多少のことでは壊れないことも求められる要素のひとつです。その上で、タイヤの性能に“はらつき”が生じないことも重要なポイントとなります。
マカオ・グランプリでは、レベルの高いチーム/ドライバーにヨコハマタイヤを使ってもらい、その意見を聞くことが出来るので、タイヤの開発を行う上ではとても重要なレースです。特に普段は他メーカーのタイヤで戦っている選手が、いきなりヨコハマタイヤを装着して走るというケースも少なくないので、貴重なコメントを聞けることも多いですね。
今はWTCCでもストリートレースが何戦かありますが、常設サーキットでのレースと比べて絶対的に開催数が少ないだけに、ストリートレースを経験出来ることも開発者にとって大きなメリットです。
こうしたマカオ・グランプリでの経験は他のカテゴリーにおけるタイヤ開発にも活きてきますし、マカオ・グランプリだけでもF3のほかにツーリングカーやGTなどたくさんのレースがありますから、開発者として得るものはとても多いですね。