第59回 マカオ・グランプリ [ヨコハマタイヤ F3オフィシャルタイヤサプライヤー 30周年] トップページにもどる
YOKOHAMA|59th. MACAU GRANDPRIX 2012  =30th. Official Tyre supplier of MACAU F3=
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総括責任者|藤野毅 タイヤ開発エンジニア|小林勇一 タイヤサービス・チーフ|栗田修一
近年モータースポーツの世界では、ひとつのタイヤメーカーが独占的に供給を行う「ワンメイクタイヤ制度」が多く見られるようになった。そのメリットはいくつかあるが、イコールコンディションを保つことが出来ることは筆頭に挙げられるだろう。

世界各地のF3シリーズを戦ってきた猛者たちが集う、マカオ・グランプリのF3。1983年にF3規定が導入されてから今日までヨコハマタイヤがオフィシャルタイヤサプライヤーをつとめてきているが、“F3使い世界一”を決めるとも言われるマカオ・グランプリにおいては、このイコールコンディションが大きなキーワードとなる。

マカオ・グランプリのF3で使われるタイヤについて、開発を担うエンジニアの一人である小林勇一が解説します。
マカオ・グランプリのF3というのは、タイヤ開発者の視点から見ても、各国のF3シリーズを戦ってきた上位チームが集まってくる、とてもハイレベルなレースです。
それだけに世界的な注目度も高いわけですから、開発者としてもいつも以上に緊張感のあるレースであるというのが、率直なとらえ方です。

皆さんもご承知のように、マカオ・グランプリの舞台となるコースは、普段は一般公道として使われています。ゆえにレースウィークにしかレーシングマシンは走ることが出来ないというところが、一般的なサーキットコースでのレースと最も大きく異なる部分でしょう。

路面そのものも特殊な舗装が施されている常設サーキットとは異なり、全体的にグリップは低め。レースウィークになるとガードレールが設営されてコースサイドを囲み、エスケイプゾーンがほとんどありませんから、ミスをすると受けるダメージも大きくなってしまいます。
ゆえに参加する選手やチームにとっては、限られた短い時間の中で適応していくことが求められる、とてもシビアな戦いです。
ヨコハマタイヤは、1983年から30年にわたってマカオ・グランプリのF3にオフィシャルタイヤを供給してきました。
昨今、ワンメイクタイヤ制が導入されているカテゴリーは少なくありませんが、これだけの長い期間を単一のメーカーがサプライヤーとして供給しているケースは、マカオ・グランプリをおいて他にはありません。

では、マカオ・グランプリのF3用タイヤに求められる性能とは、どういったものなのかという疑問を持ったファンの方もいらっしゃるかもしれません。
その答えは、一番には「全ての車両に同じ性能のものを供給するように品質を高めること」であると言えます。

ワンメイク、つまりみんなが同じものを使うわけですから、タイムのみを重視した性格のタイヤである必要というのは小さくなります。とは言っても、F3の世界一を決めるレベルの高いレースですから、ある程度のタイムを出せるタイヤである必要があることも、矛盾しているようですがこれまた事実です。

基本的な性能としては、前述のように路面μが低くてエスケイプゾーンが無いストリートレースということで、あまりピーキーな性格のものは適切ではありません。タイヤの使用本数についても規則で定められているのですが、クラッシュの多いレースでもあるので対外傷性、つまり多少のことでは壊れないことも求められる要素のひとつです。その上で、タイヤの性能に“はらつき”が生じないことも重要なポイントとなります。

マカオ・グランプリでは、レベルの高いチーム/ドライバーにヨコハマタイヤを使ってもらい、その意見を聞くことが出来るので、タイヤの開発を行う上ではとても重要なレースです。特に普段は他メーカーのタイヤで戦っている選手が、いきなりヨコハマタイヤを装着して走るというケースも少なくないので、貴重なコメントを聞けることも多いですね。
今はWTCCでもストリートレースが何戦かありますが、常設サーキットでのレースと比べて絶対的に開催数が少ないだけに、ストリートレースを経験出来ることも開発者にとって大きなメリットです。

こうしたマカオ・グランプリでの経験は他のカテゴリーにおけるタイヤ開発にも活きてきますし、マカオ・グランプリだけでもF3のほかにツーリングカーやGTなどたくさんのレースがありますから、開発者として得るものはとても多いですね。
私自身が初めてマカオ・グランプリの現場に行ったのは2003年のことでした。当時はギア・レースというツーリングカーの主担当だったので、F3よりもそちらの印象の方が強いのですが、こんな都会の中でレースを行うことの凄さに驚きましたね。また、クラッシュが多いことは聞いていた通りですが、地下にサポートレースのピットがあったり、この時はスクーターのレースもあったりで、驚きの連続でした。

レースの世界というのは、景気や世情に左右されることも多く、何かと浮き沈みが激しい面も持ち合わせています。そんな中で、ひとつのカテゴリーに何十年も参戦を続けているメーカーというのは、世界的に見てもそんなに多くはないと思います。

2012年でヨコハマタイヤは、マカオ・グランプリのF3へのオフィシャルタイヤ供給30周年を迎えますが、一口に30年と言っても、これだけ長くタイヤ供給を継続してきたことは、凄いことであると思っています。

ヨコハマタイヤでは2011年から全日本F3選手権にもオフィシャルタイヤを供給していますが、それ以外の各国でもタイヤ供給を行うなど、期待の成長株が多く参戦するこのカテゴリーも足元からしっかり支えてきています。
マカオ・グランプリについても、先輩方から続いている偉業を絶やすことの無いように、信頼される高品質なタイヤの開発を続けていきたいと思っています。


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