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ヨコハマタイヤとシビック
2013年、シビックワンメイクレースの歴史にひとつの区切りがつけられた。この年をもってシビックによるワンメイクレースは終了となることが、第4戦終了後に発表された。現時点におけるラストイヤーとなった2013年シリーズ、その戦いを改めて振り返ってみよう。
2013年の無限パワーカップ・シビックワンメイクレースは前年同様、全5戦でシリーズが開催され、岡山国際サーキット、ツインリンクもてぎ、富士スピードウェイ、スポーツランドSUGO、そして鈴鹿サーキットを転戦した。タイヤについても前年までと同様に、コントロールタイヤとしてヨコハマタイヤが使用されている。


■Round1 岡山国際サーキット (2013.4.6 - 4.7)

開幕戦の岡山、あいにくの雨模様となった予選でトップを奪ったのは伊藤博之選手。
決勝レースも雨こそ上がっていたものの、ウェットコンディションの中で争われた。伊藤選手と大西隆生選手の予選タイムはコンマ3秒差だったこともあり、接戦となることが予想されたが、スタートが切られると伊藤選手が他を圧倒。オープニングラップだけで大西選手に3秒もの差をつけていった。
トップの伊藤選手は一時8秒以上としていたリードを、5秒を切るまでとしてゴールしたが、それには理由もあった。「終盤はもう抑えていましたが、それよりバックマーカーがヤバかったんですよ。青旗振られてもフラフラしていたし!」と伊藤選手。それ以外は余裕の、ポール・トゥ・ウィンとなった。


■Round2 ツインリンクもてぎ (2013.5.11)

続くもてぎでの第2戦は予選こそドライだったものの、決勝レースが雨に見舞われた。
伊藤選手が2戦連続でポールポジションを獲得し、これに水越真一選手、大西選手、RIKU選手が続く。決勝レースでは序盤こそ水越選手を背後に置いていた伊藤選手ながら、中盤以降は徐々に差を広げていった。
「もてぎの雨は久々だったので、かなり慎重に。そのうち、これぐらいかなっていうのが分かってからは少しずつ」と伊藤選手。3位は大西選手が獲得した。


■Round4 富士スピードウェイ (2013.6.1)

そして、第3戦の舞台は富士。3戦連続でポールポジションを奪った伊藤選手がスタートも決めたのに対し、予選2番手だった大西選手はスタートに出遅れ、いったん3番手に後退するも、コカ・コーラコーナーですぐに挽回する。
その間にトップ伊藤選手との差が広がるが、富士をこれまでも得意としてきた大西選手のプッシュもあって、両車は急接近。5周目のストレートでスリップストリームから抜け出して大西選手が前に出る。
その後は、伊藤選手と水越選手のバトルが激しくなり、「最後はタイヤがきつかった」ものの、大西選手が逃げ切りを果たし、伊藤選手の連勝を止めることとなった。


■Round 4 スポーツランドSUGO (2013.9.28-29)
 
約4か月のインターバルを置いて、第4戦の舞台はSUGOに。ここはホームコースとあって、気合いの入る水越選手、RIKU選手を従え、4戦連続ポールとなったのは伊藤選手で、2番手は大西選手。前回の勝利で伊藤選手とのシリーズランキング得点差は7ポイントにまで詰まっただけに、大西選手にとっても、ここは落とせないところ。
決勝レースは予選順位のまま、いきなり三つ巴のトップ争いとなった一方で、RIKU選手がスタートでひとつ順位を落とし、村本選手の先行を許す。
3周目の1コーナーでRIKU選手が4番手に浮上。そして、9周目にはトップ集団にも動きが。伊藤選手のミスを逃さず捕らえた、大西選手が前に出る。だが、伊藤選手も負けてはいない。10周目のヘアピンで大西選手に迫るが、ここでの逆転はならず。次の周のヘアピンでも攻め立て、そして続くS字で逆転に成功。最後まで3台はコンマ差で続き、伊藤選手、大西選手、水越選手の順でフィニッシュとなる。
「基本、後ろに合わせて走っていたんですけど、3コーナーの先でシフトミスしてしまって。その後は少々強引(なオーバ―テイク)でしたけれど、当てて抜いたわけじゃないし。でも、これでタイトルがかなり近くなりました」と伊藤選手。
そして、前述のとおり、その翌日にシリーズ終了が正式に発表される。
■Final Round 鈴鹿サーキット (2013.11.09)

最後のシビックレース、その舞台は鈴鹿。30年以上前にシビックワンメイクレースが産声を上げた地で、ひとつの時代が幕を閉じようとしている。

さて、最後のチャンピオンを賭けた争いは、伊藤選手と大西選手の一騎討ちになっていた。その差は12ポイントあるため、大西選手が逆転するには優勝してなお、伊藤選手が9位以下に留まるのが条件だ。予選ではコースインを遅らせて、終盤にアタックをかけようという作戦が裏目に出て、「まったくクリアラップが取れなかった」伊藤選手は4番手に。そして、大西選手を挟む形でポールポジション、3番手を奪ったのが高島登選手、そして牧田克哉選手だった。

最後の決勝レースは、それまで降り続いていた雨こそやんでいたが、ウェットコンディションで争われた。そのスタートで事件が起こる。
「サイドブレーキがなぜかロックしていなかったんです。いつもどおりの感覚で引いて、半クラッチにし始めた瞬間、バンと動いてしまったんです」と伊藤選手。この痛恨のスタートミスによってひとつ順位を落としてしまったばかりか、いずれスタート違反でペナルティを命ぜられるのは明らか。「終わった」と思ったという。そして、その目の前には高島選手の後ろに大西選手が、そして絶妙のスタートを決めた水越選手、牧田選手が続いていた。

そして、2周目に差し掛かる前にコントロールポストからは、ドライビングスルーペナルティを命じる黒旗が。それは覚悟の上だった伊藤選手、だがハッと息を飲む。ボードには自身のゼッケン8だけでなく、7も記されていたからだ。「まさか、大西くんまで……」。チャンピオンを争う2台が、揃ってスタート違反のペナルティを受けることになっていたのだ。

周目にはともにピットに進んで、大西選手が9番手、伊藤選手が10番手に後退。これにより、トップ争いは高島選手と水越選手、牧田選手の三つ巴へと変化する。5周目の1コーナーで、水越選手がアウトから高島選手に仕掛けるも、ここでの逆転はならず。その攻防の間に、牧田選手がより間隔を詰めて、そこからは常に3台がコンマ差。
最終ラップには水越選手が再び勝負に出る。ところが、その水越選手が最終コーナーで失速! 最後の最後でドライブシャフトが破損したのである。
これにより、高島選手と牧田選手とでワン・ツー・フィニッシュを達成。それまでのマージンが効いて、なんとか水越選手は3位でフィニッシュし、4位はカン・ソンホ選手が、5位はRIKU選手が獲得する。大西選手と伊藤選手はひとつずつ順位を上げて8位、9位に。最後のチャンピオンには、伊藤選手が輝くことになった。


WINNER : 高島登 選手 (MTEX制動屋SSRシビック)

「シビックレースでは体力の衰えもあって、もう優勝できないと思っていたんで、優勝できて本当に嬉しいです。今まで地方シリーズでの優勝はありますけど、これもインターシリーズなので、より勝てて嬉しいです。
水越選手がピタッと着いていましたけど、予選ではだいぶ前を走っていたから逃げ切れると思っていました。ちょっとブロックがきつかったかもしれないですけれど」


2013 Series Champion : 伊藤博之 選手 (DRAWING msμMoty's FD2)

「ちょっと終わり方がね……。なんかチャンピオン獲れたっていっても、難しいですよ、心情的に。今はちょっと素直に喜べないっていうのが、実際のところですね。まともに走って、争った中で順位が落ちているんだったら、全然いいんのですが(苦笑)。

まぁ、『お前みたいなへたくそが、勘違いするなよ』って、そういう感じだったのかな。落ち着けば、1年戦っていちばんポイントを稼いだのは自分なんだから、ってなるんでしょうけれど。

クルマの整備は自分でやっているので、もう少しシビアに……っていうのに役立てば、笑い話にもなるでしょう」
[UPDATE : 21.Feb.2014]
             
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