APRCの各シリーズ戦の中で、「Rally Hokkaido」はアベレージスピードが高いという特徴があります。今回、最もアベレージが高かったのはSS5の「NEW
KUNNEYWA」で、117.7km/hに達しました。海外のラリーと比べても、グラベルとしてはかなりのハイスピードラリーなのです。
こうした高速域を開発段階から視野にいれているADVAN A053には、ベストマッチの一戦だと言えるでしょう。
また、路面の質は柔らかく、走行を重ねることでワダチが深く掘れていくのも特徴です。この点について日本人ドライバーはワダチに慣れていて巧く活かした走りをするのですが、初めて走った外国人ドライバーの中には戸惑いを見せた選手もいましたね。
こうした場面でもADVAN A053は、ピークはもちろんコントロール性も重視して作り上げているので、ワダチでの操縦安定性でも優れたパフォーマンスを示しました。また、砂利の多さに対して今回はトラクション部をハンドカットすることで対応しています。
今年の開幕戦からはプロトン・サトリアネオに適応する150/625R15サイズを投入していますが、これは2輪駆動の比較的パワーが小さい車両をターゲットとしています。具体的にキーポイントとなるのは、トラクション性能やアクセルを開け続けられるコントロール性能。こうした部分を活かしつつ、A053の特徴であるハイスピード域での安定性をプラスさせたイメージでしょうか。
結果的にはトラクション、安定性の両面でADVAN A035を上回るものが出来上がりました。スバル・WRXや三菱・ランサーのサイズは、車が持つ強力なパワーとトルクをタイヤが受け止めて路面に叩きつける屈強なイメージ、対してサトリアネオのサイズは限られた車のパワーを確実に路面へ伝えるしなやかなイメージ、という感じです。
また話題となったスバル・WRX STI R4の4ドア仕様ですが、タイヤから見た限りは5ドアハッチバックとの違いは全くありませんでした。重量が5ドアよりも10kgほど増えているのですが、影響はありませんでしたね。
むしろ、当初は若干セッティングに戸惑った部分もありましたが、リアの落ち着きが良いだけにハイスピードラリーでのポテンシャルは高そうです。ADVAN
A053もIRC(インターコンチネンタル・ラリー・チャレンジ)で培った高いコントロール性、路面・天候を選ばない安定性が、4ドアボディにも対応出来たと考えています。
アジアカップを制した炭山選手は、本当に走りが安定していましたね。タイヤ選択にも迷いは感じられず、速くて安定した走りを見せて、マシンもノントラブル、タイヤももちろんトラブル無しで走りきれました。これは走りながら冷静にきちんと周りが見えている証拠ですから、この調子で最終戦の中国にも期待したいところです。
ジュニアカップは番場彬選手組がタイトルを確定させました。昨年はADVAN A035での戦いでしたが、今年はA053になったことで、さらにハイレベルな戦いに貢献できたと自負しています。
番場選手はA053を初めて装着したときから気に入ってくれましたし、タイヤの使い方についても積極的に質問を寄せてくれて、本当に良く研究していました。ラリー中にも、より良いA053の走らせ方をトライしてましたし。さらに、コ・ドライバーの保井隆宏選手も、コ・ドライバーの視点で感じたタイヤの挙動を寄せてくれたりして、保井選手の貢献度も高いと思います。
ヨコハマタイヤ勢が圧倒的な活躍を見せた「Rally Hokkaido」になり、最高の結果を残すことができました。今までの開発の方向性が間違っていなかったことも証明できましたが、今後も今回の結果に甘んじることなく、さらなるレベルアップを図っていきます。