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Pacific Cup Rally Hokkaido (1) Rally Hokkaido (2) Asia Cup
FIAアジア・パシフィック・ラリー選手権(APRC)。
俗に“アジパシ”と呼ばれるこのシリーズは、アジアと南半球の国々を舞台として転戦している、FIAの地域選手権である。WRC(FIA世界ラリー選手権)の次位にあたるFIA地域選手権のひとつであり、2012年は日本を含む全6戦のカレンダーが組まれている。

1988年に創設され、初代チャンピオンに輝いたのは篠塚建次郎選手。また、1996年には片岡良宏選手がグループN部門のチャンピオンを獲得、1999年にはグループA車両が主役となっている中で改造範囲が厳しく制限されたグループN車両を駆る田口勝彦選手がシリーズチャンピオンを奪う快挙をなし遂げた。これらの王座獲得を足元で支えたのは、ヨコハマタイヤのADVANラリータイヤである。

2011年、APRCでは新たに若手育成を目的として設けられたジュニアカップで、プロトン・サトリアネオを駆る番場彬選手と保井隆宏選手のコンビが初代チャンピオンに輝いた。さらに2輪駆動部門のドライバーズタイトルも、ベテランのカラムジット・シン選手が手中におさめ、ヨコハマタイヤ勢の活躍が目立つ一年となった。
 
2012年のAPRC、ヨコハマタイヤ勢の中では「PROTON R3 CUSCO Rally Team」からサトリアネオで参戦する、番場彬選手組とカラムジット・シン選手組という、前年チャンピオンの二人がまずは注目の存在。
プロトン社のワークス体制で、ジュニアカップと2輪駆動部門のチャンピオンを目指す。さらに、マレーシア国内選手権でも活躍を見せる期待の若手、ケネス・コウ選手が3台目のマシンをドライブ、厚い選手層で栄冠を目指す。

また、プライベートチームとしては二瓶崇選手とマイケル・ヤング選手が参戦。ヤング選手は1992年12月生まれのニュージーランド人、19歳の若きホープである。

APRCは第1戦・ニュージーランド、第2戦・ニューカレドニア、第3戦・オーストラリアと、前半は南半球を転戦する。全6戦のAPRCはFIAのアジア・パシフィック選手権がかけられているが、そのほかに南半球の3戦にパシフィック・カップ、アジアを転戦する後半3戦にはアジア・カップのタイトルもかけられる。
ヨコハマタイヤ勢ではシン選手と番場選手、コウ選手がAPRCに選手権登録。また後半のアジア・カップにはCUSCO Rally Teamから炭山裕矢選手が登録しており、こちらはランサー・エボリューション]で2010年以来となるアジア・カップ制覇を目指す。

さらに昨年創設されたジュニアカップはニュージーランド、オーストラリア、マレーシア、日本の4戦が対象。参加資格は28歳以下の若手ドライバーに限られ、番場選手、コウ選手、ヤング選手、二瓶選手の4人が、ともにサトリアネオで登録を行っている。
 
2012年のAPRC、開幕戦は3月30日から4月1日にかけてニュージーランドのワンガレイ近郊で開催された。ハイスピードなグラベル(未舗装路)ラリーのニュージーランド、ところによっては路面にタイヤのブラックマークがつくほどに締まったステージが待ち受ける。
ここで好調なラリーウィーク入りを見せたのは番場選手。シェイクダウンでジュニアカップ勢のトップタイムをマーク、ディフェンディングチャンピオンの貫祿を見せる。また、S2000を除くサトリア勢のトップタイムはシン選手が叩き出し、こちらもベテランの強みを遺憾なく発揮。

31日に競技はSS(スペシャルステージ)で本格的にスタート、残念ながら二瓶選手はSS1でコースオフからリタイアを喫してしまったが、序盤から番場選手がリードを築く一方でヤング選手が追う展開に。ヤング選手は前走のコウ選手にステージ内で追いつく韋駄天ぶりを見せたが、サービスでの遅着もあって番場選手との差は初日を終えて52.9秒となる。
そんな若い二人の接戦を尻目に、ベテランのシン選手は番場選手に1分17秒3先行して速さを見せ、2日目にそれぞれがどんな戦いを見せてくれるか期待が高まる展開に。

そして1日のDay2、全16SSのうち残るは8本、123.32kmで勝負は決する。
序盤のSS9、SS10では番場選手がヤング選手のみならず、シン選手をも上回るタイムで一気にチャージ、SS10を終えてシン選手との差を1分06秒9に詰めてくる。SS11ではシン選手が巻き返したが、番場選手も0.6秒という僅差であがって、両者の差は1分07秒5。

初日を終えて足回りに抱えていたトラブルを修復、調子を取り戻した番場選手がどこまでシン選手に詰め寄るかが注目を集める展開となった。しかし、SS12のスタートから約2kmの地点で複雑にウネリのついた道に足をすくわれ、番場選手は無念のリタイアを喫してしまう。
この後シン選手は着実な走りでマシンを運び、2輪駆動部門のトップでフィニッシュ。ジュニアカップはヤング選手とコウ選手が完走を果たしてポディウムを飾る結果となった。

【>> 第1戦 結果表】
Driver's Voice =Akira Bamba=
開幕戦は、シン選手の存在をとても意識していました。追いつけそうで追いつけない。自分の走り方もいろいろと試してみたのですが、そんな中でコーナーへの進入速度が速すぎたこともあってSS12でマシンを土手にヒットさせてリタイアしてしまいました。

ぶつけたことで自分自身落ち込んだことは確かですが、ちょっとは自信がついた部分もありました。去年のシン選手とのタイム差より、自分がステップアップしていることを実感できたんです。「これがサトリアの限界領域の走りだ!」と思える走らせ方も出来て、もっともこれはとても集中力が必要で大変なのですが、サトリアの実力を改めて感じられました。ただ、それを繰り返しやろうとするのは簡単ではなかったので、自分のスキルアップがさらに必要であることも実感しました。

ADVAN A053は、ニュージーランドでは高速からのハードブレーキングなどで、高い剛性が武器になりました。タイヤがヨレることなく、進入の姿勢がとても安定するんです。コーナーリングを通じてクルマは余計な動きをしなくなるので、とても走りやすかったですね。
 
4月下旬に開催された第2戦のニューカレドニアは、ジュニアカップの対象外となっていたこともあって「PROTON R3 CUSCO Rally Team」は参戦をスキップ。5月25日から27日にかけて開催された、第3戦・オーストラリアが今シーズン2戦目の出場となった。

25日にシェイクダウンが行われたが、タイミングを同じくして空からはポツリポツリと雨が落ちてきてしまう。そのまま夜のセレモニアルスタートも雨模様となってしまい、ステージはスリッピーなコンディションに変化していった。

初日、ラリーは序盤から波乱の展開となる。SS2でシン選手がエンジントラブルに見舞われ、ステージこそ走りきったものの戦線離脱を余儀なくされてしまった。一方、6.00kmとショートのSS1ではやや奮わなかったヤング選手が、27.12kmのSS2で一気にジャンプアップを果たしてジュニアカップ/2輪駆動部門のトップに躍り出る。
20.5秒差でジュニアカップの2番手となった番場選手は、SS3とSS4でヤング選手に先行して差を3.3秒にまで詰める。しかしSS5とSS6はヤング選手が番場選手を上回るタイムであがり、SS7からSS9は再び番場選手がヤング選手との差を縮めるという、一進一退の壮絶な攻防戦が展開された。

SS8でヤング選手を逆転、ジュニアカップのトップに立った番場選手。2日目の皮切りとなるSS12は15.00km、ここで驚異的なプッシュを見せたのがヤング選手。10分30秒0のタイムは、番場選手の10分56秒2を26秒2も上回り、一気に逆転してトップの座を奪う。
その後もジュニアカップ勢のステージベストを連取したヤング選手が、番場選手の追撃を振り切って堂々の優勝を飾った。
また、日本からランサー・エボリューション]で参戦した増村淳選手も、堂々の5位完走を果たしてフィニッシュでは大きな声援を集めていた。

【>> 第3戦 結果表】
Driver's Voice =Akira Bamba=
今年のオーストラリアは道が荒れると予想されていたので、クルマに対する負担も大きくなると思われました。ですから初日はペースを崩さないようにして、クルマを壊さないようにリスクを犯さない走りを実践しました。ヤング選手とのタイム差を見ながら、シン選手の存在は意識しないようにして。午後のループでプッシュして逆転して、ちょっとマージンが出来たところでマシンを労る走りに切り換えるような感じでしたね。

2日目は、ステアリング系に負担がかかってまっすぐ走らない状態になったのですが、そこでタイム差が開いて厳しい展開になりましたね。チームからは「2位でもいいから絶対完走!」と言われて、先行するヤング選手にも何が起きるのか分かりませんから、しっかりひとつずつのステージを走りきることを考えて戦いました。

しかし、なかなかヤング選手との差も詰まらなかったので、午後のループでひとつくらいはプレッシャーを感じさせるような走りをしようとペースを上げましたが、向こうも同じようなタイムで走っていましたね。
今回は他の選手を基準にして自分のタイムを考えていた部分があって、これは敗因のひとつだと思っています。いろいろと学ぶことの多いオーストラリアでした。
 
APRCでも存在感を見せるプロトン・サトリアネオ。昨年まではサイズの関係から、グラベル用タイヤは全日本ラリー選手権でもお馴染みのADVAN A035を使用していた。その優れたポテンシャルは番場選手のプロダクションカップ獲得を支えたことでも証明されているが、2012年は新たにADVAN A053を投入した。

2011年のIRC(インターコンチネンタル・ラリー・チャレンジ)で、新井敏弘選手のプロダクションカップ獲得を足元から支えたADVAN A053。横浜ゴム・MST開発部の技術開発2グループで国内外のラリータイヤを担当するエンジニアの八重樫剛は、次のようにAPRCの前半戦を振り返った。


「今年のAPRCには、プロトン・サトリアネオに適合する150/625R15サイズのADVAN A053をデビューさせました。
シリーズ前半戦となるパシフィックラウンドでは各選手がADVAN A053でどのような戦いを演じてくれるのか注目していましたが、結果的には昨年までのADVAN A035と比べて確実にタイムアップをしていますし、トラクションやコントロール性能についても高いレベルにあるということを、各ドライバーから評価していただきました。

コンパウンドはソフトをニュージーランドとオーストラリアでともに使いましたが、摩耗などの問題は全くありませんでした。コースのレイアウトなども含めて、どちらかといえばオーストラリアがベストマッチしていたように思います。

そのオーストラリアは若手のヤング選手がジュニアカップを制しましたが、実はニュージーランドでヤング選手はADVAN A035を装着してラリーをスタートしていたんです。その後、終盤でADVAN A053を装着して走りきったのですが、走り終えてから『どちらを選ぶ?』と聞いてみたら、『ADVAN A053です!』と即答されました。
そしてオーストラリアではスタートからADVAN A053を装着したヤング選手ですが、週末を通じて好タイムを連発して番場選手との見応えある攻防戦を繰りひろげてくれましたね。

この週末からAPRCはアジアに舞台を移して後半戦に入りますが、例えば今週末に行われるマレーシアのように、ドライとウエットで大きくコンディションが変わるようなケースではADVAN A053が強さを見せると思います。
ADVAN 035はハンドカットを入れることが無かったのですが、ADVAN A053では状況に応じてカットを入れて細かく対応していくことが出来ますから、選手は大変でしょうがコンディションが悪化した時の走りにも注目してほしいですね」
[UPDATE : 11.Jul.2012]
           
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