多くの人から期待を集め、それにしっかりと応えた番場選手。全日本選手権でも若手が着実に力をつけてきているが、ステップアップに必要なこととは何なのだろうか。
「繰り返しになっちゃいますが、走りや戦っている自分のことを見ていてくれる人は、決してゼロではないということを理解する必要があると思います。主力チームの人、メディアの人、オフィシャルの人。
そういう人たちの存在を意識して、走り方にメリハリをつけて得意なステージでは圧倒的な速さを見せる、というのも良いように思います。
もちろん『ラリーは完走しなければならない』というのは解っていますが、まずは苦手なところで無理をするのではなくてそこはじっくり腰を据えて解決策を見いだして行って、得意なところをどんどん伸ばす方がいいように思うんですね。その方が自信にもつながるし、もしかしから苦手な部分の解決策が見つかるヒントになるかもしれない。
それに、光る走りは必ず誰かの目に留まって、いろいろな人と話す機会も増えますよね。『この前のラリー、あのステージで彼の走りが良かったね』なんて言ってもらえたら、ドライバーとしては御の字じゃないですか」
最後に、兄・琢選手と同じ質問で、弟・彬選手の2011年シーズンについての項目を締めくくることにしよう。その質問とは、2011年のシーズンを一言で表現すると、どのような言葉になるのか、である。
「一言、ではなくて二言になっちゃいますが、『自信』であり『突破』ですね。
自分の考え方などが少なくとも今の環境においては間違っていなかったことを知れた一年でした。間違っていたなら、決してカラムさんに勝てるステージなんかあるわけがなかったと思うんです。なんとなく勝手に『これくらいしか、自分は出来ないんだ』と思い込んでいた壁を突き破ることが出来て、実はまだ上のレベルで走れるんだということに気づかされた一年でした。
2012年はコンスタントにハイペースを維持していけるようにしたいですね。これまでは『プッシュしたときに、自分の限界はどのくらいなのだろう』というのを、積極的に試したことが無いんです。Rally
Hokkaidoではいくつかのステージでやってみましたが、ひとつのラリーを通じてプッシュしたというのは経験がありません。
どうしても苦手なステージがひとつあると、そこで大きくリズムを狂わされてしまうんです。こう言うと精神的な要素だけなのかと思われがちですが、クルマがしっかり出来ていて初めて精神的な要素での勝負が出来るんです。仮にクルマがダメだったら、それを精神面だけでカバーするなんていうのは、相当に難しい話しだと思いませんか?
僕はいま、本当にクルマに助けられている。だから苦手だと思い込んでいたところでもどんどん攻めて行けるので、精神的にかなり楽をさせてもらっています。だからこそ、逆に一歩先の領域に行きたいですね」