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3回目の日本上陸となる「FIA WTCC Race of JAPAN」の開催も、いよいよ2週間後に迫ってきた。
シーズンも残すところ岡山国際サーキットで開催される日本ラウンドと、最終戦となるマカオラウンドを残すのみ。そんな中でタイトル争いは白熱、ドライバーズタイトル、マニュファクチャラーズタイトル、そしてYOKOHAMAインディペンデントトロフィーといった栄冠を目指して岡山を舞台に激戦が繰り広げられる。
WTCC、その歩みと魅力
 
世界で行われているモータースポーツを統括しているのがFIA(国際自動車連盟)。このFIAが世界選手権のタイトルをかけている最高峰のカテゴリーは4つあり、世界中の多くのモータースポーツファンから注目を集めている。

レース専用のフォーミュラ・マシンの最高峰が、F1の呼び名で広く知られる「FIA フォーミュラ1 世界選手権」。大自然をフィールドに競われるラリーの最高峰は「FIA 世界ラリー選手権」で、こちらはWRCと呼ばれている。今年、WRCは9月に北海道で、F1は10月に鈴鹿サーキットで開催され、観戦されたという方も多いのではないだろうか。

一方で、サーキットを舞台とする市販車をベースに改造されたレーシングマシンによる世界選手権は2つ存在する。
ひとつは2010年から新たに世界選手権に加わった「FIA GT1 世界選手権」。二人のドライバーが交代でフィニッシュを目指すスタイルのレースで、耐久レースの最高峰と言える。

そして2005年から開催されているのがWTCC、「FIA 世界ツーリングカー選手権」である。こちらは1回の決勝レースが距離で約50km、時間にしておよそ30分。一人のドライバーがスタートからフィニッシュまでを走り、決勝中のピットインはアクシデントやトラブルが発生しない限りは行われないスプリントレース。
そう、WTCCとはスプリントレースの世界最高峰カテゴリーなのである。
記念すべき2005年の発足緒戦はイタリアのモンツァ・サーキットで4月10日に開催された。この時は第1レースをBMW320iのダーク・ミュラー選手、第2レースはアルファ・ロメオ156のジェームス・トンプソン選手が制している。


2006年、WTCCのタイヤはADVANがワンメイクサプライヤーの指定を受けて現在まで供給を続けている。
前年同様にモンツァでの開幕戦、第1レースはBMW320siを駆るアンディ・プリオール選手、第2レースは当時アルファ・ロメオ156で参戦していたアウグスト・ファルファス選手が優勝。

この戦いからADVANとWTCCの歩みが始まり、2010年のポルトガル戦ではADVANレーシングタイヤが記念すべき供給100戦目を数えるに至った。その100戦目となった第2レースは、セアト・レオンTDIのガブリエレ・タルクィーニ選手が優勝を飾っている。


2008年に岡山国際サーキットで日本初上陸を果たしたWTCCは、ファンのみならず、日本のモータースポーツ関係者にも少なからず衝撃を与えた。
誰からとも無く口にされるようになった形容詞は「サーキットの格闘技」。

スタート直後からチェッカードフラッグまで、息をつく間もない手に汗握る超接近戦が随所で展開されるWTCC。多少の接触も当たり前のドッグファイトが、世界を代表するトップドライバーの手で演じられる光景を目の当たりにした人々は、レースが持つ本質的な魅力を改めて感じたことに違いない。
ファンの間でもその戦いぶりはブログなどを通じて瞬く間に語られ、日本でもWTCCに注目するファンは拡大の一途をたどっている。

3年連続での日本上陸となるWTCC。今年もまた岡山に、熱く・激しいバトルがやって来る。
 
WTCCを戦うマシンをチェック!
 
WTCCは1レースごとに成績に応じて加点されるポイントの累計で決するタイトルを競うシリーズ。
総合順位に応じたポイントではドライバーズチャンピオンシップが競われており、"生粋のツーリングカー使い"や"元F1パイロット"など、幅広い層のトップドライバーたちがしのぎを削りあっている。

参加車両については開幕前にマニュファクチャラー登録を行ったチームについて、マニュファクチャラータイトルのポイントが与えられている。2010年はBMW勢がBMW Team RBMの2台とシボレー勢のChevroletチームの3台が登録を行った。
昨年のチャンピオンに輝いたセアトはマニュファクチャラー登録を行わなかったのだが、FIAがディーゼルターボエンジン搭載車についてはインディペンデントロフィーの対象外とする(=マニュファクチャラーと同等に扱う)と決定したため、先の2チームとともにマニュファクチャラータイトルを「セアト・カスタマーズ・テクノロジー」として争うことになった。

そして、マニュファクチャラー登録対象以外のチームには、YOKOHAMAインディペンデントトロフィーのタイトルがかけられている。大まかに言えばマニュファクチャラーが俗に言う"ワークス"、インディペンデントは"プライベーター"であると捉えれば分かりやすいだろう。
インディペンデントトロフィーは横浜ゴムがスポンサーとなっており、その賞金は昨シーズンよりも大幅に増やされおり、戦う側にとってはさらに魅力がアップしている。


戦いを演じるマシンは、2010年の岡山には4メーカーの5車種が登場する予定。
気になるラインナップは次の通りである。
 
 
シボレー・クルーズLT =Chevrolet CRUZE LT=
目下、悲願の初マニュファクチャラータイトル獲得に向けて、トップの座を守っているのがシボレーのクルーズLT。
アメリカのGM(ゼネラル・モーターズ)が展開するシボレーブランドは、コルベットやカマロに象徴されるように若々しくスポーティな車をリリースしている。
クルーズは2008年秋に韓国仕様(現地名・ラセッティプレミア)から市販を開始、翌2009年の開幕戦からWTCCにそれまでのラセッティに換えて3台が投入された。GMにとっては世界戦略車に位置づけられており、アメリカをはじめアジア各国やロシア、豪州でも生産されるワールドカー。
WTCCマシンとしては他車よりも大柄なボディが特徴。ホイルベースも長く、低速テクニカルコーナーよりはハイスピードコーナーを得意とするタイプだ。
既に2011年からの規則変更にあわせた排気量1600ccのターボエンジンもテストが重ねられており、熟成が進んでいる。
エンジン : 直列4気筒ガソリン
最高出力 : 280bhp/8500rpm
最大トルク : 260Nm/5800rpm
ミッション : 6速シーケンシャル
全長×全幅 : 4633mm×1852mm
駆動方式 : FF(前輪駆動)
 
 
セアト・レオン 2.0 TDI =SEAT Leon 2.0 TDI=
スペインの自動車メーカーであるセアトは、フォルクスワーゲン(VW)グループの一員となった1980年代半ばから積極的な輸出攻勢を展開、今では確固たる地位を築いたメーカーのひとつになった。
WTCCには発足緒戦から参戦、当初はトレド・クプラを用いていた。しかし同年5月にVWゴルフとコンポーネンツを一部共有するレオンがデビューすると、早々にレース車を仕立てて8月のドイツ戦から実戦に投入。徐々に代替を進めた結果、黄色ベースの車体色から“イエロー・トレイン”と称されたマニュファクチャラー艦隊を構築した。
そして2007年のスウェーデン(第13/14戦)で、ディーゼルターボエンジンを搭載した「TDI」がデビュー。市販車ではこのクラスでもディーゼルが主流のヨーロッパだが、モータースポーツ、しかも世界選手権への登場は大いに注目を集めた。その実力の高さは、参戦3レース目となったドイツでの第15戦で初優勝を飾って証明された。
2008年から二連覇中、太いトルクでグイグイ加速するディーゼルならではの速さが特徴のマシンである。
エンジン : 直列4気筒ディーゼルターボ
最高出力 : 280bhp/4000rpm
最大トルク : 450Nm/2500rpm
ミッション : 6速シーケンシャル
全長×全幅 : 4330mm×1849mm
駆動方式 : FF(前輪駆動)
 
 
ビーエムダブリュー 320si =BMW 320si=
2005年のWTCC発足から、3シーズン連続でタイトルを独占する強さを見せたBMW。マニュファクチャラー勢のみならず、多くのインディペンデントチームがユーザーとなっている点は、さすがツーリングカーの雄とも言える存在感の高さだ。
WTCC発足から3シリーズでの参戦を続けているが、2005年シーズンは4代目モデルにあたるE46系を用いていた。翌2006年からE90系にスイッチして、途中のマイナーチェンジを経て現在に至っている。
BMWはWTCCで唯一のFR(後輪駆動)という点が最大の特徴。素性の良さは多くのインディペンデントユーザーがいることで証明されていると言えるだろう。
FRのメリットはいろいろあるが、レースの駆け引きで最もみどころとなるのが、スタンディングスタート。スタートでトラクションを後輪にかけてのロケットスタートで、一気に1コーナーを制する戦いぶりは必見だ。
エンジン : 直列4気筒ガソリン
最高出力 : 280bhp/8300rpm
最大トルク : 245Nm/7250rpm
ミッション : 5速Hパターン
全長×全幅 : 4539mm×1845mm
駆動方式 : FR(後輪駆動)
 
 
シボレー・ラセッティ =Chevrolet Lacetti=
WTCCの発足から現在までシボレーは3台のマニュファクチャラー体制で参戦を続けているが、一方でインディペンデントクラスのユーザーはBMWやセアトよりも少なかった。
しかし2010年、イギリスのバンブー・レーシングがインディペンデント登録でシリーズを通じての参戦を開始した。
そして用いているマシンがラセッティである。マニュファクチャラー勢もクルーズ登場以前は使っていた車種で、一般市販車においてもクルーズの先代に位置づけられるモデル。
GM(ゼネラル・モーターズ)傘下の韓国・大宇自動車で製造していた世界戦略車で、日本市場にも「オプトラ」というネーミングでセダンに加えステーションワゴンボディも導入されていた時期がある。
4ドアセダンのボディはBMW3シリーズと全長が近いが、幅はラセッティの方が狭い。ホイルベースはラセッティの方がBMWよりも短いが、FFゆえにコーナーリング性能は幾分劣る。そこを足回りのセッティングで矯正しているが、ややトリッキーな一面もあるようだ。
エンジン : 直列4気筒ガソリン
最高出力 : 270bhp/8500rpm
最大トルク : 260Nm/5800rpm
ミッション : 6速シーケンシャル
全長×全幅 : 4500mm×1809mm
駆動方式 : FF(前輪駆動)
 
 
セアト・レオン 2.0 TFSI =SEAT Leon 2.0 TFSI=
前述の通り、WTCCが発足した2005年の後半からレースデビューしたセアト・レオン。当初はマニュファクチャラー勢もインディペンデント勢もガソリンエンジンを搭載したモデルを用いていたが、今は多くがディーゼルエンジンのモデルに置き換えられており、ガソリンエンジンのモデルは一部のインディペンデント勢に残るのみとなっている。
このエンジンはフォルクスワーゲンゴルフやアウディA3でも使われている燃料直接噴射式の4気筒で、世界各地で定評のあるもの。
フォルクスワーゲングループの中では、比較的軽快でスポーティなキャラクターを有するセアト、同時にコストパフォーマンスも高いことで知られているため、ヨーロッパ全域でポピュラーなモデルとして親しまれている。
またスポーツ性能を磨き上げた仕様もラインナップに加えており、WTCCはセールスプロモーションの面でもこれまでに大きな貢献をしていていることは間違いない。
エンジン : 直列4気筒ガソリン
最高出力 : 260bhp/8500rpm
最大トルク : 250Nm/7000rpm
ミッション : 6速シーケンシャル
全長×全幅 : 4330mm×1849mm
駆動方式 : FF(前輪駆動)
 
 
ボルボ C30 =VOLVO C30=
スウェーデンの自動車メーカーで、日本では特にステーションワゴンの人気が高いボルボ。安全性の高さや質実剛健な中に北欧流の“人に優しいテイスト”を加味したモデルはファンも多いが、モータースポーツの分野でも活躍を見せてきたメーカーだ。“空飛ぶレンガ”と呼ばれた240ターボや、ワゴンボディがサーキットでは類を見ない存在感だった850エステートの活躍をご記憶の方も多いだろう。
そんなボルボはWTCCにもこれまで、度々スポット参戦を重ねてきている。2007年にはセダンボディのS60、2008年からはハッチバックボディのC30をベースにマシンを仕立てているが、S60で初参戦した時点からバイオフューエルを実戦で使っていたことが大きなトピックだ。今では環境保護への対応として全てのマシンがバイオフューエルを用いているWTCCだが、その先駆けがボルボだったのだ。
ボルボは2012年からの正式参戦を予定しており、2011年度はその下準備としてポールスターレーシングが1台のC30でエントリーすることを既に表明している。
エンジン : 直列5気筒ガソリン
最高出力 : 295bhp/8750rpm
最大トルク : 240Nm/7300rpm
ミッション : 6速シーケンシャル
全長×全幅 : 4268mm×1855mm
駆動方式 : FF(前輪駆動)
2010 FIA WTCC Race of JAPAN 参戦日本人ドライバー記者発表会   2010 WTCCプロモーションギャル
 
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