サーキットにおけるADVANの拠点となるのが、パドックの一角に設けられたタイヤサービス。
ここはユーザーが使うタイヤの組み換え作業などが行われるのみならず、開発エンジニアにとってもレース中の活動拠点となっている。
ニュルブルクリンク24時間レースを担当するエンジニアは二人の日本人。モータースポーツ部・Wプロジェクトのリーダーを務める渡辺晋(写真・右)と、同プロジェクトの小林勇一(写真・左)である。
まず、二人は今回供給するタイヤの本数について次のように説明する。
「ADVANを装着しているマシンは全体で60台ほどですが、ドライタイヤとレインタイヤを合わせてトレーラー6台分なので、ざっと2,200本ぐらいです」
ということは、550セット。60台にくまなく渡すとして1台あたり9セットが使用可能というわけだ。これを日本人技術者3名、英国人技術者1名、さらに他スタッフ計10名ほどでサポートする。
WTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)など他のレース用のタイヤと違うタイヤなのだろうか。
「今回持ちこんでいるのは、基本的には市販している、つまり通常に売っているレース用タイヤということですね。中には先行開発をしているタイヤもあって、こちらは将来のレギュラータイヤになるためのデータ取りが重要な仕事となります。今回はブラックファルコンの2台のアウディがその役目を担ってくれます」
タイヤコンパウンドの違いなどは?
「スーパーソフト、ソフト、ミディアム、ハードと4種類あります。1台の車両のスティントの長さによってコンパウンドを選ぶようにしています。ニュルブルクリンクはコースが三次元的なので縦方向に荷重がかかりやすい点が、他のコースと違うところです。
それにストレートも長くてタイヤが冷えちゃうし温まりにくい。特に雨なんか降ると本当にタイヤは温まらない。でも晴れてしまうと早めにボロボロになってしまう。技術屋泣かせのコースですね。大変です」
でもそんなコースだからニュルはやりがいがあるのでは?
「他のタイヤメーカーもそう思っているんでしょうね。いろんなクルマが走っているし、タイムだけではタイヤの性能は評価しにくいし難しいと思います。しかしニュル24時間ほど車種が豊富なレースはありません。ニュルがタイヤ開発の場として重要だということが浸透してきたんでしょうね」