今年からADVANがコントロールタイヤになったSuper-FJ。
そのスタートは2007年からであるため歴史は浅いものの、コンセプトはFJ1600から受け継がれており、合わせれば30年をオーバー。ドライバーを育てる、フォーミュラの登竜門として、長い間存在し続けてきたレースなのだ。
ところで、FJ1600も今後しばらくレースが行われるが、昨年を限りにJAF地方選手権としての開催は終了。今年からSuper-FJにのみ、地方選手権のタイトルがかけられることとなった。
その最大の理由は、FJ1600の新品エンジンが存在せず、パーツ供給に支障を来し始めたからである。
■Super-FJの"心臓"とは?
1980年から始まったFJ1600は、現在まで一貫してスバルの水平対向4気筒OHVエンジン、EA71が用いられてきた。
この軽量コンパクトなユニットは、決してパワフルとは言い難いものの、整備性に優れ、何よりクセのない特性が最大の特徴である。したがって他に代わるエンジンはなかった、といっても過言ではない。
しかし、もともとスバルレオーネに積まれていた・・・、ということから明らかなとおり、生産中止から久しい。先々を見越して新品エンジンがストックされていたものの、もはや10年以上経過した今では、先に触れたような状況に。
一時は、同じスバルの新しい水平対向エンジンへの移行も検討されたが、現代のエンジンはEA71に比べれば遥かに大きく、FJ1600のシャシーには搭載できないことが判明。そこで新たなエンジンへの移行と同時に、安全性をより高め、なおかつ現代ふうのレイアウトに改めようということに。
こうして、Super-FJなる新カテゴリーが設立されたわけである。
■Super-FJとFJ1600、その違いと共通点
一見した印象は、FJ1600とSuper-FJは、「似て非なるもの」であるが、レースのコンセプト同様、共通点は極めて多い。
シャシーはパイプフレームで、タイヤは一緒。
エンジンはホンダの直列4気筒DOHC、L15Aが搭載されることになり、排気量こそ1500ccに縮小されたが、そこは最新のエンジンとあって、最大出力はEA71よりも20馬力アップの120馬力となっている。
安全性の向上は、まずサイドポンツーン内部にサイドバンパーの装着を義務づけに。同じくコクピット脇にはヘッドプロテクターを装着しなくてはならなくなった。
また、現代ふうなレイアウトの変更とは、最大のポイントが今までFJ1600では認められなかった空力不可物、つまりウィングを前後に装着できるようにしたことだ。
■入門フォーミュラ・カテゴリーとしての正常進化
ウィングは小ぶりであるものの、少なからずダウンフォースを発揮する。そして20馬力もパワーアップすれば、速さは飛躍的に増す・・・、と想像しがちだが、そこはレギュレーションによってバランスが保たれた。
コースアウトして、ランオフエリアの砂利がフロントウィングを痛めつければ、そのつど修復にコストがかかる。その対策として、最低地上高を50mmにまで高めた。
また、エンジンもパワーは上がったが、メンテナンスコストの抑制を目的に、あえてオイル潤滑にドライサンプ化せず、ウェットサンプのままに。必然的に重心は高まった。
バランスの悪化により、やや運動特性は劣るようになった一方で、フォーミュラとしては珍しくしっかり足が動くようにも。したがって、路面を擦るような車高だったFJ1600も、荷重移動が重要視されていたものだが、Super-FJではその点がより強調されるようになったのだ。
また少量であっても、ダウンフォースを体感でき、その機能を学習できることが新たなメリットにもなった。
■幅広い層のドライバーが、全国でしのぎを削りあう!
シリーズはサーキットごと設けられているのは、FJ1600もSuper-FJも一緒。規模を広範囲としないのは、移動による負担を最小限とするため。
ただし、すべてのレースが共通レギュレーション下で行われるため、遠征は自由。複数のシリーズにまたがって参戦する者も、また地元を離れて他のシリーズに胸を借りにいく者も少なからず存在する。
さらに年末には『日本一決定戦』も開催され、ここで秀でた走りを見せたドライバー1名には、翌年のF4(フォーミュラ4)フル参戦の機会が、スカラシップとして与えられる。ステップアップのチャンスが絞られてきた昨今においては、またとないビッグチャンスと言えまいか。
車両そのものの価格も、純レーシングカーとしては十分リーズナブルだが、近年はチームやメンテナンスガレージがマシンを所有し、ドライバーに年間単位で、かつ低コストでレンタルするシステムが一般的になってきた。
同じ頃からオーディションでドライバーを募ったり、レーシングスクールも設けられるようになって、FJ1600の創世記とは比較にならないほど、入門に際して敷居が低くなってもいる。
また、一時は若者だけを対象としていた傾向もあったが、趣味としてレースを楽しみたいシルバー層も取り込むようになって、年齢層は格段に広がった。
逆に言えば、カートレースの実績によって限定A級ライセンスを取得できれば、16歳からの参戦も可能だ。