―今年は、RE雨宮レーシングが「タイヤ無交換作戦」で成功をおさめました。
この作戦がGT300チームの間に広まり、各チーム次々とタイヤ無交換へのトライを始めました。
#2「アップル・K-one・紫電」や#19「ウェッズスポーツIS350」も、最終戦には無交換にトライ。
渡邊信太郎さん (Cars Tokai Dream28)
「あのとき、(19号車が)ピットが隣だったじゃないですか。ちょうどのタイミングで19号車が先に入ってきちゃうから、『やばいよ、うちはタイヤ無交換で稼ごうと思っているのに、ここでバッティングしちゃうよー』と思ってたら、坂東さんのところも無交換だったから、全然バッティングしないで、スムーズに出て行けたんですよね。『あれぇ!?』って」
―さまざまなチームが無交換という作戦の可能性を追求していきました。
その中で先陣を切ったRE雨宮レーシングは、最終戦では4本交換でレースを戦いました。
河野高男さん (RE雨宮レーシング)
「結果的にタイヤ交換をした方がいいから交換するんであって、最後のもてぎの短いレースでは、交換してもしなくてもラップペースが変わらないんであれば、当然(交換しない)ね。
ホントは無交換でいけるんであれば、オートポリスももてぎもウチは無交換で行くべきなんだろうけど、トータルで考えて、このレースはタイヤ交換した方がいいとか、しない方がいいとか、そうやって決めるんですよ」
石黒禎之 (横浜ゴム・モータースポーツ部 技術開発1グループ)
「毎ラップをプッシュプッシュで攻めて、(レース周回数の)真ん中で区切って、タイヤ交換して新品タイヤでまた速く走るっていう作戦の考え方もあるし、一方で、給油時間が長いからっていうのもありますが、最初から最後までタイムの落ちを少なく、常に同じようなコンスタントに走るという作戦もある。そういう作戦を取れるタイヤというのも、性能持続という意味ではいいタイヤなのではないかと思いますね」
―時にレースの勝敗をも握るピット作業ですが、マシンによって、給油時間やタイヤ交換のタイムはさまざまです。
河野高男さん (RE雨宮レーシング)
「(タイヤ交換に)13秒から15秒ぐらいでしょうかね。MOLAさんが一番早いと思いますけど、11〜12秒でしょ。で、だいたい給油が8秒ぐらいだから・・・、上げて下ろしてっていう作業も含めて22秒ぐらい。
速いよね〜。ウチなんか、給油だけだってMOLAさんより遅いよ」
石黒禎之 (横浜ゴム・モータースポーツ部 技術開発1グループ)
「第2戦の鈴鹿だって、MOLAは4本交換して給油して24秒、RE雨宮はタイヤ無交換でドライバー交代と給油で25秒でしたもんね。
燃費っていう差もあるし、タイヤ交換が遅いとかっていうことではないと思うんですけど」
大駅俊臣さん (TEAM NISHIZAWA MOLA)
「それら全部をひっくるめて車のキャラクターなんです。
ウチは逆にいえば300kmを、高いラップタイムを維持して走ることができない車であるのは事実ですよね。だけどそこは求めてないからね。そこを求めても相対的に上に行けないというのは分かっているので、それは求めない。
みんな、十何台かの1番上に行こうと思ってやってるだけで、一人で走ってて、自分のタイムを上げようなんて誰も考えてないでしょう。相対的に、最後に一番上にいたいっていうことを考えると、(タイヤを)変えなかったりとか、いろんなことをやってくるんですね。
ウチも何回も真似しようとしたけどね、どう考えても真似できないって分かったから、違う作戦で上に行こうといろいろやったんです」
福田洋介さん (JIM GAINER)
「持ち込みセットが安定しないと、タイヤのライフが全然見えないということもありますしね。それで、そういう(タイヤ無交換という)作戦が否めないっていうのもありますね」
石黒禎之 (横浜ゴム・モータースポーツ部 技術開発1グループ)
「今年は特に、2デー開催でしたからね」
―タイヤ無交換という作戦は、チームはもちろんタイヤにとっても厳しい作戦です。
ですが、だからこそやりがいがあるというのもまた事実。
石黒禎之 (横浜ゴム・モータースポーツ部 技術開発1グループ)
「基本的な考え方として、たかが300kmなんです。タイヤ摩耗、ライフだけを考えれば、どのクルマも300km無交換でいけるんです。
ただ、その300kmを走る間に、摩耗ではないタイヤの性能低下、タイヤ疲労というものが車によって違うので、摩耗ではないタイヤパフォーマンスが落ちてしまう。だからタイヤ交換をするチームがいるんですね。
コンパウンドが減ってしまうというわけではないので、ゴムだけを変えればいいという問題ではないですが、タイヤ全体として、そういった性能低下抑制を進め、いろいろな車がそういう作戦を選べるよう、これからもタイヤ開発を進めていくつもりです」