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HOME / MOTORSPORTS / ADVAN FAN / Vol.74 News Index
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YOKOHAMAとともにD1グランプリを戦うドライバーに、前回はマシンに関する自慢のポイントをお聞きした。
今回はD1ならではの"エンターテイメント性"にスポットを当てて、ドリフトの本質とも言える"角度"の源であるステアリングの切れ角についてや、これまでのドリフト歴におけるベストな走りについて語っていただいた。
D1-SPEC ENGINE

まずは前回に引き続き、熊久保信重選手からお話しを聞いてみよう。

「元々、ランサーエボリューションというクルマはFF(前輪駆動)ベースの4WDということもあってステアリングの切れ角は浅いんですよね。
そこでこのマシンでは、アルミ削り出しで作った一体物のナックルに前後とも交換しています。
さらにラック自体はインプレッサの物を使っています。これはギア比が良くて、とてもクイックになっています。
こうした創意工夫は名チューナーの小山さんによるものですが、絶対誰にも真似出来ないでしょう。」

まさに"アイディアの塊"いった感のある、熊久保選手のランサー・エボリューション]。
そんなマシンを駆り続けてきた熊久保選手だが、これまで演じてきた幾多の名勝負の中で、最も観客を喜ばせた自分自身がベストだと思える走りというのはどの戦いなのだろうか。

「そうですね〜、何年か前の富士で田中一弘選手とやった勝負ですね。
あの時は走っている自分たちが、とにかく気持ちよかった。自分たちが気持ちよいということは、当然それを見ていたお客さんにも喜んでもらえたと思っています。
やはりチームメイト同士での追走って、やっていて気持ちよいし、楽しいですよ。」

熊久保選手が挙げた戦いは2006年のD1最終戦。
シリーズも大詰め、チャンピオン争いを繰り広げていた熊久保選手は追走トーナメント1回戦で田中選手と対戦。
当時は両選手ともインプレッサを駆っていたが、オレンジ色をまとう2台のインプレッサは高速型コースの富士でも超接近戦を展開、互いに一歩も引かずサドンデスでも勝敗がつかずに再々戦へと突入。
最後は田中選手が勢い余ってスピンを喫して熊久保選手の勝利となったが、確かに熊久保選手が言うように見守ったファンからも大きな拍手が対戦後に両者に送られる盛り上がりを魅せた名勝負だった。
 
熊久保信重 選手
熊久保 信重 選手
ランサー・エボリューション] (CZ4A)
チームメイト同士の追走は気持ちよい!
 
 
 
 
続いて登場するのは、シルビアを駆る岡村和義選手。

「このシルビアにはGPスポーツのナックルを入れてステアリングの切れ角をアップさせています。現時点の切れ角は53度くらい。これは他のシルビアに比べても、かなり多い方だね。
やっぱりステアリングの切れ角が無いことには、今の時代はドリフトは出来ないね。むしろ競技に出るというのであれば、切れ角アップは必須でしょう。」

ライバルよりも大きな切れ角を武器にしている岡村選手。
ADM(ADVANドリフトミーティング)を経てD1参戦権を手にして、今やD1トップドリフターの一人に名を連ねる岡村選手だが、自分自身のベストな一戦はどの戦いを挙げるのだろうか。

「熊久保選手と鈴鹿で対戦して、あわや熊久保選手に勝っちゃうかっていうことがあった。あの時の走りは、ストリートリーガルで優勝した時よりも気持ちよかったね。
ストリートリーガルは、自分も対戦相手も互いに"いっぱい、いっぱい"で走っていて、そこには"技"っていうものが無い。
それがあの熊久保選手との一戦で、D1グランプリならではの"技"をかけてくるという洗礼を受けたような感じ。
ただがむしゃらに全開で走っているだけじゃなくて、アクセルを抜くところは思いっきり抜いてみたりとかね。」

熊久保選手との対戦を振り返る岡村選手。
2007年の第3戦、コースを逆走で使い逆バンクをメインの審査区間とする一戦はベスト8に進出した岡村選手が熊久保選手と対戦。
シリーズリーダーにつけていた熊久保選手に対して果敢に挑んだ岡村選手は、後追いの1本目で熊久保選手のお株を奪う見事な追走を披露して観客を大いに沸かせた。
2本目では先行に転じた熊久保選手が意地の逆転で勝負はイーブン、サドンデスへと持ち越される。岡村選手は粘りに粘って互角の勝負を繰り広げたが、最後は追走経験に勝る熊久保選手に振り切られて敗退。

しかしADVANサイトに掲載している当時のレポートにも記されているように、岡村選手の果敢な走りにはコースサイドを埋めたファンから惜しみない歓声と拍手が送られ、D1史上に残る名勝負となった。
  
岡村和義 選手
岡村 和義 選手
シルビア (S15)
D1の洗礼を受けた勝負が気持ちよかった!
 
 
 
 
ビッグセダン系マシンを駆る代表格、斉藤太吾選手。
まずはステアリング切れ角アップの手法について聞いてみよう。

「このマークIIはナックルを変えて、あとはワッシャーを使ってステアリングの切れ角をアップさせています。」

スタンダードではあるが、確実に効果を得られる方法が採られている。

さて、2004年からD1への参戦をスタートした斉藤選手であるが、これまでのドリフト歴においてお客さんを最も喜ばせたという"自慢の一戦"を続いて聞いてみた。

「実際には走っているときは戦いに集中していることもあって、観客席のお客さんは見えていません。
でも、勝ったり良い走りをすると、走り終わってからの反響が全然違いますよね。やっぱり好勝負をした後は、多くの方からコメントやメッセージをもらえます。
そういうことも考えて一戦を選ぶとしたら、やっぱりD1で初優勝したオートポリス戦ですね。」

2004年からD1への参戦を開始していた斉藤選手だが、大きく飛躍したのが2008年。
シリーズ序盤から快進撃を続け、第2戦・富士スピードウェイで初の決勝戦進出を果たす。この時は惜しくも2位に甘んじたものの、再び決勝戦へと勝ち進んだ第5戦・オートポリスで待望の初優勝。
地元・九州の野村謙選手を下しての初優勝ということもあって大いに話題を呼び、九州各地から詰めかけた大勢のファンも野村選手との"セダン対決"を制した斉藤選手の走りで大いに盛り上がった。
 
斉藤太吾 選手
斉藤太吾 選手
マークII (JZX100)
やはり初優勝した一戦がベストですね!
 
 
 
 
熊久保選手が駆っていたランサー・エボリューションIXを受け継いだ末永直登選手。

ドリフトの要とも言えるステアリング切れ角については、末永流の改良を施しつつ更なる進化も視野に入れているようだ。

「良くある切れ角アップ用のタイロッドを使いつつ、ナックルの方はワンオフで作ってもらったものを使っています。
昨年までのマシンに対して切れ角そのものを見直そうと思って、今装着しているナックルを試しているという感じですね。
切れ角は今の段階では43〜44度にあわせています。」

実績あるマシンを、更に末永流にアレンジして戦闘力を向上させているという。
では、末永選手にとってベストな一戦とはどの戦いなのだろう。

「最近の話になりますが、お台場で開催された今年のエキシビジョン2日目ですね。
ベスト16に勝ち進んで、川畑選手と対戦したのですが、その時の追走はここ最近では自分にとってベストな走りでした。
この大会では支配人(熊久保信重選手)も田中一弘選手も調子が悪くて、チームオレンジからは僕だけがベスト16に進出しました。僕自身に"頑張らなくては"というプレッシャーもありましたが、それよりも天気が悪い中で見に来てくれた大勢のお客さんを楽しませてあげたいという気持ちが強かったんです。
やっぱりチームオレンジといえば追走なんで、ピッタリくっついて行ってやろうと思っていました。もし何かあって負けちゃってもいいから、とにかくビタビタに寄せて行こう、と。
そうしたら川畑さんも正々堂々とした男らしい走りで、僕もそれにピッタリと合わせて走れたし、お客さんも喜んでくれていたみたいでしたし。
走り終わってUターンするところで、お客さんの反応を見たらとっても盛り上がっているのがわかりました。そうしたら余りにも嬉しくなっちゃって、まだ勝負が終わっていないのにクルマの中で嬉し泣きしちゃったんですよ。」

コースと観客の距離が近いお台場だからこそ、より選手と観客は一体感を強くする。
一般的には観客側が強い一体感から盛り上がるという側面がクローズアップされるが、もちろん選手の側もお客さんの反応をより感じ取ることが出来ることを、末永選手の涙が実証したということだろう。
 
末永直登 選手
末永直登 選手
ランサー・エボリューションIX (CT9A)
お台場では嬉しくて泣いちゃいました!
 
 
 
 
以前はFC3Sを駆り、昨年からはロータリーエンジンの有名ショップ"Rマジック"のFD3S(通称:ピンク6号)で参戦している、D1ドライバーきっての"RX-7使い"である高山健司選手。
切れ角アップについてお聞きすると、他の選手との比較も気になる様子で答えてくれた。

「切れ角の比較って、ちょっと気になりますね!(笑)。
僕のマシンには昔からRX-7のパーツを出しているシャトルワンさんのナックルを装着しています。FC3S時代から使わさせてもらっていますが、角度については今のところ充分に付けられていますね。
ライバル勢と比べても、乗り方でまだまだ詰めていける部分があるので、ステアリング切れ角については今の状態で全く問題ありませんね。」

FC3S時代から使い慣れたパーツということで、すっかり"身体の一部"のように乗りこなしている高山選手。
では、ロータリーエンジンのマシンで参戦を続けてきている高山選手にとって、これまでの生涯ベストな一戦を振り返ってもらった。

「お台場の2回目ですかね、FC3S時代に参戦した。
まだ予選を通過した経験も少なくて、確かこのお台場で追走に初めて進出したのですが、単走でスポンジバリアをリアに引っかけてちょっと飛ばすようなギリギリまで攻める走りが出来たんです。
走っている時はお客さんの様子は見えていないのですが、スタート前や走り終わって戻ってきたときの声援が凄かった。それにナイターの勝負だったので、独特な雰囲気も良かったですね。」

2005年、アメリカでシリーズの開幕を迎えたD1グランプリは、お台場特設会場で国内開幕戦が開催された。
会場へのアクセスが圧倒的に容易なロケーションであることも手伝って、5年目を迎えたシリーズは大盛況の開幕戦となり、会場は実に2万人を超えるファンで埋めつくされた。
そんな中で、多くのファンの期待に応える走りを魅せた高山選手。惜しくもベスト8進出は成らなかったものの、まさに記憶に残る一戦となった。
  
高山健司 選手
高山健司 選手
RX-7 (FD3S)
初のベスト16でギリギリまで攻めました!
 
 
 
 
今やD1界で孤高の存在となっているインプレッサを駆る田中一弘選手。
未だに高い戦闘力を誇るGDB型、迫力の追走を支えるポイントであるステアリング切れ角について、まずはお聞きしてみた。

「このインプレッサでは、タイロッドエンドがついている穴の位置を変えています。ノーマルの穴を埋めて新たに取り付け穴を開けているんですよ。
あとはリアのメンバーやナックルなんかは全てワンオフで作っています。他にはステアリングの切れ角には関係ない部分ですが、GT-Rのデフやドライブシャフトがついていたりと、凝った造りなんですよ。」

チームオレンジの一員として、特に熊久保選手と魅せる追走がこれまでに多くのファンを魅了してきた田中選手。
ベテラン・ドリフターとして百戦錬磨の田中選手だが、数多くの名勝負を演じてきた中で、自己ベストの一戦はどの戦いになるのだろうか。

「そうですね〜、いつ頃のことだったかな"土屋圭市杯"みたいな大会があったんですよ。
エビスサーキットの西コースだったんですけれど、高速の右コーナーからヘアピンみたいになっていて。そこで僕はサイドブレーキを引きながら高速の右コーナーめがけて走っていったんですけれど、たまたまサイドブレーキが効かなくなっちゃったんです。
ノーマルだったんで、使いすぎでフェードしたのが原因だったと思いますが、仕方ないので一回逆に惰性で振ってみてから一気にサイドをかけてみたら、それがかなりウケたみたいで(笑)。
土屋さんも絶賛してくれたんですが、その時が自分の中で良く覚えているベストな走りですかね(笑)。」

まさかのトラブルに襲われても、"引き出し"を数多く持っているドライバーは次の技を繰り出してくる。
"引き出し"という言葉はD1で良く使われるフレーズだが、やはり経験と挑戦を繰り返してきたベテラン・ドライバーは、この"引き出し"の数が多いことが強みだということだろう。
  
田中一弘 選手
田中一弘 選手
インプレッサ (GDB)
トラブルを克服して絶賛されました!
 
 
 
 
今年からWELDのマークIIでの参戦となり、快進撃を続けている山下広一選手。
圧倒的なハイパワーに注目が集まるマークIIだが、豪快なドリフトを生み出す素のひとつであるステアリングの切れ角アップは、どのようにされているのだろう。

「一般的にD1ドライバーの誰もがやっているようなナックルの変更が基本です。
切れ角としては50度くらい切れるようなもので、ほとんど真横を向くような感じですよね。切れ角はまだまだあってもいいくらい。拳1個分、2〜3センチでも、"あれば今のところはクリア出来たな"という場面がありますからね。
振り出しでクルマを真横に向けると、どうしても失速してしまいます。その時にはパワーも必要だし、切れ角ももちろん必要ですよね。」

長年、ドリフトの第一線で戦ってきている山下選手。"ベテラン"と称されるそのキャリアの中で、自分自身が満足しているベストな走りとは、どのようなものなのだろう。

「20年近くドリフトをやってきて、"これは完璧だ!"という走りは、本当に数えるくらいしかありません。理想のライン、理想の速さ、理想の角度で走れるなんていうことは滅多にないんですよ。
そんな中でやっぱり気持ちよいのは勝負に勝ったとき。
特に2002年のD1グランプリ、第5戦のエビスで勝ったときには、感極まって初めて涙を流しました。ドリフトで勝って泣くものなんだ、って自分自身でもビックリしてしまったんですけれどね(笑)。
エビスはお客さんも近くて、応援してくれていた人も多かったので、やはり一戦を挙げるとしたらこの大会になりますね。」

真剣勝負を戦っているからこそ、栄光を手中におさめたときには自然に溢れ出る涙。
それは若手やベテランといったキャリアとは関係なく、常にギリギリの戦いに挑んでいるドライバーであるからこその経験なのだろう。
  
山下広一 選手
山下広一 選手
マークII (JZX100)
優勝してドリフトでも泣けるんだと驚きました!
 
 
 
 
参戦を重ねるごとに熟成進化も進んでいく、ニューフェイス・BMWを駆る上野高広選手。
輸入車ベースということでパーツ面では苦労もありそうだが、ステアリング切れ角のアップはどのように行なわれているのだろうか。

「具体的に図ってはいなんですが、47〜48度くらいは切れていると思います。
ステアリングラック自体は30系セルシオのものを使っていますが、これはソアラで使っていたものと一緒です。
でも部品が同じだからフィーリングも同じかと言うと・・・、違和感大ありなんですよ、これが(笑)。
もともとセルシオのラックって、ステアリングを回す量は増えちゃうんです。そこをソアラはショートナックルにしてクイックさを出していたのですが、BMWはナックルを加工することがまず出来ません。
だからフィーリングとしては"セルシオっぽい"んですよ。いっぱい回さないと切れなくて"半回転くらい多くない?"みたいな感じですね(笑)。」

長年ソアラで参戦を続けてきた上野選手、ゆえにファンにもまだまだソアラを駆る姿がイメージとしては強く残っているだろう。
そんな上野選手に自己ベストの一戦を尋ねてみると、やはりソアラの集大成とも言える一戦を挙げてくれた。

「自分自身でベストな一戦・・・、う〜ん、難しい質問ですね。
そうですね、やっぱり記憶に新しいところで先日行なわれたお台場でのエキシビジョン戦でしょうか。
この時は勝ち負けに関係なく、お客さんを本当に喜ばせようという思いが強かったんです。自分自身もBMWに乗り換えてちょっとストレスも溜まっていた中で、エキシビジョン用のソアラで参戦ということで思いっきり走ることが出来ました。
お台場なんかはお客さんの熱気もクルマの中にいても分かるんですよ。
それに僕はスタートから"やる気マンマン"だったのですが、お客さんの動きや熱気、声援も伝わってきて、そこから貰えるパワーというのもありますね。
まだ圧倒的にソアラが格好よかったと言ってくれる人が多いのですが、実際にこうしてBMWを見るとその格好よさに惹かれる人も増えてきていますね。
乗り換えたことで僕が苦労していることも分かってくれているお客さんが多く、応援してくれる一言一言が僕の大きな励みになっています。」

ソアラ最後の一戦を自己ベストと評する走りで締めくくった上野選手。
これからは"BMWの上野"として、ますますの活躍が期待されるところだ。
 
上野高広 選手
上野高広 選手
BMW 3シリーズ・クーペ (E92)
お客さんから貰える"パワー"があります!
 
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