セダン系のマシンが増えてきているD1の世界だが、やはり王道といえばFR(後輪駆動)のスポーツクーペ。
その代表格にシルビアの名前を挙げて、異論を唱える人はいないだろう。
シルビアと言えばその全てを知り尽くしていると言えるドライバーが岡村和義選手。自ら主宰するヤシオファクトリーはシルビアの名チューナーとして今や世界的にもその名を知られる存在だ。
コース上でも一際目を惹く岡村選手のピンク色のシルビア、その実体に迫った。
「エンジンは、パワーとしては580psくらい出ているかな。シルビアの中ではトップクラスのスピードを出せるので、パワー的にはこれで充分満足しているよ。
ウチのエンジンは2.2リッター仕様にHKSのタービンを組み合わせて、低い回転域からしっかりパワーを出すセッティングにしている。それに加えてNOSを吹いているので、トータルで70psくらいは上乗せされているかな。
実際には馬力の数値がいくつ、というよりも、常用でいつも乗りやすいような仕様にしているんだ。唐突に上だけ馬力があるというわけではないので、クルマとしてはとても乗りやすいよ。」
シルビアはD1に限らず、一般のドリフト愛好家でも愛車としている人が未だに多い人気モデル。
"岡村流"のシルビアユーザーへのアドバイスをお聞きしてみた。
「コースによっては400ps程度で充分に楽しめるけれど、エビス南コースなんかでストリートリーガルを含めてD1レベルの走りをしようとするのであれば、どうしてもエンジンパワーとして450psは必要だね。
そのためには例えばピストンを鍛造に変えたり、強化スリーブを入れるなど、エンジンそのものを強化することが大切。
初期投資はかかってしまうけれど、後々ノーマルのままでエンジンを壊してしまうとお金がかかるから、最初にしっかり作っておいた方が安心して乗れるしね。」
もう一点、ヤシオファクトリーが得意とする"冷却"についてもお聞きした。
「D1マシンは特殊なのでラジエターのレイアウトを変えたり出来るけれど、車検適合が大前提になる街乗り車はそうはいかないからね。
でも、銅の三層ラジエターに変えて、水をスプレーで吹くようして冷却するというのがポピュラーだけど、こうしたこともパフォーマンス向上はもちろんだけど、エンジンを労る、壊さないという意味でも大切だね。」
シルビアを知り尽くしているからこそ、まずはベーシックなポイントを重要視している岡村選手。
長く、結果としてリーズナブルにシルビアを楽しむには、こうした基本的なポイントを抑えることが大切ということのようだ。