ヴィッツでN1クラスに参戦するようになって4年目のシーズンを迎えた朝山崇選手。1年目は年間4位、2年目に2位に躍進したが、3年目となった2006年は年間順位を3位に下げてしまっていた。
「自分の中で前年よりも年間成績が下がったのは初めてのことでした。それがとてもショックでしたね。だから2007年は今までのやり方をリセットして、チャンピオン獲得に向けて今まで以上に気合いが入っていました。」
並々ならぬ王座獲得への意欲を持っていた朝山選手。迎えたシーズンは前半戦でやや苦戦が続いたものの、第5戦・スナガワでの優勝から勢いをつけ、続く第6戦・IOXで連勝。第7戦・もてぎこそ準優勝に留まるも、第8戦・鈴鹿を制してタイトルに王手をかけ、臨んだ最終戦・おおむたも優勝を飾り、嬉しい初のシリーズチャンピオンを獲得した。
「2007年を振り返ると、前半戦では取りこぼしもありました。でも中盤から色々なものが噛み合ってきて、最終的にチャンピオン争いを演じることが出来ましたね。
今年は特にシーズンインの時点から"大会に対するアプローチ方法"を昨年までとは変えました。昨年は土曜日は速かったのに日曜の本番では伸び悩んだり、年間の総獲得ポイントは最多なのに有効ポイントで負けたりということがあったのです。速さで負けていないのであれば、その速さを日曜の決勝でいかに出し切るか。そこから逆算していって、土曜日や金曜日にやるべきことを導き出しました。」
決勝で走る2本の走行。ここでジムカーナドライバーたちは己が持つ全ての力を出し切って、コンマ1秒を削る走りを披露する。
そこに至るまでの"大会期間中の戦い方の組み立て"が、今季チャンピオン獲得の大きな要因であったと語る朝山選手。
そしてもう一つ、チャンピオン獲得の要因として朝山選手が挙げたのは、4月に発表されたADVAN
A050の存在である。
「ADVAN A050は縦方向にとてもトラクションがかかってくれるタイヤです。直線については加速、制動ともにA050は抜群の性能ですね。それに、少し舵を切っている時でも、縦方向を意識することが出来ます。
A048と比較すると、A050の方がシャープという印象。横方向のグリップを使っているときにアクセルを踏んでいくと、縦に引っ張って行ってくれる感じです。コーナーリングにおいてドライバーの考えで積極的に車を動かせるようになりました。
もちろんドライビングスタイルについても、徐々にA050の特性に合わせて変化してきています。」
ADVAN A050の高い戦闘力をこう評価した朝山選手は、さらに続ける。
「A050とA048を履き比べて感じたのは、正直なところA048はもう古いかな、と。基本性能の向いている方向などはA050の方が先進的ですし、実際にタイムもA050の方が絶対に出せるタイヤです。特性を更に掴んで車のセッティングを詰めていけば、A050の方が将来的な可能性は遥かに大きいですね。」
A050の大いなる可能性に期待を寄せる朝山選手。ではここで、朝山選手が参戦するN1クラスについて聞いてみよう。
「N1クラスはお金がかからないことが大きなメリットです。僕のようにサラリーマンという立場で本気でジムカーナをやろうと思ったら、N1クラスが最も現実的ですね。車体も安価だし、細かい消耗品の価格が安いことも年間で積み重なると大きな差になります。
何事も継続するためには、無理せずに出来るということがとても大切だと思います。」
もちろんN1クラスは経費がかからないことだけが特徴ではない。ドライバーとしてN1クラスに参戦することの意義について、朝山選手はこう語る。
「エンジンパワーの無いことが勉強になります。ミスをするとはっきりと影響が出るから、走りながら答え合わせをしていけるのです。
例えばコーナー入り口で失敗すると、出口で全く前に進まないとか。これを繰り返しているうちにロスの無い走りを身につけられるので、中級者が自らのテクニックを伸ばすためにはN1クラスがお勧めですね。」
来期はディフェンディングチャンピオンという"追われる立場"で臨む朝山選手。最後に来期への意気込みをお聞きした。
「ディフェンディングチャンピオンという立場について自分ではそんなに意識はしていません。パドックでの立ち居振る舞いなどで"チャンピオンらしく"というのはあるかもしれませんが、走ることについて言えば関係ありません。ただ自分の走りを続けていくだけですし、その結果が遅ければ負けてしまうだけです。」
奥様と一緒に全国各地で開催される大会を追う朝山選手、その夫婦円満ぶりはジムカーナ界でも有名なところ。
ジムカーナは家庭円満にもつながっていると語る朝山選手、ADVAN A050とともに獲得したチャンピオンドライバーの称号を背に、挑戦はまだまだ続く。