日本初開催を果たしたWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)は、岡山での興奮も冷めやらぬうちに最終戦のマカオをこの週末に迎える。
今年で第55回を数える伝統のマカオグランプリ。2005年の発足からWTCCが組み込まれているが、WTCCと共に開催される"世界一決定戦"の異名を持つF3レースもADVANが長年に渡ってワンメイクタイヤ指定を受けている。まさにこの週末、マカオはADVAN一色に染められることになるのだ。
さて、気になるタイトル争いを見ると、岡山でセアトが2レースを共に制したことで悲願のマニュファクチャラータイトルを手中におさめた。しかしドライバーズタイトル争いの決着はついておらず、マカオでの最終決戦で栄冠の行方が決まる。対象となるのはSEAT
Sportの二人、イヴァン・ミューラー選手とガブリエレ・タルクィーニ選手。今季ともに3勝ずつを飾っており、ミューラー選手とタルクィーニ選手の得点差は「14」。点差だけを見るとミューラー選手が圧倒的に有利なようだが、なにしろ舞台はアクシデントが多発することで知られるマカオ、勝負の行方を予想することは非常に難しい。
そこで参考までにマカオでの過去の戦績を見ると、なんと2005年のシリーズ発足からこれまでの3シーズンで、セアトは一勝もしていない。実はマカオは圧倒的にBMWが得意としており、昨年の第1レースでシボレーのアラン・メニュ選手、2005年の第1レースで当時はアルファロメオを駆っていたアウグスト・ファルファス選手が勝利した以外は、全てBMW勢が栄冠を奪っている。
中でもアンディ・プリオール選手は2006年と2007年にそれぞれ優勝を飾り、唯一マカオで2回表彰台の真ん中に立った経験の持ち主。
今季は4連破の夢はセアト勢に阻まれたものの、最終戦で意地を見せてくれるのか注目の存在だ。
また、この最終戦は実に13人が規則上の最大値となる70kgのサクセスバラストを搭載。累積ポイントなどと関係無く規則により搭載を余儀なくされる選手が6人いるが、その中に含まれる織戸学選手は少々厳しい戦いを強いられることになるかもしれない。しかしマカオを走った経験も豊富な織戸選手だけに、好成績への期待も高まるところだ。
一方で青木孝行選手はマカオでもサクセスバラストを課せられないため重量面では有利。山側のテクニカル、海側のハイスピード、両方で軽さを武器に挑める上に、モンツァと日本でのバトル経験も活かして上位進出の可能性も大いにあるだろう。
最終戦には日本でお馴染みのアンドレ・クート選手がN.テクノロジーのアコードでスポット参戦を果たす。岡山での決勝翌日にテストドライブもこなしており、こちらもちょっと気になる存在。
また地元のチームがトヨタアルテッツァとホンダシビックでの参戦を発表していたが、残念ながらこちらは車両に問題があったようで参加が見送られることになったようだ。
先にも記したように勝負の行方を予想するのは非常に難しいマカオであるが、あえて優勝候補の筆頭として最後にご紹介しておきたいのが、シボレーのアラン・メニュ選手。
昨年のマカオで優勝を飾っていることに加え、サクセスバラストが44kgと比較的軽めである点は有利なポイント。今季の成績を見るとランキングは中位に留まるものの、シボレー勢の中では最多の2勝を挙げている。
シボレーは現行のラセッティを今季限りで引退させ、来期は新型車・クルーズを投入することを既に発表した。ラセッティのラストランを飾るシボレー勢、中でもメニュ選手の走りにぜひ注目していただきたい。