前戦ヴァレンシアから短いインターバルで迎える第7戦&第8戦は、フランスのポーで開催される。
ポーでのWTCCは昨年初めて開催されたが、一般公道を閉鎖した市街地コースということで、とにかくエキサイティングな一戦となったことが記憶に新しい。
予選ではアウグスト・ファルファス選手のマシンが宙を舞う大クラッシュを喫してしまい、決勝でも第2レースではスタート直後の多重クラッシュによってセーフティカーが導入される波乱の展開となった。
コース幅が狭くパッシングポイントの少ない市街地コースということで、各選手は隙あらば前に出ようとしてギリギリの攻防戦を繰り広げる。その結果、時として大きなアクシデントを招きかねず、勝負の行方を占うのはとても難しい。
そこで注目したいのが決勝前日に行われる公式予選。パッシングポイントが少ないということは、少なくとも第1レースについて言えばポールポジションからスタート出来ると、2番手以下に対して圧倒的に有利な立場で戦えるからだ。
事実、昨年の結果を見ても第1レースはポールポジションからスタートしたシボレーのアラン・メニュ選手が、一度としてトップの座を譲ることなくウィニングチェッカーを受けている。
今年のシリーズに時間を戻すと、開幕戦から続いていたセアトのディーゼルターボ勢による表彰台独占劇は、前戦・ヴァレンシアで終止符が打たれた。
ヴァレンシアを制したのはアラン・メニュ選手とロブ・ハフ選手、ともにシボレーであった。
これでマニュファクチャラー登録しているチームでは、ヴァレンシアでデビューを飾ったホンダアコード勢と、BMW勢が優勝に未だ届いていないということになる。さすがにデビューしたばかりのアコードはマシンの熟成時間がもう少し必要かと思われるが、WTCC発足以来マニュファクチャラータイトルを独占してきたBMWが表彰台の中央に一度も立っていないというのは意外な結果である。
しかし、この週末行われるポーのレースではBMWの逆襲が始まる可能性が高い。
まずサクセスバラストを見ると、ヨルグ・ミューラー選手は35kgを搭載しているが、ディフェンディングチャンピオンのアンディ・プリオール選手は27kg、昨年のポーで第2レースを制したアウグスト・ファルファス選手に至っては僅か3kgの搭載に留まっている。
ランキングトップのガブリエレ・タルクィーニには61kgものバラストが課せられていることを考えれば、BMW勢は予選から軽さを活かした速さを見せてくれると期待出来る。
ただし要注意はセアトTDI勢で最も軽い12kgのバラスト搭載となっているティアゴ・モンテイロ選手。第4戦に続く今季2勝目のチャンスと目論んでいる可能性はとても高い。
さて、市街地コースは一般的にサーキットコースよりもタイヤに対するシビアリティが高いものだが、それはポーも例外ではない。
路面の質がサーキットと一般道では異なる上に、ガードレールの内側に残された歩道の縁石に乗り上げるようなアグレッシブな走りが容赦なくタイヤに襲いかかるからだ。
この点は
「WTCCタイヤ開発エンジニア・インタビュー」でも触れているが、このような過酷な環境においてもADVANのレーシングタイヤは昨年のポーで一切のトラブルを起こさなかった。
タイヤに対してドライバーやチームが高い信頼を寄せられるからこそ、市街地コースを舞台にした激しい戦いが繰り広げられるのである。
最後に日本のWTCCファンに嬉しいお知らせをお伝えしよう。
WTCCの醍醐味であるアグレッシブな戦いが繰り広げられるポーでの一戦は、CSスポーツチャンネル「GAORA」から生中継で放送される。
6月1日(日)、第1レース(第7戦)は18時45分から、第2レース(第8戦)は22時30分から、ピエール北川氏の実況・木下隆之氏の解説でオンエア。ぜひ、この秋には日本上陸を果たすWTCCの熱い戦いをテレビで味わっていただきたい。