WTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)は開幕から3週間のインターバルを経てメキシコに戦いの場を移す。
舞台となるのはプエブラ・サーキット、昨シーズンはカレンダーから外れていたため、2年ぶりにWTCCがやってくることになる。
ここプエブラの特徴は、その特異なロケーション。何が"特異"なのかといえば、他のラウンドに比べて圧倒的な高地での開催になるという点である。
その標高、実に約2,200m。例えるならウィンターリゾートで有名な苗場山の山頂でレースをするようなものである。
高地での開催ということで、各チームはマシンのセッティングに独特のノウハウを必要とする。空気密度が薄いためにエンジンはアンダーパワー傾向となってしまうため、このパワーロスを最小限に留めつつ、しっかりした耐久性をも両立させなければならないのだ。
二年前の戦いを振り返ると、残念ながら今年は不参戦となってしまったアルファロメオが強さを見せていた。クラッシュもあった波乱の展開ながらも、第1レースをステファノ・タバノ選手が、続く第2レースではアウグスト・ファルファス選手が優勝を飾り、アルファロメオ勢による完全制覇がなし遂げられたのである。
時計を2008年に戻すと、先の開幕戦では昨年終盤から速さに磨きがかかっているセアトのディーゼル勢が改めてその強さを見せつけた。しかし、ここプエブラはディーゼルターボエンジンにとって未経験の地。気圧低下の影響が避けられないシチュエーションで、果たしてその速さは不変なのか気になるところだ。
また、BMW勢ではアウグスト・ファルファス選手が最注目株。なんと言っても二年前には当時在籍していたNテクノロジーのアルファロメオで優勝を飾っているのだから。開幕戦では惜しくも優勝に一歩届かなかったものの、シーズンイン直前に結婚したリーリ夫人に今期初優勝をプレゼントしたいところだろう。
開幕戦では悪夢のようなレースウィークとなってしまたシボレー勢。実は二年前も決して相性がよいとは言えない結果にプエブラは終わってしまっているのだが、ここは奮起を期待したいところ。
そして日本のWTCCファンにとって最も気になるホンダアコードの動向についても情報が入ってきた。
昨年までアルファロメオを走らせていたNテクノロジーと、サーキットレースはもちろんラリーの世界でもホンダとの関係が深いJASモータースポーツがコラボレートした新体制でアコードを今シーズン参戦させることは既に発表されているが、当初はメキシコから参戦という情報もあったが、ヨーロッパラウンドの緒戦となるスペインからと正式にアナウンスされた。
アコードは2006年の第1レースで3位表彰台を獲得。2005年は2台のアコードが参戦、1台はフリー走行でクラッシュを喫したが、もう1台が3番手でチェッカーを受けている(結果はペナルティにより降格)ことからプエブラを得意としているだけに残念だ。チームはマシンをより完璧な状態に作り込んで参戦させる方針のようである。
最後にインディペンデントトロフィーについてご紹介しておこう。
WTCCはメーカーが登録する「マニュファクチャラー」と、それ以外の「インディペンデント」に分けられ、マニュファクチャラーチームはマニュファクチャラーポイントでもシリーズを競い合うことになる。
一方のインディペンデントには横浜ゴムの「YOKOHAMAインディペンデントトロフィー」が賭けられている。
開幕戦では第1/第2レースともにBMWを駆るオリビエ・ティエレマンス選手がトップの座を勝ち取って表彰台の一角を飾っている。