ツーリングカーと比べて、車体が軽く挙動がシビアなF3。常設サーキットと比べて、路面のμが低いストリート(公道)コース。この特徴的な要素がマカオに、世界中から実力ある若手選手が集って、激しいバトルを演じるマカオ・グランプリ。
ワンメイクタイヤは、どのカテゴリーでもイコールコンディション性が強く求められ、どんなドライバーが乗っても扱いやすく、タイムを出せることが良いタイヤの条件とされる。さらに、パンクなどに強い耐外傷性も必要となり、まるで「魔法のタイヤ」とも言えるポテンシャルが必要とされるのだ。
こうしたさまざまな条件をクリアし、多くの選手や主催者に認められてきたからこそ、30年以上にわたってヨコハマタイヤが継続供給しているマカオ・グランプリF3のワンメイクタイヤ。
優れたパフォーマンスを発揮するタイヤ、それを生み出すための秘訣はあるのだろうか。
「やはり一番の秘訣は、これまで長い間マカオ・グランプリにタイヤを供給し続けていることに尽きると思います。長い時間の間に少しずつ改良を加えてながら現在に至っています。
今年は、従来のピークグリップとレースタイムを維持しつつ、ウォームアップを改善することを目的に、新しいタイヤを投入します。
最初にもお話ししたように、マカオは比較的タイヤが温まりにくいのです。その上でレースにおいてはクラッシュも多く、セーフティカーが入ることも多いですよね。セーフティカーが入るとタイヤはスローペースの隊列走行で冷えてしまい、リ・スタートにおいては高いグリップが求められる。そこでウォームアップを改善することを、今年の改良ポイントとしました。
このように、小さなことでも確実に改良していく積み重ねこそが、開発においてはとても重要だと考えています」
いよいよレースウィークを迎えたマカオ・グランプリ。今年は60回目ということで2週にわたりレースは開催され、F3はその“トリ”をつとめるかたちで11月18日(日)に決勝が行われる。レースを直前に控えた今の心境を、最後の質問として小林に聞いてみた。
「まずは、タイヤのトラブルが無く、無事に今年のレースも終了してほしいですね。
60回目という節目のレースではありますが、その年その年のデータを集めて、今後も地道に改良を続けていき、100回目のマカオ・グランプリまでタイヤ供給を続けられればいいな、と思っています。
また、F3以外のカテゴリーにはタイヤフリーのものもありますので、こちらでももちろん優勝を狙っていきます」
ヨコハマタイヤにとっては、31年目のタイヤ供給となるマカオF3。今年も世界中の猛者たちがヨコハマタイヤで戦い、そしてその中からF1をはじめとしたさらなる上のステップへと羽ばたくドライバーが現れることも間違いないだろう。