86/BRZに限らず、最新の車には多くの電子制御が採用されている。公道ではこの上なく心強い安全デバイスであるが、モータースポーツに限って言えば電子制御を嫌う風潮も根強いのは事実だ。
そんな電子制御について、佐藤選手は次のように語る。
「自分はABS(アンチロック・ブレーキ・システム)を機構的に解除するようなことはしていません。だから競技中でも、常にABSは必要に応じて介入してくる状態です。
これは自分自身がABSを受け入れたというか、それに慣れてしまおうと思ったからなんです。だから、誰よりもコーナーへのアプローチでストップランプが点くのは早いと思いますよ。ABSが効き始める直前のところでブレーキングしていますから。
トラクションコントロールについても、スタートから1コーナーくらいまで警告灯が点きっぱなしで、エンジン回転が思うように上がってくれないこともあります。でも、フィニッシュしてみるとタイム的にはそんなに落ちていない。だったら、これでいいんじゃないかなと思うわけです。
最新の技術に対してあれこれと抵抗するよりも、受け入れてしまった方が早いというのが、今の正直な思いです」
86という車を誰よりも早く受け入れた佐藤選手。そのスタイルは開幕戦でのデビューウィンで、正しかったことが実証されたと言えるだろう。
注目のデビュー戦はプレッシャーもあっただろうが、優勝を飾ったことで更に速さへの期待が高まる結果となった。
「デビューウィンしたことで、プレッシャーは次からますます大きくなりそうですね(笑)
86という車にはまだまだ伸びしろがあると実感していますし、例えばテクニックステージタカタでフルターンが無いハイスピードレイアウトだったら、N1クラスくらいのタイムが出るのではないかと期待もしています。それに、車のみならず自分自身にも伸びしろがあると思っています。開幕戦の2ヒート目、前半でロスしたのは自分が路面を読みきれなかったからなのであって、だったら次からはしっかり路面を読むようにすればいい。
第2戦からは強力なライバルも戦列に加わってきますが、開幕戦で掴んだ手応えをバネに、さらに高い領域の完成度を目指していきたいと思っています」