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ジムカーナ最高峰の舞台で発揮されたパフォーマンス
[PN1 Class] 鵜飼洋一 選手
[PN3 Class] 森嶋昭時 選手
[PN4 Class] 岡野博史 選手
エンジニアが語る"Revolution"
全日本ジムカーナ選手権において、3つのクラスでデビューウィンを飾ったADVAN NEOVA AD08R。1月に開催された東京モーターショーのヨコハマタイヤブースで開発中の参考出品として展示され、報道陣向けのプレゼンテーションではジムカーナのシーズン開幕に間に合うように発売する旨が公にされた。
この時から注目を集め、そのポテンシャルに対する期待が日に日に高まっていたADVAN NEOVA AD08R。

その期待に応える成果を挙げた全日本ジムカーナ選手権の開幕戦だが、デビューウィンを記念した特集の締めくくりとして、横浜ゴムのエンジニア・中村大地が開発の舞台裏をご紹介いたします。
中村 大地 =Daichi Nakamura=
横浜ゴム株式会社 MST開発部 技術開発2グループ

2006年に入社、乗用車から軽トラック、大型RV用まで幅広い一般タイヤ設計を担当。その後、MST開発部に配属となりADVAN NEOVA AD08Rの開発に携わる。
タイヤは自動車の運動性能を根底から左右する部品であり、その開発にはやり甲斐と魅力を感じると語る。
満を持しての登場、そしてデビューウィンと、まさに青写真通りの展開が実現したADVAN NEOVA AD08R。そんな青写真を描いた一人であるエンジニアの中村大地は、ADVAN NEOVA AD08Rの開発をスタートさせた原点から語った。

中村エンジニア :
「従来のADVAN NEOVA AD08も良いタイヤでしたが、発売から年月を経てジムカーナ界では『新品のポテンシャルは素晴らしいけれど、使っていくうちのポテンシャルダウンがもう少し緩やかにならないか』という要求が大きくなってきました。
もちろん私たちも、これではいけないという話になりまして。つまり、従来品を改良しようという話の発端は『ジムカーナで勝つ』ということだったのです」


選手の声に応えるかたちでスタートしたプロジェクト。そこで中村は、どのような方向性を見定めたのだろうか。

中村エンジニア :
「あくまでも"ADVAN NEOVA"ですから今まで通りのコンセプトを引き継ぎつつ、さらに使える領域を広くとってもらう、ということでプロジェクトをスタートさせました。それは、今回とても成功したと自負しています。
具体的にいうと、コンパウンドは"ゴム屋さん"と呼ばれる担当部署に頼む部分が大きいのですが、素晴らしいコンパウンドが出来上がりました。そこで、構造の面でそのコンパウンドをどれだけ巧く使うかが課題として浮上しました。

従来品は、コーナーリング中に横Gがかなりかかってタイヤの接地形状が外側に行った時に、どうも巧くコンパウンドを使えていないのではないかという点に着目しました。ややコンパウンドに無理な力がかかるようになっていた部分を見直して、ADVAN NEOVA AD08Rではケーシング全体で支えてやろうという方向性で開発を進めました」
タイヤを構成する要素としては、コンパウンド(ゴム)、構造、トレッドパターンと大きく3つが存在する。ADVAN NEOVA AD08Rではこのうち、定評あるトレッドパターンについては従来品を踏襲した。では、コンパウンドと構造では、どちらかに優先順位があったのだろうか。

中村エンジニア :
「その点については同時進行です。ADVAN NEOVA AD08Rを開発するにあたって、最初の時点で『構造とコンパウンドを見直します』というのは明確な共通認識でしたから。だから、どちらの優先度合いが高い、ということはありません。
コンパウンドを担当する部署では、多くの試作品を造って開発を進めました。その過程ではプロドライバーさんにもテストしてもらいます。そして良いゴムが見つかったら、製品として形にするために生産を担う工場の力も必要不可欠ですから、工場の方々に色々と頑張っていただいて。実際、本当に多くの人の力を結集して、ADVAN NEOVA AD08Rが誕生しました」


さて、ここであえて従来品を踏襲したパターンについて、少し意地悪な質問をしてみよう。パターンが変わらないということは、開発上の制約にならなかったのだろうか。
中村エンジニア :
「もちろんタイヤにおいて、トレッドの形状や溝面積比というのは、とても重要な項目です。

しかし、幸いにして私たちの先輩が作られた従来品、ADVAN NEOVA AD08のパターンというのはとても優秀なもので、まだまだ性能的に一級品のレベルにあるのです。
そこで、この財産はしっかり受け継ぎつつ、最新の構造設計技術と融合させたらどうなるのか、ということで開発を進めました」
こうして誕生したADVAN NEOVA AD08R。
そこに、中村ならではの味付けのようなものは存在しているのだろうか。


中村エンジニア :
「味付けですか……、難しい質問ですね(笑)。
ちょっと話が逸れるかもしれませんが、ご想像の通りタイヤの開発も現在ではコンピューターによるシミュレーション技術が進化しており、試作品を試験機にかけると数値がいろいろと出てきます。
ただ、この数値のどの部分を人間がどう感じ取っているのかを見いだし、タイヤ開発に生かすことが重要なポイントです。

例えばドライバーの感じ取る『硬い』や『柔らかい』というコメントと、機械的に測るタイヤの剛性値が一致しない場合もあります。しかし別の指標や視点、考え方を変えてみると、なるほどつじつまが合うということもあり、タイヤのことはもちろん人間の感性についても理解した上で、最良の答えを見つけていくことがタイヤエンジニアの仕事だと思っています」
ADVAN NEOVA AD08Rは、競技専用のタイヤというわけではない。ヨコハマタイヤのフラッグシップブランドであるADVANを冠し、優れたドライバビリティとポテンシャルを有してモータースポーツユーザーの期待に応える一方、街中のタイヤショップで誰もがいつでも購入出来る一般市販タイヤである。
中村エンジニア :
「そうですね、レース専用のスリックタイヤや、競技会での使用を前提に開発されるADVAN A050などとは異なり、ADVAN NEOVA AD08Rというタイヤは、どなたが使われても、どこで販売されても大丈夫でなければいけません。
また、車外騒音規制や、ころがり性能のラベル表記への合致など、一般市販タイヤに求められるものは少なくないのです。さらにADVAN NEOVA AD08Rは全世界仕向け、つまり世界中のスポーツドライビングを愛するユーザーの元へお届けするタイヤですから、各国の認証を全てクリアしなければなりません。正直、それはとても手間のかかる作業です。
そういった事情のために、サイズラインナップでは発売までお待ちいただかなければならないユーザーの方がいらっしゃって、とても申し訳なく思っています。一所懸命に作業を進めて、一日も早くお手許へお届け出来るようにしていきます」


ジムカーナで好成績を挙げたADVAN NEOVA AD08R。この結果はサーキット走行を楽しむユーザーにもアピール出来るものだと中村は語る。


中村エンジニア :
「サーキット走行を楽しまれるユーザーさんと、ジムカーナ選手の皆さんのタイヤに対する要求は、リンクしている部分が多いですね。ですからジムカーナでの好成績が実証したポテンシャルは、サーキットでも大きな武器になるでしょう。
先日も筑波サーキットでタイヤの評価を行ったのですが、ラップタイムが向上したのはもちろんのこと、テスターさんからは『懐の深いタイヤ』という評価をいただきました。
従来からADVAN NEOVAが持っている『ステアリングを切れば切るだけ、タイヤがついてくる』というポテンシャルは、ジムカーナとサーキットの両方で共通するニーズであることは間違いありませんよね。

また、サーキットはジムカーナよりも走行距離が長いですが、コンパウンドの進化で熱ダレ対策も行っていますし、前述のように構造でコンパウンドを巧く使うことで摩耗性能も向上していますから、ぜひそのパフォーマンスを体験していただきたいと思います」
開幕戦の舞台となった鈴鹿サーキットで、選手から生の声を聞き、その走りを確認した中村。結果としてPN部門で3つのクラスを制覇、デビューウィンを飾ったことを人一倍嬉しく思っているのも隠せないところだろう。

中村エンジニア :
「モータースポーツのタイヤ開発は、勝った負けたがある厳しい世界です。もしも今日、散々な結果に終わっていたら、ボロカスに言われて立ち直れなくなっていたかもしれません(笑)。
以前に携わっていた一般タイヤは、数字として売れているかどうかが間接的に判りますが、モータースポーツのタイヤは自分が造ったタイヤを使って戦う選手の皆さんから、『いいタイヤだよ、ありがとう』と直接言葉を掛けていただけます。私は今回、初めてジムカーナの競技会場を訪れたのですが、何人もの選手の方からそのようなコメントをいただけて、ますますやり甲斐を強く感じるとともに、ご期待に応えるタイヤを造っていこうという思いを一層強く持ちました」
中村エンジニアの言葉にもあるように、開発エンジニアにはじまり、生産を担う工場スタッフなど、多くの人々の情熱が注がれて誕生したADVAN NEOVA AD08R。そこには「心と技術をこめたモノづくりにより、幸せと豊かさに貢献します」という横浜ゴムの思いが込められており、全日本ジムカーナ選手権でのデビューウィンとして形になったのである。
[UPDATE : 29.Mar.2013]
         
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