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2月に大西洋に浮かぶアソーレス諸島で開幕した2012年のIRC(インターコンチネンタル・ラリー・チャレンジ)。カレンダーは第4戦を迎え、伝統の一戦「ツール・ド・コルス」はコルシカ島を舞台に戦いの火蓋が切って落とされている。
5月9日から12日にかけて開催されるこの大会は、「1万のコーナーを持つラリー」とも称されるツイスティなステージが最大の特徴。路面はターマック(舗装路面)で、コルシカ島の山岳地域にステージが設けられ、ドライバーには優れたドライビングテクニックが求められるのと同時に、タイヤやマシンにも高いパフォーマンスを要求する大会だ。

「ツール・ド・コルス」は昨年からIRCのカレンダーにその名を連ねるようになったが、1956年に初めて開催され今日までに半世紀以上の歴史を誇る。1973年からはWRC(FIA世界ラリー選手権)の一戦となり、世界のトップラリードライバーたちにとっても特別な一戦として位置づけられてきた。

昨年からはIRCの一戦となり、その開催フォーマットも往年のスタイルに近づけられた。そのスタイルとは島の全体を活用するもので、南部にあるアジャクシオをスタートした後は島を北上するかたちでステージをこなしていき、最後は北部の町・バスティアでフィニッシュを迎える。このアイテナリーによってタイヤサービスやチームのサービス部隊はラリー車をステージに送り出すと慌ただしくラリー車に先回りして次のステージへと向かう“移動サービス”の形態がとられている。
 
新井敏弘選手は5月5日の夜に東京国際空港(羽田空港)から日本を発ち、ドイツのフランクフルトとフランスのニースを経由して丸24時間近い移動を経て、日本時間で6日の夜遅くにコルシカ入りした。

翌日には早速レッキ初日のスケジュールをこなし、今回戦いの舞台となるステージでペースノートの作成を行う。翌日もレッキ2日目を順調にこなしたが、今回のSS(スペシャルステージ)は昨年とは異なる新しい道も多く、なおかつガードレールの無い断崖絶壁沿いを走るシチュエーションも多く、ワンミスは文字通り命取りにさえつながりかねないチャレンジングな道が待ち受けていた。

日本時間で9日の夜にはシェイクダウン。ここで今年新たにトミ・マキネンレーシングの手で仕立てられたマシンは早々に高いパフォーマンスを発揮、同じスバルWRX STIのR4仕様を駆るアンドレアス・アイグナー選手とキロ0.2秒の僅差に迫り、惜しくもR4勢のトップには一歩届かなかったものの本番での快走を期待させる結果を見せた。

シェイクダウンが終わった後、アジャクシオの中心部にあるマレシャル・フォッシュ広場、皇帝ナポレオン像の前でセレモニアルスタートを賑やかに開催。ちなみにコルシカ島のアジャクシオはナポレオン・ボナパルトが1769年に生まれた地で、空港の名称にも「アジャクシオ・ナポレオン・ボナパルト空港」とその名が刻まれている。
 
日本時間で10日の夜、いよいよ本格的に競技がスタート。初日は3本のステージが用意されており、SS1「Penitencier Coti - Agosta plage」が25.89km、SS2「Gare de Carbuccia - Tavera」が16.89km、、そしてSS3「Sarrola - Plage de Liamone」は26.70kmとなる。

新井選手は競技の皮切りとなるSS1を、同じスバルWRX STIのR4仕様を駆ってプロダクションカップを競い合うアイグナー選手と、2.8秒差のプロダクションカップ3番手であがる。2番手のルノー・メガーヌRSを駆るエマニエル・ギグー選手組とは0.1秒という僅差である。

続くSS2、はこの日もっとも短いステージであったが、アイグナー選手組から16.6秒差のステージ4番手。代わってステージ3番手を奪ったのはチームメイトのヤルコ・ニッカラ選手、ただしSS2を終えてのトータルタイムでは新井選手が3番手を守っている。

そしてDay1最終のSS3では、アイグナー選手に続く2番手タイムであがり、トータルタイムではトップから37.3秒差の3番手。チームメイトのニッカラ選手が、新井選手の12.2秒後ろで4番手につける展開となっている。

2012年の「ツール・ド・コルス」、そのSSはDay1の3本を含めて全14本、合計距離は318.23kmというスケール。天候に恵まれたこともあって思ったよりも気温や路面温度が高いコンディションとなっているようだが、新井選手自身も初日を終えて残る二日間に向けての大きな手応えを掴んでいるようだ。


なお、初日を終えて横浜ゴム・MST開発部の八重樫剛エンジニアは次のように語っている。

「まずは今年の初戦として、ターマック・スペシャリストとも言われているアイグナー選手のパッケージングにしっかり食らいついていることに、タイヤの面でも手応えを掴んでいます。今回、新井選手は車についてもタイヤについてもコメントが少なめなのですが、逆にこういう時は良い状態にあるんですよね。

タイヤとしては狙い通りのところに来ていて、昨年のコルシカと比べたらその戦闘力は数段向上しています。
SS2では少し離されてしまいましたが、これは想定以上にタイヤの摩耗が進んだことにあります。これは逆に言えば昨年より構造のチューニングが進んだことによって速く走れていることも証でもあると見ています。コンパウンドそのものは昨年のコルシカと同じMを使っているのですが、昨年は摩耗に余裕がありましたので。

SS3に向けてはフロントに新品タイヤを装着したので、またタイムが近づきました。このタイミングでフロントを交換したのはニッカラ選手やアイグナー選手もそうですし、S2000勢の多くも同様でした。その結果から見ると、SS2はステージそのものがタイヤの摩耗に厳しかったのかもしれません。

いずれにしても初日を終えて、タイヤと車両が確実に進化していることは間違いないと確認できました。Day2、そしてDay3と、まだまだトップを奪うだけのチャンスがあると見ています。Day2では新井選手はSコンパウンドを装着してスタートしましたが、これはアイグナー選手との差を詰めるべくプッシュすることを想定してのタイヤ選択です。
また、ニッカラ選手が期待以上に速いこともぜひお伝えしておきたいポイントです。勉強しながら走っています、と本人は語っているのですが、走る毎に速くなっているので改めて楽しみな存在ですね」
伝統の一戦「ツール・ド・コルス」は、この土曜・日曜でDay2、Day3を開催して勝負を決します。
Day2は日本時間の午後3時すぎにスタートしましたが、戦いの模様はインターネットのIRC公式サイトにあるライブ・タイミングや、Rally Radioを通じてチェックすることも可能ですから、ぜひご注目ください!

>> IRC公式サイト ライブ・タイミング
>> Rally Radio
[UPDATE : 11.May.2012]
         
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