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HOME / MOTORSPORTS / ADVAN FAN / Vol.119 News Index
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2011年はIRCのS2000規定車両以外を対象としたプロダクションカップで、堂々のタイトルを獲得した新井敏弘選手。その走りを支えたスバルWRX STI、そしてADVANラリータイヤにとっても、本格参戦初年度でのタイトルは、クルマとタイヤの優れたパフォーマンスを実証するものとなりました。
2012年、2年目の挑戦に向けてますますの飛躍を誓う新井敏弘選手、STI(スバル・テクニカ・インターナショナル)・グループN事業部の嶋村誠さん、そして横浜ゴム・MST開発部の小林勇一エンジニアが、2011年を振り返りながら次なる戦いに向けた思いを語ります。
 
−まずは一年前を振り返って、コルシカに参戦したときの印象をお聞かせください。

新井敏弘選手
「正直、ターマックラリーではタイヤは厳しいものがあると感じましたね。WRC(FIA世界ラリー選手権)でもライバルだった選手、彼には負けたことが無かった上に自分の車はR4仕様になって速くなっているはずなのに、最後に逆転されてしまって。
これはキツいな、と思ったんですが、その後にどこを改善していくべきかが明確に解っていて、きちんと対策されてきたからそのあたりはヨコハマタイヤは凄いな、と思いました」

小林勇一エンジニア (横浜ゴム・MST開発部)
「まだライバルに比べて自分たちはまだまだな部分があるという認識でした。国内でもテストをしてはいましたが、ちょっと方向性がずれていた部分もあったみたいで。国内では海外の道を想定してテストできる場所も限られる、という事情もありますしね」


−グラベルタイヤのA053、こちらで初めて実戦を経験しての印象は?

新井選手
「A053は国内でテストをやった時にライバルメーカーのタイヤと遜色ないタイムが出たんです。あとは摩耗性能を高めるためにゴムを硬めの方向にしていきました。ただ、そうするとトラクションの逃げが出てくる部分もあったので、その辺りを対策してもらったりもしました」

小林エンジニア
「もともと、タイヤの特徴がタイム差に出やすいのはターマック(舗装路面)のほうなんです。コルシカの前からターマックタイヤを中心にやっていかなければならないことは解っていたので、重点的に開発を進めていきました。
ただ、ターマック用のADVAN A006Tは国内のラリーで全く使っていません。海外ラリーで使われているのですが、現場にエンジニアが立ち会う機会もあまり無かったために、開発が少々遅れ気味だったことは否めませんでした。また、車種的にもスバルWRX STIの装着事例が少なかったこともあって、他車とのタイヤにかかる負荷の違いもしっかり認識する必要がありましたね」

嶋村誠さん (STI・グループN事業部)
「去年のコルシカは今だから言いますが、どうしようかと思った部分もありました。ドライバーは苦労した部分も多かったと記憶しています」
−コルシカの後、開発が進んで進化を感じ取ることが出来ましたか?

新井選手
「それは明らかに凄く感じられましたよ。
国内でのテストを重ねたのですが、『次のテストにはこんなやつを持ってくるよ』と言われてひとつのテストが終わりますよね。ちょっと時間を置いて次のテストで実際にそのタイヤを履いてみると、タイムがポーンと上がるんです。タイヤのポテンシャルがとても高まっていることを実感できましたし、開発の方向性は間違っていないことの証でもあるわけです。
だから開発のスピード、つまり進化もとても早かったんです」

嶋村さん
「ホント、急速にタイヤは良くなりました。担当のエンジニアさんにレーダーチャートを作ってもらって、いろいろな性能要素に対して現状はどのポジションにあって、次はこの辺りにまで行って、その先ではどこを狙うか、ということを明瞭化したんです。
コミュニケーションの中で『ちょっと剛性が柔らかいね』なんていう会話もありがちですが、『ちょっと、どうのこうの』という曖昧なものではなくて、図に描いてもらったことでものすごく解りやすくなって開発の効率化につながりました」

新井選手
「テストではタイヤのコンパウンドをソフトでやって構造もここの辺りまでやると良いのだけれど、これにミディアムコンパウンドを合わせると全体的に硬いフィーリングになってしまったりするなど、やはりコンパウンドとの相関関係があるんですよね。
では、次はこの時期に走るのだからこのコンパウンドで! という風に決め打ちをして、それに対して剛性をどうしていくかという手法で開発していきました。コンパウンドの性質によって構造まで変わってくる辺りは、開発上の難しさでしたね」


−タイヤの開発において、やはり新井選手の開発能力が大きな部分を占めた?

小林エンジニア
「もちろん、その通りです。
僕たちも結局のところ、走り終わったタイヤの表面を見るなどはしますけれどインフォメーションはドライバーさんからしか聞けません。ですから、ドライバーさんの言っていることを正として僕たちは開発の方向性を決めていきます。
つまり、そこで間違っているとタイヤの開発はは変な方向に行ってしまう可能性もあるわけですから」


−タイヤが進化したことで、車のセットアップに変化が生じる部分はありましたか?

嶋村さん
「それはありましたね。逆に、車の側で改善すべきポイントがどんどんクローズアップされてきたんです。タイヤがどんどん良くなっていったので、車としてもシャシーの進化を求められましたね。タイヤが進化した分、相対的にシャシーの性能に物足りない部分が出てきたんです。
もっと性能を上げていきたいとなると、シャシーを触るという大がかりなことも必要になるので、そういう面ではタイヤの進化のほうが早かったかもしれませんね」
 
−最終的にプロダクションカップを制したましたが、その決め手は?

新井選手
「参戦した後半の戦いでは、タイヤも車もとても良くなってきたことが大きいですよね。時期的に言えば秋口、IRCではないですがRally Hokkaidoの辺りですかね。Rally Hokkaidoではサスペンションの設定も決まってきていて、そこで使ったショックアブソーバーをIRCのスコットランドに持っていきました」


−プロダクションカップ獲得という結果には、みなさん満足していらっしゃいますか?

小林エンジニア
「素晴らしい成績であるのはもちろんですが、その上で『もうちょっと行きたかった』というのも本音としてありますね。S2000勢に対してキロ数秒のタイム差があったのは、目標よりもかなり遅かったんです。当初の想定はキロ1秒くらいでしたが、実際にやってみたら全然届かなくてキロ2秒とか離されてしまって……」

嶋村さん
「それは、昨年の参戦については後半の2戦がグラベルで、そこに照準を合わせていたという背景もありました。だから、最後にプロダクションカップを獲得したのは、想定内とも言えるんです。なので、次のテーマとしてターマックでの速さを磨き上げる必要性を改めて感じた面もありましたね」


−昨年を踏まえて、迎えた2012年シーズンについては?

小林エンジニア
「基本的には去年の延長上に開発の方向が見えています。ウェットもきちんと雨が降ったときに備えて造り込んでいかなければならないと思っています」

嶋村さん
「去年のコルシカは、車も出来上がったばかりでセッティングも何もままならない状態でした。
しかし今年は新車ではありますが時間的な余裕もあるのでしっかり事前のテストもやっています。4月の終わりから走り込みのテストもやった上でコルシカに持っていきますので、車のポテンシャルも悪くないでしょう。ただ、新井選手ご自身が事前に乗る機会が無いのがちょっと残念ですが」


−新井選手は昨年WTCC出場を踏まえて、ターマックの走り方が変わったそうですが?

新井選手
「コーナーリング速度を上げるようなドライビングを、やはりしなくてはいけなんですよね。ラリーではグラベルとターマックでタイヤの使い方が全く異なるのですが、それをもうちょっと突き詰めてタイヤを上手く使えるような運転に変えているんです。
サーキットのレースにはWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)に加えてスーパー耐久にも出たのですが、データロガーを見ると運転を変えた結果も顕著に解るじゃないですか」
 
−今年に入ってからのテストで得た手応えは?

小林エンジニア
「良い感触は得ています。去年に比べると変更点は細かいところが多いのですが、その中でサイド剛性なども変えたりして戦闘力を高めています」

新井選手
「グラベルテストなんかは凄く収穫がありましたね。ターマックのテストは2日間やったうちの1日が雨で、しかも気温も思った以上に低かったのは残念でしたが」

小林エンジニア
「ターマックについては、今後は新しいコンパウンドを作っていく必要性も感じています。ターマックはどちらかというとコンパウンドへの依存性が大きいんですよ。
だから本当ならコンパウンドが先に決まっていて、そこに合わせて構造を造り込んでいくのが理想なんです。ただ、去年は構造要素の軌道修正をする必要があったのですが、それは今の段階で改善されてきたので、これからはコンパウンドのグリップを上げて行って、上がった結果として構造をまた変えていく、というかたちにしていこうと思っています」

新井選手
「今年のコルシカは去年のようにドタバタすることも無いでしょう。エントリーを見ると同じR4のマシンでライバルメーカーのタイヤを使う選手もいますから、これは我々にしたらベンチマーク的な存在なので、やりやすいですよね」
いよいよ開幕した「ツール・ド・コルス」。Day1から好走を見せる新井選手、その走りを支えるスバルWRX STI・R4とヨコハマタイヤのADVANラリータイヤ。弛まない進化を続ける両者のポテンシャルにも、大きな注目が集められています。


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[UPDATE : 11.May.2012]
           
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