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豊富な車種のバリエーションが自慢のGT300は、今年はFIA-GT3の増加も相まって、同じメーカーであっても型式が違えば1車種と数えると、実に17車種もの多きがグリッドに並ぶことになった。それぞれ個性的なのは、前回も紹介したとおり。
その中でもヨコハマタイヤのADVANレーシングタイヤを使うチームが走らせる、話題のマシンについて紹介していこう。
※各車のスペック表記中、車両重量やリストリクター径は、2012年5月14日にGTAが発表したブルテンの内容です。数値は予告なく変更される場合がございます。
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昨年のチャンピオンカーであるBMW Z4 GT3は、2012年モデルになって従来より全長が67mm、全幅が87mm拡大されている。これに併せて、フロントのタイヤサイズは280/650R18から300/680R18に広げられた。
さらに見た目は'11年モデルとほとんど変わらないものの、ルーフ以外のほとんどが改良されて空力を改善。トレッドの拡大とともにコーナリング性能のアップに大きく貢献している。
しかしながら、内外の活躍によってBOP(性能調整)による締めつけも厳しくなり、最低重量こそ1245kgから1210kgとなったものの、リストリクターは35.0mm×1と大幅に縮小。
「昨年のようなストレートでのマージンはまったくなくて、同じFIA-GT3の中でも、トップ5に入れないほど遅い」と谷口信輝選手は語っているが、GSR初音ミクBMWは第1戦を3位、第2戦は優勝と、ここまでの成績は悪くないどころか、むしろ絶好調の感も。
ドライバーとチームの高い能力でカバーしているのは間違いない。また、パワーダウンの反面、燃費は以前より良くなったようで、戦術の幅も広げられるように。
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Specification |
車両型式 |
E89 Z4GT3 |
全長×全幅 |
4387mm × 2012mm |
ホイールベース |
2509mm |
トレッド |
F) 1660mm R) 1700mm |
エンジン |
S65B44KS (V型8気筒) |
総排気量 |
4360cc |
エアリストリクター |
70.0mm×1 |
過給器 |
なし |
車両最低重量 |
1200kg (車両重量 1230kg) |
タイヤサイズ |
F) 300/680 R18 R) 330/710R18 |
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スーパー耐久ではすでに日本のレースを走っているが、SUPER GTにおいてはアウディR8 LMSは初登場。またR8 LMS ultraは、その'12年モデルである。
FIA-GT3のトレンドは、フロントタイヤのサイズアップであるようでultraもまた、270/650R18から300/650R18に。もともとピックアップに優れていたが、さらにコーナリング性能も向上することとなった。
それでいて、ECUの設定変更が行われたエンジンは、ストレートパフォーマンスにおいてもドライバーからは不満は上がっておらず、全体的なバランスに優れるマシンということもできるだろう。
唯一の難点は、燃費が良いとは言い難いことで、こと開幕戦に関しては同じFIA-GT3に比べ、ピットストップ時間で10秒前後の差があった。
もちろんアウディにも見た目以上の改良が施されており、ラジエータやブレーキのエア導入部が改められて、冷却性能を大幅に向上。また、リヤウィングの取り付け位置は後方に移動されたが、あまり効率は良くないという声も。その一方でフロントのアンダーパネルに設けられたアップスイープは跳ね上げ角度が大きく、十分なダウンフォースを稼いでいるようだ。
IWASAKI MODAクロコapr R8は、第1戦で予選17番手から決勝で8位にまでジャンプアップ。まだまだ潜在能力は高そうだ。
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Specification |
車両型式 |
AS42AOFGT3 |
全長×全幅 |
4670mm × 1994mm |
ホイールベース |
2652mm |
トレッド |
未公表 |
エンジン |
CJJ (V型10気筒) |
総排気量 |
5212cc |
エアリストリクター |
39.0mm×2 |
過給器 |
なし |
車両最低重量 |
1250kg (車両重量 1260kg) |
タイヤサイズ |
F) 300/650 R18 R) 330/710R18 |
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スーパー耐久を戦うPETRONAS SYNTIUM TEAMが、昨年のマレーシア・ミレニアム耐久レースを制し、話題を集めたメルセデス・ベンツSLS AMG GT3。
そのクルマをメンテナンスするシフトの代表でもある竹内浩典選手が「見た瞬間、電気が走った」と、ここ数年チーム運営や監督に専念していたが、現役復帰を決意。クラシカルな雰囲気を持ちつつ、最新鋭のテクノロジーが注ぎ込まれたドライバーの魂を揺るがすクルマでもある。
特徴でもあるロングノーズとガルウィングのドアは、本来ホイールベースを長くし、かつドアヒンジがルーフにあって重心を高くしてしまう。だが、そのハンデを補ってあまりあるのが、6.2リットルの大排気量エンジン。
「シェイクダウンを行った富士では、実に気持ちよく走れた。ストレートは速いし、セクター3のようなテクニカルセクションも電子制御の効果もあって、意外に苦にしなかった」と竹内選手は好印象を伝えていたもの。
しかし、マシンの到着が遅れたり、合同タイヤテストにトラブルで走行できなかったりしたことが、開幕からの2戦では大きく影響。さらに「新しいBOPのおかげで、クルマはやっぱり重く感じる」と竹内選手。期待された第2戦・富士では10位に甘んじたGREEN TEC & LEON SLSだが、スポーツランドSUGOでの合同タイヤテストを経た今は、タイヤも完璧に合わせ込めたはず。今後が大いに期待の一台だ。
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Specification |
車両型式 |
SLS AMG GT3 |
全長×全幅 |
4710mm × 1990mm |
ホイールベース |
2680mm |
トレッド |
F) 1686mm R) 1644mm |
エンジン |
M159 (V型8気筒) |
総排気量 |
6200cc |
エアリストリクター |
34.5mm×2 |
過給器 |
なし |
車両最低重量 |
1340kg (車両重量 1340kg) |
タイヤサイズ |
F) 300/680 R18 R) 330/710R18 |
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R&Dスポーツが走らせるスバルBRZは、FIA-GT3急増の中、JAF-GTとして最大の抵抗勢力となることが期待されているマシンだ。
製作を担当したのはSTI(スバル・テクニカ・インターナショナル)であることが、従来のレガシィB4との違いながら、データを共有していることもあって、R&Dスポーツ側に支障はないという。
むしろ、スバルの風洞を使って、絶えず空力の改善を図れるメリットも。実際、レースごとモディファイの様子が見られ、第1戦ではフロントに大型化されたカナードが、そして第2戦では高速コース富士に対応した、デュフューザーがリヤに設けられていた。
搭載されるエンジン、EJ20は排気量2リットルのターボとあって、ストレートでの速さはFIA-GT3にかなうべくもないが、低重心ボクサーエンジンのメリットと相まってコーナリングスピードは極めて高い。そして燃費にも優れるため、ピットでタイムを稼ぐことも期待される。
第1戦はリタイア、第2戦は9位ながら、「まだまだやれることはいっぱいあって、伸びしろは大きいクルマだと思う。ただ、テストする時間が限られているんで、レースごと一歩一歩という感じかな。相性がいいと思うSUGOあたりで勝負かけられるようになれば」と山野哲也選手は語っている。
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Specification |
車両型式 |
DBA-ZC6 |
全長×全幅 |
4530mm × 1920mm |
ホイールベース |
2630mm |
トレッド |
F) 1635mm R) 1600mm |
エンジン |
EJ20 (水平対向4気筒) |
総排気量 |
1994cc |
エアリストリクター |
39.9mm |
過給器 |
シングルターボチャージャー |
車両最低重量 |
1150kg |
タイヤサイズ |
F) 300/710 R18 R) 330/710R18 |
※車両最低重量は、リストリクター39.9の場合。 |
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2007年の十勝24時間レースでは、GT車両のスープラにハイブリッドシステムを投入した経験を持つトヨタだが、SUPER
GTへの投入はプリウスが初めて。
また、スープラとは異なり、専用に開発したシステムではなく、市販車のシステムをほぼ流用してもいる。ミッション脇にモーターを、そしてシステムECUとバッテリーは助手席の位置に配置。
現状では「絶対的なパワーアシストの感じはない」と新田守男選手は語るが、燃費の向上には確実に貢献しているようで、ピットでのロスタイムを減らすことともなっている。
apr製作のマシンだけあって、エンジンはミッドシップ(ホイールベース間)に置かれ、またカローラの頃に用いていた量産V6エンジンではなく、フォーミュラ・ニッポン用のトヨタRV8Kを使用するのも特徴のひとつ。今後はパドルシフトの採用も検討中だという。
ハイブリッドシステムの装着で100kgの重量増は、決勝には強くても予選では……という懸念もあったが、ここまでの2戦はいずれもトップ10に。
「あれ以上行ったら飛んでいっちゃうかも(笑)。ドライバー合わせると1400kg近いんで、コントロールを失うととんでもないことになるけれど、とりあえず一発を出せるようにはなった」と新田選手は語る。
ピットアウトの際にはモーターだけで発進し、しばらく進んでからエンジン始動としているので、ハイブリッドの効果を耳でも体感して欲しい。
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Specification |
車両型式 |
ZVW30 |
全長×全幅 |
未公表 |
ホイールベース |
2700mm |
トレッド |
未公表 |
エンジン |
RV8K (V型8気筒) |
総排気量 |
3400cc |
エアリストリクター |
27.7mm×2 |
過給器 |
なし |
車両最低重量 |
1200kg |
タイヤサイズ |
F) 330/710 R18 R) 330/710R18 |
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国産車初のFIA-GT3となるGT-Rは、GT500のGT-R以上に市販車の面影を残していることもあり、コアな日産車ファンにむしろ強い支持を得ている。また、使用するエンジンも市販車同様、排気量3.8リットルターボのVR38DETTとあって、「我らがGT-R」との意識も。
ただし、他のFIA-GT3がいかにもスーパーカーであるのに対し、全高も高いこともあって空力面ではハンデを負うが、530馬力オーバーの強心臓で空気の壁を切り裂いている。実際、ストレートが圧倒的に速いという印象はないが、かといってラップタイムも絶えず上位にあることは、すなわちバランスに優れているということになる。
コースの得手、不得手がないということは今後コンスタントにポイントを稼げるようになる、ということを意味しよう。
パワフルな分だけ、重量も1300kgとヘビー級ながら、そのことがウェットコンディションでメリットにも。決勝まで雨に見舞われ続けた第2戦は関口雄飛選手が練習でトップ、スーパーラップでは「手堅く行った」にも関わらず、2番手相当のタイムを出したほど(再車検で規定違反があり、SLタイムが抹消)。
「重いけれど、しっかりトラクションがかかるから、他のクルマがアクセルを戻す川(コースを横切る水たまり)でも踏んでいける。2か所あってロスがコンマ5秒なら、それで1秒稼げるでしょ?」と関口選手。第1戦は接触で、第2戦はブレーキトラブルで、それぞれ涙を流したものの、すでに潜在能力の高さは明らかになっている。
結果が残された時、誰もが驚嘆する可能性は確実にあるだろう。
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Specification |
車両型式 |
GT-R NISMO GT3 |
全長×全幅 |
4780mm × 2036mm |
ホイールベース |
2780mm |
トレッド |
F) 1675mm R) 1680mm |
エンジン |
VR38DETT (V型6気筒) |
総排気量 |
3799cc |
リストリクター径 |
36.0mm×2 |
過給器 |
ツインターボチャージャー |
車両最低重量 |
1300kg (車両重量 1300kg) |
タイヤサイズ |
F) 330/710 R18 R) 330/710R18 |
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[UPDATE : 18.May.2012] |