さて、今年のGT300には、歴史的に見ても極めて大きな変化があった。
GT300の中にもJAF-GTとFIA-GTという区分があり、それぞれの性格は好対照。JAF-GTは絶えず自由な改造が許されるのに対し、FIA-GTはメーカーが開発、市販するレーシングカーであるため、FIA(国際自動車連盟)のホモロゲーション(公認)を受けた後は、セッティングレベルの調整しか許されない。
GT500ばりの空力改善も可能なJAF-GTは多くのダウンフォースを稼ぐこともでき、コーナリングの速さを自慢とするのが一般的な傾向。逆にエンジンパフォーマンスにおいて優遇のあるのがFIA-GTの特徴で、ストレートを圧倒的な速さでJAF-GTを上回る。
そのため、これまでの全体的な傾向として岡山国際サーキット、スポーツランドSUGO、オートポリスのようなテクニカルコースはJAF-GTが有利。そして富士スピードウェイのような高速コース、ツインリンクもてぎのようなストップ&ゴーの繰り返されるコースではFIA-GT3が有利とされてきた。セパンサーキットと鈴鹿サーキットに関しては、ほぼイコールといったところか。
また、先に触れた性能調整だが、昨年まではシリーズを統括するGTAが独自に設定していたが、これがFIA-GTに関してはFIAが定める調整値、BOP(バランス・オブ・パフォーマンス)に合わせることに。これにより、特にFIA-GT3においては本来の性能を発揮できるようになった。もちろん、一方に明らかな有利不利があってはならないため、JAF-GTにおいてもリストリクター径の4ランクアップが認められた。
前回、GT500も2ランクの性能緩和が許されたと記したが、実はGT300の影響が大きい。GT300の著しい性能アップに対し、抜く・抜かれるが困難になってしまうための配慮なのである。こと今年に関してはGT300を核にしてレギュレーションが改められたことが、そのことで理解してもらえるはずだ。
実際にレースを見たことのない人からは、性能差があることからGT300の車両は、GT500の車両に対して障害物、あるいはシケインなどと揶揄されることもある。だが、実際にはGT500にしてみれば、いかにロスなく抜いていくか、逆にGT300にしてみれば、いかにロスなく抜かれるかが腕の見せどころに。さらに言えば、別のクラスの車両をうまく絡めてオーバーテイクの機会を得られることも決して少なくはないため、実はレースの盛り上げにも一役買っているのである。