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HOME / MOTORSPORTS / ADVAN FAN / Vol.115 News Index
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GT500 Class GT300 Class TIRE ENGINEER
 
2011年もGT300クラスはADVANユーザーで大半が占められたものの、開幕直前に発生した東日本大震災は、このクラスに少なからぬ影響を及ぼした。
合同テストが中止になり、ほとんどのチームがぶっつけ本番で開幕戦に挑まざるを得なかったからだ。また、テストの中止によって入念な性能調整ができず、その結果、FIA GT車両の快進撃が続くことにもなった。

開幕戦では優勝にあと一歩届かなかったADVAN勢だったが、それからの巻き返しは激しく、残る7戦を制覇。
中でも「初音ミク グッドスマイルBMW」(谷口信輝選手/番場琢選手)の勢いは凄まじく、第3戦・セパンで初優勝を飾ったばかりか、たび重なる性能調整もはねのけ、第6戦で2勝目をマーク。第7戦でいったんポイントで逆転されるも、最終戦・もてぎの3勝目で再逆転を果たしてタイトルを手にすることになった。

一方、JAF GT車両もシーズン途中の性能調整、またたゆまぬ車両開発によって息を吹き返し、第4戦・SUGOで「SG CHANGI IS350」(折目遼選手/アレキサンドレ・インペラトーリ選手)が初優勝。さらに「R&D SPORT LEGACY B4」(山野哲也選手/佐々木孝太選手)も第5戦・鈴鹿、第6戦・オートポリスを制し、シリーズランキングで5位を獲得している。
 
1994年から始まったJGTC(全日本GT選手権)、そしてSUPER GTにおける選手権でのシリーズ戦における通算勝利を、2010年のうちに99勝としていたADVAN。悲願の100勝には、あとひとつだけ届かなかったものの、達成は時間の問題、開幕戦であっさり……と誰もが思ったに違いない。

しかし、その富士でのレースは一大勢力であるGT300においても、激しい雨に足を引っ張られる形になった。ただし、タイヤ性能が極端に劣っていたがゆえの敗北ではない。天候の読み違いによる、多くのチームのタイヤ選択ミスが原因だった。
実際、この年のチャンピオンとなる「初音ミク グッドスマイルBMW」は、1回余分にタイヤ交換を加えてなお、5位入賞を果たしているのだから。

それだけに金字塔は多くの時間を割かず、打ち立てられることとなった。2戦目の岡山国際サーキットが、その舞台に。
予選2番手からスタートした「triple a Vantage GT2」(吉本大樹選手/星野一樹選手)がポジションキープから、まずはレースを開始。星野選手から早めにバトンを託された吉本選手は、クリアラップを取り続けてハイペースでの周回を重ね、全車がドライバー交代を済ませると、トップに浮上する。

しかし、この後の展開が、記録だけでなく記憶にも残るレースとなってしまう。ラスト15周、リードを広げ続けていた吉本選手にGT500が接触したのだ! 2番手に後退してしまうが、諦めずにプッシュを重ねた吉本選手はトップに迫り、激しいバトルを繰り返した後、ゴールまで5周のところで再逆転に成功。
「僕は祈るだけだったけど、ヨッシー(吉本選手)は絶対やってくれると信じていました」と星野選手。この勝利はふたりが所属するA speedにとって、チーム結成2年目の初勝利でもあった。

その後、ADVANは怒濤の快進撃を重ね、残りのレースをすべて制覇。通算勝利を106勝にまで伸ばすこととなった。

なお、ドライバー別の優勝回数として、昨年まで鈴木恵一氏が11勝で最多となっていたが、今年一気に3勝をマークしたことで谷口信輝選手がタイ記録で並んで、名実ともにADVANマスターの名乗り上げとなり、来年には更新の期待もかかる。
3位は青木孝行選手の10勝、ADVAN陣営に返り咲いた新田守男選手が8勝で4位、そして5位が織戸学選手の7勝。また、6勝は山野哲也選手、福山英朗選手、松田秀士選手、故・舘信吾選手の4人が記録している。(それぞれ他メーカーでの勝利は含まず)
 
2011年に猛威を振るったFIA GT3マシンは、エンジンパフォーマンスの高さを武器とする一方で、パーツの交換や改造が自由に許されず、またエアロパーツにも制限があった。そのため、高速コースには強い反面、テクニカルコースには弱いというのが開幕前の予想。実際には、その予想を遥かに上回る「直線番長」ぶりを見せつけ、「初音ミク グッドスマイルBMW」(谷口信輝選手/番場琢選手)がチャンピオンを獲得した。

開幕戦の富士こそ気まぐれな天候にかき回され、本領を発揮するにはいたらなかったが、それ以降のコースでは、つなぎの短い直線でも威力を発揮したから、もはやライバルから出るのは愚痴ばかり。「勝負にならない」という言葉を何度聞いたことか。
しかし、「直線番長」を自称しつつも、絶えず谷口選手が口にしていたのは「今回も、いいタイヤを用意してもらえた」というコメント。絶えず進化を重ね、開発の手を止めないよう努力し続けている開発陣には、まさに冥利に尽きる言葉といえよう。
実際、「高速」という形容詞も着くが、初優勝を飾った第3戦の舞台、セパンはテクニカルコースの部類。マシンとタイヤの高性能が完璧にマッチしたからこそ、得られた勝利だと言えるだろう。

そして、もうひとつの勝因はドライバーにある。
過去に何度もチャンピオン争いを繰り広げ、結果的には涙を飲み続けてきたとはいえ、谷口選手の実力は保証済。だが、パートナーの番場選手には、自身も認めるとおり、「今までの僕には『何かやらかしそう』というイメージはあった」のは事実だ。
谷口選手は「チャンピオンとなるために、何が必要か?」 そう考えた時、即座に番場選手のスキルアップと感じたという。そこで惜しみなく、自身の経験、知識、さらにサーキット街での心がけまで伝授したという。

何度も性能調整を受けてなお、第6戦の富士では独走で、ポール・トゥ・ウィンを達成。しかし、続くオートポリスでは苦手なコースとはいえ、番場選手のプッシュが及ばず9位に甘んじ、ランキングのトップを明け渡している。帰途に着く際、谷口選手は「俺に、チャンピオン獲らせてくれよ……」と本音をポツリ。これに番場選手が奮起した。

「僕にできることは、すべてやってきました。いい緊張感があったから、逆にプレッシャーを感じなかったほど」と番場選手。
最終戦・もてぎではスタートも任され、トップをキープしたまま谷口選手にバトンを託すことに成功する。そして、トップでゴールした谷口選手は、いやゴールする数周前から目を真っ赤に腫らしていた。
谷口選手にとってはGT参戦10年目にして初のチャンピオン、悲願をついに成就させた。そして番場選手は初戴冠。著しい成長を遂げたシーズンともなった。
激戦のGT300クラスで栄冠を手中におさめたADVAN。最終戦までもつれこんだタイトル争い、最後は優勝で決着をつけた谷口信輝選手/番場琢選手の戦いぶりは、記録としてのみならず、記憶にも永く残るものとなりました。

次回はふたつのクラスで各マシンの好走を支え続けたADVANレーシングタイヤ、その開発陣が一年間を振り返ります。
[UPDATE :16.Dec.2011]
           
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