コースレコード・ホルダーとして迎えた2011年、3回目の電気自動車によるパイクスへの挑戦。更なる記録更新を目標に、塙選手は『HER-02』のウィークポイント解消に取りかかった。
「2010年は電気自動車のコースレコードを大幅に更新して、上出来、いや出来すぎといえるくらいだったんですけれど、実はモーターの発熱が思っていたよりも凄かったんです。実は最終セクションではセーフティリミッターが働いて、クルージング走行でゴールしていました。
それが、とにかく悔しくて仕方なくて。だから2011年は最後の最後まで全開で行けるようにしようと思ったんです。モーターのクーリング効率を2倍くらい高めて、タイヤも新しい『BluEarth』のエコタイヤで挑戦することにしました」
エコタイヤの『BluEarth』を装着、と聞いて、驚かれた方もいらっしゃるかもしれない。速さを突き詰めて戦うモータースポーツとエコタイヤ、その組み合わせは意外なものと言えるだろう。
「モータースポーツのポジショニングをどこまでにするかで、タイヤに対する考え方も変わってくると思います。車のスポーティな走りを楽しむ、という領域であれば、電気自動車と転がり抵抗の小さいエコタイヤというのは、ものすごく相性の良い組み合わせなんですよ。ガソリンエンジンのスポーツカーにエコタイヤを装着すると、グリップ感が足りないとか、決して良くないイメージを口にする人が多いでしょう。ところが電気自動車にエコタイヤを組み合わせると、車が軽やかでスムーズに走り、特性との相性が抜群なんです。
今回のパイクスはエコタイヤの『BluEarth』で記録を更新しましたが、ガソリン車ではエコタイヤを装着してあのタイムを出すことは絶対に出来ないでしょうね。なぜならば、ガソリンエンジンにはパワーバンドがあって、ギアチェンジでその美味しい部分を使っているわけです。その上でピークを過ぎてしまうとホイールスピンしてしまうわけです。
ところが電気自動車というのは、動き出したらずっと一定のトルクを出し続けるので"ムラ"がありません。だからエコタイヤが持つスムーズさが利いてくるのです」
電気自動車でのモータースポーツでは、エコタイヤとの相性がとても良いと自信を持って語る塙選手。しかし、電気自動車はガソリン車に比べて重量の面でもハンデを背負っているのではないか。そうだとしたら、その走りを支えることについても、エコタイヤでは物足りなさを覚えたりしないものなのだろうか。
「この車でも400kgのバッテリーを搭載していますから、重さとしてはガソリン車よりも電気自動車の方が重いですよ。でも、その重量差が全く関係なくなるくらいに、モーターのパフォーマンスが素晴らしいんです。
そして、重さも含めてしっかりと『BluEarth』が走りを受け止めてくれますから、物足りなさや不安を覚えることはありません。156のコーナーを、全く破綻することなく駆け上がることが出来るんですよ」