地元の伝統ある"お祭り"として、そして世界的に注目を集めるヒルクライム・イベントとして、毎年盛況を見せるパイクス。ここに塙選手は2009年から参戦を開始している。しかも駆るマシンは塙選手自身がプロデュースして作り上げた電気自動車だ。
「僕は30年以上もオフロードレースをやってきて、バハやモンゴル、タイなどの世界各地で戦ってきました。そうしているうちに、大自然の中で排気ガスを垂れ流しながら走っていると、さすがにこの歳になると罪悪感が凄いんですよ。
それでふと思ったのが、『こんな大自然の中でこそ、ゼロ・エミッションの排気ガスを出さない車で走ってみたい。新興国はこれから自動車の普及が進むのだから、そこにクリーンな車を増やしていくべきではないかな』ということなんです。それで、残りのドライバー人生を、そっちの方面でも頑張ってみようと思いました」
世界の大自然を相手に戦い続けてきた塙選手だからこそ、自然を愛する気持ちは人一倍強い。そんな塙選手が、環境に優しい電気自動車に注目したのは、ある意味で自然な流れだったのかもしれない。
「2005年で横浜ゴムのRVタイヤ「GEOLANDAR(ジオランダー)」の開発プロジェクトが一段落したので、翌年からはエコをテーマにチャレンジしてみようという話になりました。そこで2006年にはコンバートEV、つまりガソリンエンジン車のエンジンをモーターに載せ換えたマシンで、いろいろなレースに出場してみて電気自動車の感触を掴むことからはじめました。
とにかく、電気自動車をみんなに注目してもらって、その存在を認めさせるためには、レースに出てガソリンエンジンに勝つしかないだろうと。いくら電気自動車について『エコですよ、環境に優しいんですよ』と言ったところで、それが遅くて、高価で、格好悪くて、乗ってもつまらないものだったら、誰も買わないでしょう?
ならば電気自動車でガソリン車とガチンコ勝負をして勝ってみせれば、遅いとは言わせないし、乗って楽しいものなんだということもアピールできるわけです」