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[vol.1] WTCCの魅力を再検証! [vol.2] 谷口選手&新井選手に聞く [vol.3] 世界の走りを支えるADVAN
[vol.4] 2011年のWTCCと有力選手 [vol.5] 鈴鹿の見どころ、私のお薦め [vol.6] 現地から最新情報をお届け!
開催まで残り1ヶ月を切ったWTCC日本ラウンド「WTCC Race of JAPAN」。
史上初の鈴鹿サーキットでの開催ということで話題を呼んでいるが、日本ラウンドならではのお楽しみが日本人ドライバーの参戦だ。
注目の顔ぶれだが、今回はYOKOHAMAトロフィー部門に日本人として初めてレギュラー参戦している谷口行規選手に加えて、今季はIRC(インターコンチネンタル・ラリー・チャレンジ)に参戦するなど世界にその名を知られているラリードライバー・新井敏弘選手も参戦を発表。両選手はシボレー・クルーズを駆っての出場となり、谷口選手は引き続きバンブー・レーシングから、新井選手は今季圧倒的な速さを見せているシボレーのワークスチームからの出場となる。
9月26日、参戦発表の記者会見の臨んだ両選手、そこで語ったWTCCの魅力や期待、意気込みなどについてご紹介しよう。
=Yukinori Taniguchi=
1968年・広島県出身。
'02年に鈴鹿クラブマンでレースデビュー。レースをはじめたきっかけは、本業のゲーム制作における山田英二選手との出会い。
以降、スーパー耐久やシビックワンメイクレースに参戦、'08年からWTCCへと活躍の場を拡げた。'10年の日本ラウンドでは日本人初のインディペンデントトロフィー優勝を飾った。
=Toshihiro Arai=
1966年・群馬県出身。
'84年にラリーデビュー、2度の全日本王座獲得を経て'98年からWRCに戦いの舞台を移す。'05年と'07年にはPWRCのチャンピオンに輝く。
'11年はADVANとともにIRC(インターコンチネンタル・ラリー・チャレンジ)に参戦。国内ではラリー活動に加えて、スーパー耐久にも参戦する。
昨年の岡山でYOKOHAMAインディペンデントトロフィーを日本人として初めて制した谷口選手。その時の模様は当時のインタビュー記事に詳しいが、今季はレギュラードライバーという立場になって、改めてWTCCというレースについての印象をこう語る。

「ドライバーや関係者が、ものすごくアットホームな雰囲気にあるのがWTCCの特徴ですね。あれだけ激しいバトル、時にはぶつかり合いを演じているのに、ドライバー同士は仲が良いんです。コース上ではライバル同士なのに、時にはちょっと耳寄りな情報を教えてくれたりとか。
オーガナイザーを含めて、とても良い関係を保ちながらシーズンがまわっているな、という感じがしています」


フル参戦ということで、忙しい日々をすごしている谷口選手。体調管理にはこれまで以上に気をつかっているという。

「特に7月や8月は、ほぼ隔週でヨーロッパでのレースがあって、日本と行き来していました。
できるだけ日本に帰って来てからもヨーロッパの時間に近いかたちで過ごすようにしていて、日本では午前中は寝ていることも多かったですね(笑)。
そのおかげで、元々レースウィークは早起きするようにしていますが、ヨーロッパに渡っても体力的には楽でしたね」



過去2回のP-WRC(FIAプロダクションカー世界ラリー選手権)でのチャンピオン獲得など、ラリードライバーとして世界にその名を知られる新井選手。もちろんWTCCには初参戦、更に言えば今季は国内でスーパー耐久に参戦するなどレース出場の経験はあるものの、スプリントレースとなるとやはり初めてのこととなる。

「WTCC自体は何度かテレビで見て『凄いレースだな』と思っています。なによりバトルが激しいですからね。
耐久レースは今季参戦しているスーパー耐久など経験があるのですが、スプリントは初めてです。ただ、先日イギリスに渡ってWTCCのマシンテストをしてきましたが、ラリーで一緒だったメカニックもいたりして、チームはアットホームな雰囲気の中にプロフェッショナルの厳しさがあった、という印象です」
谷口選手と新井選手の駆るマシンは、ともにシボレー・クルーズ。WTCCには発足初年度から参戦しているシボレーだが、マシンは2009年からそれまでのラセッティに代わってワークス勢がクルーズを投入。日本では発売されていないモデルだがGM(ゼネラル・モータース)にとっては重要な世界戦略車種であり、WTCCでも参戦を重ねる毎に進化を遂げて戦闘力を大きく高めてきた。
今季は規則の改定に伴って1,600ccのガソリンターボエンジンを搭載。開幕戦の表彰台独占にはじまり圧倒的な強さを見せて、先のスペイン戦では早々にマニュファクチャラーズタイトルを確定させた。

谷口選手が所属するバンブー・レーシングは第2大会のベルギー戦からクルーズを投入。昨年のYOKOHAMAインディペンデントトロフィー優勝などを飾ったラセッティと比べて、最新のクルーズはどんなマシンなのだろうか。

「ベルギーからマシンがクルーズになって、ちょっと乗り方に慣れてきたと思ったら新しいパーツが投入されてマシンの特性が変わっていることも多く、今年はマシン開発を進めなければならないことと、初めてのコースばかりということで苦労もありました。
『このパーツをつけたらクルマがとてもピーキーになるんだけれど、どうする?』なんてことを予選や決勝の直前に言われてビックリしたこともありましたが、失うものは無い予選の順位だからと開き直って装着したら、いきなりクルマが速くなった、なんていうこともありました。

クルマの比較で言うと、以前乗っていたラセッティはクルーズに比べてホイールベースも短く、条件的には向きを変えやすいクルマのはず。ところがアンダーステアが強くて、リアを軽く流すような感じでコーナーリングをしていました。
それがクルーズになると、クルマ自体は大きいし補正ウェイトもたっぷり積んでいるから条件的にはコーナーリング性能で劣るはずなのですが、その割には向きを変えやすいんです。足回りの進化などが利いている部分かと思いますね。
エンジンはノンターボの排気量2,000ccでは、コーナーを曲がるときにひたすら早くアクセルを全開にすれば良かったのですが、現在のターボ付1,600ccになると凄くシビアなアクセルワークが要求されます。ちょっとラフに扱うとフロントがすぐホイールスピンをしてしまい、一気にグリップが失われてしまうので気をつかいますね。
あと、クルーズは空力性能がラセッティより数段優れているので、ブレーキングの突っ込みでかなり稼ぐような部分が出てきています」


新井選手はマニュファクチャラーズタイトルを確定させているシボレーから、イヴァン・ミューラー選手、アラン・メニュ選手、ロブ・ハフ選手に続く4台目のクルーズを駆っての参戦となる。
記者会見に臨んだ前週にはイギリスに渡って、マシンテストを行って実際にステアリングを握ってきた。

「テストはレギュラー勢が2日間行って、その後に混ぜてもらうようなかたちでした。
基本セッティングの状態から乗り始めて、最初のうちはコースに慣れるところからです。徐々にラインを変えてみたりブレーキングポイントをいろいろ試してみるなど、探りながら周回を重ねていきました。午後からスプリントを換えるなどして本格的にセッティングを進める予定でしたが、ちょっと問題が発生してテストは中止になってしまいました。
ただトータルで200kmほど走れましたし、空模様が不安定でドライとウェットのコンディションが交互にくるような感じだったので、色々な路面を試せたことから収穫は大きかったですね。

テストではハフ選手からいくつかアドバイスをもらいました。まずはライン取りやブレーキングポイントなどの基本的なところを教えてもらって、その次はクルマの特性について。『このギアで、これ以上アクセルを踏んでいくとスピンする』など、クルーズというクルマの特性を聞きました。
そのほかには『このコーナーではメニュ選手がクラッシュしているから、同じことはするなよ』と、ちょっとプレッシャーもかけられたりしましたね(笑)」
鈴鹿サーキット・東コースで初めての開催ということで、WTCCのレギュラードライバーも、そしてチームもコースについての情報収集は欠かせない。
そこで谷口選手には、どんな質問が寄せられたのかをお聞きした。

「8月の中頃でしたか、シボレーのワークスチームから『鈴鹿東の走行データを持っていないか』と言われまして、自分が以前にシビックで走ったときのデータをお渡ししました。すると『これは何馬力くらいのクルマで、トルクはどのくらいあるんだ?』と聞かれ、『いや、そんなことは細かく解らないんですけれど』と答えたんです。
そうしたら『では、同じクルマで同じ時期に岡山国際を走ったデータはないのか?』とリクエストされたので、そのデータも提出しました。
こうしてチームでは情報分析が進んでいるので、もうギア比から想定タイムまで計算され尽くしているのではないでしょうか。

ドライバー同士については『どんなコースなんだ?』という質問も受けたことがありますが、実際にはレースウィークになって現地にはいってからだと思います。木曜日には徒歩でコースを見て回れる時間が設けられるので、ここで縁石のひとつひとつを確かめながら、『ここは、どこまで攻められるんだ?』などといった話をすることになるでしょうね」


WTCCの舞台となる全長2.2kmの東コースは、主にクラブマンレースなどが開催されている。ビッグレースといえば'90年代後半にJTCC(全日本ツーリングカー選手権)が開催されているが、どのようなレース展開になるかを谷口選手に予想していただいた。

「まず個人的な心情としてはフルコースの方が良かったんですが(笑)。
シーズンを通じて知らないコースで苦労していたりするので、鈴鹿のフルコースだったらデグナーとスプーン、130Rにシケインと来れば、そこいらでタイムを稼げるな、と思っていたんですが……。
東コースは僕がレースデビューした鈴鹿クラブマンレースで何度か走っていますが、そのころは2コーナーが最も接触の多いポイントでした。ただWTCCとなると接触がおきないであろう場所は……、無いですね(笑)。
スタート直後にストレートでクラッシュして、スタートラインさえ超えられない選手もいるのがWTCC。どのコーナーでもツーワイド、スリーワイドでの激しいバトルが演じられるでしょうから、どこで観戦していても楽しめるでしょう。
東コースとシボレークルーズの相性で言えば、エンジンパワーは耐久性を重んじて抑えている部分もあるので、ストレートでグイグイ抜いていくのは難しいかと思います。ただS字区間になるとクルーズが速さを見せるでしょう。
今年の傾向としてはストレートの速さはBMW、コーナーの立ち上がりはセアト、そしてコーナーリングはシボレーと、得意な部分がそれぞれ異なります。ゆえに一列で隊列走行しようとしても、得意・不得意があるのでどこかで必ず詰まってしまう。だからこそ、随所でバトルが勃発するのではないかと予想します」
ホームコースでの好成績に期待が高まる谷口行規選手。もちろん昨年に続いてのYOKOHAMAトロフィー獲得が期待されるところだが、鈴鹿・東での「WTCC Race of JAPAN」に向けて次のように意気込みを語ってくれた。

「今季はシーズンを通じて参戦していますが、残念ながらここまでトップ10以内でのフィニッシュが無く、YOKOHAMAトロフィーの獲得も出来ていません。
昨年の岡山ではトロフィーを手にしているので、ぜひ今年の日本ラウンドでもYOKOHAMAトロフィーをいただきたいと思っています」



一方の新井敏弘選手はラリーの世界チャンピオンがサーキットレースの世界選手権でどんな戦いぶりを見せてくれるのかが、まずは注目されるところ。レースファン、ラリーファンの双方から戦いぶりに期待が寄せられているが、こちらも鈴鹿ラウンドに向けての抱負を次のように語ってくれた。

「日本ではレースとラリーの両方に参戦するというのは珍しいケースですが、海外では例えば去年のWRC(FIA世界ラリー選手権)のフランスにイヴァン・ミューラー選手が出場していたり、F1にも乗ったキミ・ライコネン選手がラリーに出場したりしています。ラリードライバーのセバスチャン・ローブ選手も、シボレー・クルーズをドライブしていますしね。
日本ラウンドに向けては具体的な順位や成績というよりも、まずはしっかり2レースをともに完走することが目標。その上で実戦で経験を積むことによって、1レース目よりも2レース目では上の順位でゴールしたいと思っています」





2011年10月21日(金)に練習走行、22日(土)に公式予選、そして23日(日)に決勝レースが鈴鹿サーキット・東コースで行われる、WTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)の第21&22戦、「WTCC Race of JAPAN」。
ドライバーズタイトル争いも佳境を迎える中、世界最高峰の激しいバトルが日本を代表するサーキットコースを舞台に演じられる必見のレースだ。

そして日本人は谷口選手、新井選手に加えて、SUPER GTでは2010年開幕戦を制した吉本大樹選手がSUNREDからセアト・レオンを駆って参戦することも決定。
“サムライ・ドライバー”たちの活躍にも大いに期待が高まる一戦は、スタートに向けて静かにカウントダウンが始まっている。
 
 
[UPDATE : 30.Sep.2011]
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