一方、今年ニュルブルクリンクを舞台に戦われるVLN耐久レースシリーズに参戦して、奮戦しているMST開発部・技術開発1グループのエンジニア、斎藤宏之は現場の苦労について語る。
「VLNには開幕戦から24時間レース直前の第5戦までその都度現地入りしました。今年はこれまで一緒に戦ってきたブラックファルコンチームが車両をメルセデス・ベンツSLSに変更したということで、SLSに合うようなタイヤの開発を進めてきました。レースのたびに仕様を変えてライバルと同等それ以上に戦えるようにしてきました。
例えば当初280/680というサイズだったのですが、アンダーステアが強いというコメントがあったことから300/680サイズに変更して3月にフランスのポールリカールでシェイクダウン。そして直後のVLN開幕戦でクラス優勝ができました。ドライバーと共に順調にステップアップしていると感じています。
ニュルと日本で違うのは、『あのコーナーではこうだった、ああだった』という表現があまりないことです。コース全体を振り返ってざっくりとしたコメントが来ます。難しいやり方なのかもしれませんが、ベクトルが合えばレベルアップできるので問題はありません」
SP9-GT3クラスにメルセデス・ベンツSLSを3台、さらにVLNレギュラーのV5クラスに3台のBMW
Z4で参戦するブラックファルコンについて、斎藤は続ける。
「ブラックファルコンと組むことでSLSの方向性が明確になりました。ドライバーのレベルもそこそこ高いしフィードバックも大きいですね。それが次のステップにつながりますし開発のサイクルを早めてくれます」
今年はブラックファルコンの22号車がSP9-GT3クラスで堂々の4位入賞。セミワークス体制で臨んだアストン・マーティンも2台のザガートがSP8クラス5位と6位に入賞し、ヴァンテージがSP10-GT4クラス5位となった他、4つのクラスで優勝を遂げている。
その優勝車は、SP10-GT10クラスの100号車・BMW M3 GT4、SP3クラスの170号車・ホンダS2000、V4クラスの218号車・メルセデス・ベンツC230、V5クラスの225号車・ブラックファルコンのBMW
Z4で、V5クラスではADVANユーザーが1〜4位を独占した。