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2011年より全日本F3選手権に、横浜ゴムはタイヤのオフィシャルサプライヤーとして臨むことになった。

もちろん、横浜ゴムにとってF3は初めてのチャレンジではなく、広く知られているところでは、“F3世界一決定戦”としても位置づけられているマカオ・グランプリへの長年のタイヤ供給がある。さらに今季はFIAが新たに立ち上げたF3インターナショナル・トロフィーについても、5月にフランスのポーで開催された大会のコントロールタイヤをワンメイク供給している。
また近年は、ドイツF3選手権にもタイヤを供給。つけ加えるなら、全日本F3選手権が、まだタイヤオープンの頃は、他メーカーとともにしのぎを削り合っていたものである。

とはいえ、マカオ・グランプリやドイツF3とは環境や条件に異なる部分もあるだろうし、全日本F3選手権を戦っていたのも1987年まで。今と昔とでは、レースそのものが別物に近くなってさえもいる。
ここでは、全日本F3選手権で新たに用いられるタイヤの特徴、コンセプトなどを、MST部・技術開発2グループの小林勇一リーダーと、三戸有資エンジニアに聞いてみた。
 
小林 勇一
=YUICHI Kobayashi=


横浜ゴム株式会社
タイヤグローバル技術本部
MST開発部
技術開発2グループ・リーダー
三戸 有資
=YUSUKE Mito=


横浜ゴム株式会社
タイヤグローバル技術本部
MST開発部
技術開発2グループ
 
−全日本F3用のタイヤは、マカオGPやドイツF3用のタイヤと一緒なのでしょうか?

三戸エンジニア :
「マカオ用、ドイツ用、国内用のタイヤは、それぞれに違いはありますが、特にマカオ用とはまったく異なるものです。
というのは、マカオ・グランプリというのは全世界から集まってきたドライバーがイコールコンディションで戦えるよう、どこかで履き慣れたタイヤを使って、有利になることがないようにという取り決めがありますので。そういう意味では仕様はかなり違います」

小林エンジニア :
「基本はドイツのと、そう変わらないんですけど、ドイツと日本とでは気候も違いますし、当然サーキットの性格も違いますからね。それに日本でのF3の経験は、相当昔のことですから、データが不足しているんで、そのあたり蓄積していかなきゃいけないと考えています」


−そのあたり、他のカテゴリーからのフィードバックはあるのですか?

小林エンジニア :
「SUPER GTやスーパー耐久などのデータはある程度持っているんですが、開幕戦の鈴鹿なんかはタイヤへの入力が高いので構造耐久に厳しく、コンパウンドに対しても高熱になりやすく、ブローが発生しやすいので、少し心配しながら見ているんですけれどね」
 
−選手からのの反応はいかがですか?

三戸エンジニア :
「ウォームアップ性に優れるのが特徴だと、お褒めの言葉をいただきました。あと、昨年まで用いられていたタイヤと比べて、特に違和感なく乗れているというコメントもいただいています。
ただ、震災の影響で公式テストという場を踏まないまま、本番を迎えましたのでロングランがほとんどできていないという・・・」

小林エンジニア :
「でも、ライフに関しては、それほど心配していません。F3協会さんから頼まれたのかもしれませんが、過去には意識的に、かなりハードなコンパウンドを使って、ロングライフにしていたメーカーもあったそうです。でも、それだと、たとえばマカオに行って急に違う、ソフト系のタイヤを履いたら対応できない可能性もありますよね?
他社が供給していた昨年までは一般的なソフト系のタイヤを投入していたそうなんで、それ以上のライフがあればいい、そう考えて設計していますし、これからのレースを見ながらチェックしていく予定です」


−ワンメイクですから、ライフ絶対重視というわけではなく、それより安定した性能を、ということですね?

小林エンジニア :
「ただ、タイヤは基本的にセット数制限がありますから、予選で使って、レースで使ったら全摩耗していた、という状態では困るので、余裕を持って走りきれるだけのライフは確保しているつもりです」


−話は変わりまして、先ほどすごい愚問をしてしまったんです。安田裕信選手に、『GTでもヨコハマタイヤを使っているから、そのマージンはありますか』と。そうしたら、『構造もサイズも、みんな違うから関係ありません』って(笑)

小林エンジニア、三戸エンジニア :
(爆笑)

小林エンジニア :
「そうですね、ああいうGTカーと、フォーミュラカーのタイヤっていうのは違うものなので。まぁ、確かに同じメーカーのタイヤなので、傾向は似ているかもしれませんが、サイズが違いますからね」

三戸エンジニア :
「フォーミュラの方が、動きはクイックですから」

小林エンジニア :
「逆に言うと、ワンメイクで供給していますから、そういうことになってしまうと、『あそこだけヨコハマのドライバーだから、速いんじゃないか』って変な噂を立てられても困りますからね(笑)」

三戸エンジニア :
「ただ、コンパウンドの設計思想としてはカテゴリーを問わず、やっぱり社風があるような気が、僕はしています」

小林エンジニア :
「タイヤメーカーごと使う材料が、ゴムもそうですし、構造もそうですが、使っている材料はどうしても同じように、メーカーごとあるので、ある程度クセみたいなものは出てくるとは思いますけれど。ちょっと違い過ぎますよね(笑)。
スーパー耐久とSUPER GTで使っているタイヤだって、大きく違っていますし」


−その点、同じフォーミュラではどうでしょうか。ヨコハマタイヤはF4やSuper-FJにもタイヤを供給していますが。

小林エンジニア :
「カテゴリーごとタイヤの仕様は変えているのですが、ある程度はあります。基本的には安定した性能と品質、ワンメイクにはばらつきが少ない、それと中古タイヤで極端に性能が変わり過ぎない、そういうところに気をつけているつもりです」
 
−ところで、皆さん、全日本F3に取り組むのは今年が初めて。印象はいかがですか。

三戸エンジニア :
「チームやドライバーとのつながりは、まだ浅いわけですから、まだ引き出せていない部分は正直あるかもしれません」

小林エンジニア :
「その点は確かにあるかもしれませんが、我々はドイツの選手権もやっているので、同じようにやっていけばいいと。
F3のいいところはクルマも全世界共通なので、タイヤを供給する我々にすると、同じタイヤを供給できます。厳密に言うと気候も違うから突き詰めていけば仕様も変えなきゃいけないし、コンパウンドも変えなきゃいけないんですが、ある程度は同じタイヤで対応できるというメリットはあるんですよね。その方が安定したタイヤを供給しやすいと思うので」

三戸エンジニア :
「F3で結果を出された方は、皆さんステップされているので、レベルは高いんだろうな、と思いますね。
ちょっと台数が寂しいのですが、これからまた盛り上がってくれることを期待したいし、我々もそのために全力を尽くさないといけませんね」

小林エンジニア :
「台数はね・・・。20台ぐらいいないと、レースとしては面白みがなくなっちゃう。個人差もあるし、ウエイトハンデもないから、レースになると離れちゃう、単独走行も増えたりするので、そういう意味で台数が増えてくれないと。
でも、そのへんの捉え方は難しいですよね、SUPER GTのようにエンターテイメント的な要素でやるレースではないから」


−でも、ドライバーにしてみれば言い訳のできない、いちばんやりがいのあるレースかもしれません。安定した性能のタイヤを供給していただいて、それを使って成長し続けてもらえば。

小林エンジニア :
「そうですね、成長の過程を楽しめるという、通好みのレース(笑)。
そのためにも我々は、チームやドライバーさんたちに負けないよう、頑張っていきたいと思います」
[UPDATE : 10.Jun.2011]
           
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