2009年に山野哲也選手を破り念願だった全日本チャンピオンを初めて獲得した柴田優作選手。シリーズ連覇を目指した今シーズンは、速さだけでなく強さも身につけ5勝。一度もシリーズリーダーの座を譲ることなく、第8戦鈴鹿でシリーズ連覇を飾った。
「連覇を最大の目標にしてきましたし、最終戦の前で決めることができて本当に嬉しいですね」
今シーズンの柴田選手を見ていると『強さを備えた』という印象が強い。それは走りだけでなくパドックでの姿やコメントにも現れていた。
ディフェンディングチャンピオンとして挑んだ2010年。どんな気持ちでシーズンインしたのか?
「今年はクルマを新しくしたんです。新車で一から作らなければならない状態だったんですけれど、去年からのデータが生きていたものですから割と短期間でクルマを作ることが出来ました。
正直あまり練習をせずに開幕戦を迎えたんですが、備北でもいい結果を出せたので非常にスムーズにシーズンを迎えることが出来ましたね」
昨年も柴田選手が口にしていたスタートダッシュ。チャンピオン獲得に欠かせない要素の一つだ。
「シリーズを獲得できたという意味では、開幕戦の備北ラウンド。これ非常に重要なイベントで、2本目がウェットになってしまったので1本目のタイムでリザルトが決まってしまった。ここで確実に勝てたこと。コレが一番のポイントですかね。
去年勝てたことで自分のやることに自信があったものですから、1戦目の1本目勝負と分かっていた中でしっかりと確実に走ることが出来たのはそういう事かなと思います。
昨年までは勝つことタイムを出すことばかりを考えてきたんですけれど、ことしは割と周りの動きも見えてきたりとか、心にはかなりゆとりがありましたね」
開幕戦で気づいたことがあった。柴田選手のクルマだけフロントタイヤが浮いていたのだ。
「エキシージというクルマがミドシップの中でもリアヘビーのクルマなんですね。フロントが浮きやすいクルマではあるんです。だけどセットアップがよく決まっていてトラクションがかかっている時には、対角線のフロントが浮くんですね。これを映像や写真で見ているときに、フロントが浮いている時の方がタイムが出ているんです。
後から見て気づいたことなんですけれど、見て浮いていないときにはちょっとトラクションが足りない。トラクションを上げる方にセットアップしようかな?
とか。逆にそういう考え方もしてくるようになりました。それは意識していたので、周りの人から見てもそう見えたかもしれないですね」
ADVAN A050・G/2Sコンパウンドが発揮する低温路面での強烈なトラクション性能だからこそなせるワザ。シリーズポイントを追ってゆくと、昨年停滞していた夏場でも柴田の勢いは衰えていなかった。
「今年は北海道、もてぎ、鈴鹿の3つのラウンドでG/Sコンパウンドを履いたんです。これが最高のパフォーマンスを発揮してくれて、もてぎと鈴鹿では勝つことができました。
正直ADVAN A050は、低温からジムカーナでいう高温までカバーできていてタイヤにはかなりの安心感と他社を上回る性能がでています。そういった意味ではパーツに関する不安は全くなく、ドライビングに集中できるという部分ではありますね。今年は不安というのは全く無かったですね」
このころから柴田のコメントに『追われる立場』というフレーズが出てきた。
「う〜ん、去年まではほとんど気づけてないですけど、周りの人がボクを目標にしてくれているっていうのを少しずつ感じるようになってきた。だから目標になれるように、見本になれるように走りたいなと。逆に自分に言い聞かせて走ってましたけど。
去年と比べたら、こうも違うものかと思いましたけどね。まだまだ進歩しなきゃいけない部分があると思うので、甘えることなく頑張ります」
山野哲也選手に勝つことだけを目指していた2009年、速さだけでなく強さも身につけた2010年。次の目標を尋ねてみた。
「基本的に後輪駆動車が好きなんですね。一番の魅力はコントロールできた時の楽しさ、それとスポーツカーとしてのクルマのバランスの良さが非常に気に入っています。
エキシージは、それに特化しすぎた部分もありますけど運転の難しさでは一番かもしれませんね。でも、それを乗りこなすことがモチベーションの一つになっていて、非常にやりがいのあるクルマですね。だから現状ではN3、SA2の後輪駆動が自分の中では候補に上がっていますけれど、やはりN3クラスで3連覇を目指したいと思っています」