−タイヤサービスというのは、一言で言うとどんな仕事なのでしょうか?
菅原達雄さん (有限会社菅原興産) :
我々がやっているのはサーキット走行タイヤのサービスです。サーキットを走るユーザーが望むことを、横浜ゴムの代わりにする、ということですね。
基本的にはリム(アルミホイール)とタイヤを組み込む作業です。新品タイヤをフィッティングしたり、逆にユーザーが持ち込んできたタイヤをリムに組んだり、別のリムに組み替えたり、という作業です。
普段はスポーツランドSUGOにあるガレージで仕事をしています。鈴鹿へはサービスの手伝いできました。
小さなレースの場合は、各ガレージに機材がすべて用意されています。 タイヤを交換するにはチェンジャーという機械を使いますが、大きなレースの場合はガレージにある機械だけでは間に合わなかったりサイズが合わなかったりするので、トラックで補充の追加機材も運んできています。
SUPER GTはリムの幅が広いので、専用のチェンジャーが必要です。
−鈴鹿700kmレースはタイヤの本数も多く、忙しそうですね。
菅原さん :
ええ。普段の300kmレースでは、一度全てのタイヤを組めば仕事は終わるんですが、700kmの場合は走行後のタイヤがサービスへ戻ってきて、新しいタイヤに組み替えて渡すという作業があるんです。
いつもはレースを見ていますが、今回はその余裕がないですね。
−タイヤを組む時に気をつけていることはどんなことですか?
菅原さん :
それぞれのチームが使用しているリムはいろいろと種類があるため、表から組むリムもあれば裏から組むリムもあるんです。リムとタイヤによって、簡単に入るものと入りにくいものもありますし、タイヤとリムを壊さないように組むということに一番気をつけています。
ただ、これは経験を積まないと分かりにくいですね。
−サービスの作業をしているスタッフはどれくらいいるのですか?
菅原さん :
14〜5人ほどですが、実際にチェンジャーを使って組む作業を担当しているのは7〜8人です。タイヤレバーが飛んでしまったり、怪我をする可能性があるからです。やはり経験を積んだ人に作業してもらっています。
サービスの仕事を始める人には、一番最初はタイヤのADVANマークをスプレーで入れる作業や、エアーのバルブコアやバランスウェイトをはがす作業をやってもらいます。
次はセパレーターやバランサー。そうやって様々な作業を覚えてもらいながら、チェンジャーの使い方も学んでもらい、実際に作業してもらいます。
−他にも、作業ではどのように安全を確保しているのでしょうか?
菅原さん :
タイヤにエアーを入れる作業は要注意です。機械でエアーを入れるので誰でもできる作業ですが、リム側に僅かでも亀裂が入っていると、ビードがリムに上がる瞬間に破裂する可能性があるのです。
ですから安全のため、金網のケースの中でエアーを入れています。
−様々なタイヤと接する機会の多い仕事ですね。
菅原さん :
そうですね。だからなのでしょうか、地方レースの時にはアマチュアドライバーにいろいろなアドバイスを求められることがあります。内容は主に、空気圧やタイヤの使い方についてですね。そういう時のために、SUPER
GTのように大きなレースの時にはタイヤ設計者の方たちと話をして、いろいろ教えてもらっています。
自分が組んで渡したタイヤが勝ったら、やっぱり嬉しいですよ。逆に負けてしまった時には、何が原因で負けてしまったのか、すごく気になりますね。
−一言、サービスの現場からのメッセージをお願いします。
菅原さん :
機会があれば、是非実際に目の前でレースを見てほしいです。タイヤというものがどれだけ酷使されているのか、分かると思います。
例えば10トントラックに装着されているタイヤも過酷な仕事をしていると思いますが、スピードとしてはせいぜい最高で100km/hぐらい。サーキットでは200km/hオーバーのスピードから急ブレーキをかけてマシンが一気に曲がっていく。それに耐えているタイヤを見ると、タイヤの凄さというものが分かってもらえると思います。
レースの勝敗だけでなく、マシンの挙動に対して踏ん張っているタイヤの姿も、実際に感じてほしいですね。