IRC(インターコンチネンタル・ラリー・チャレンジ)は、2007年に発足した新しい国際ラリー・シリーズ。国際ラリーと言えばWRC(FIA世界ラリー選手権)が良く知られているところだが、IRCとWRCは似ているように見えて実際には異なる部分も多い。
まずWRCはFIA(世界自動車連盟)の世界選手権タイトルが賭けられているのに対して、IRCはそのようなタイトルを冠されていない。あくまでも独自タイトルによる国際ラリー・シリーズであるため、モータースポーツの格式で言えばWRCの方が上位に位置づけられる。
ともにFIAの管轄下にあるが、IRCはWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)と同じく、世界的なスポーツ専門テレビ放送局であるユーロスポーツ社がシリーズの運営を取り仕切っている。
IRCが発足した背景にはWRCの参戦コストが高騰を続けていたことがある。近年の景気後退に伴い、日本でもWRCから自動車メーカーが撤退するというニュースが大きく報道されたことは記憶に新しいが、一方で新興国は自動車の普及にともない自動車産業も活性化しており、モータースポーツ熱が高まっている地域も世界的には多い。
そこでWRCよりも低いコストで参戦出来る国際ラリー・シリーズとして発足したのがIRC。若いドライバーやプライベーターチームにも参戦しやすい環境を整えることで参加台数は増加、自動車メーカーや関連企業によるマニュファクチャラー登録も2010年は8社と盛り上がりを見せている。
マニュファクチャラー登録は自動車メーカー以外でも申請が可能で、仮にある企業やチームが登録した場合は、他のチームを含めて同じ車種全てが登録対象となってIRCのポイント対象とされる。
2010年のシリーズはヨーロッパを中心に全12戦のカレンダー。基本的に単独開催されるWRCとは異なり、各国の国内選手権などとして開催されてきている大会の中から、規模的に大きなものや伝統のある大会をピックアップする形でIRCのタイトルが賭けられ、各国を転戦するシリーズが組まれている。
そのため、競技運営のフォーマットは、基本的な規則はFIAが制定したものに基づくが、大会ごとの独自性もある程度は尊重されている。
競技の結果は大会として独自に発表されるが、その中でIRCに登録しているマニュファクチャラーとドライバー/コ・ドライバーに対してはIRCのシリーズポイントが成績に応じて付与されるという仕組みであり、IRCとしての公式記録にも残される。
IRCのランキング争いは4WD車を対象としたIRCに加え、2WD車を対象としたIRC 2WDカップもあり、それぞれにマニュファクチャラータイトルとドライバー/コ・ドライバーのタイトルが設定されている。
マニュファクチャラータイトルは各戦における各車種の上位2台がポイント対象として順位に応じて加点される。ドライバーとコ・ドライバーは各戦の順位に応じての加点となるが、ベスト7戦分の合計によりタイトルは決せられる。
なお、参戦するドライバーとコ・ドライバーは、WRCと同様にFIAが発給する国際ライセンスの所持が必要とされている。