2008年のモータースポーツカレンダーには、WTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)の日本初開催となる一戦が10月25日(土)〜26日(日)に掲載されている。
戦いの舞台は、F1グランプリも開催したことのある岡山国際サーキットだ。
ピエール北川さん :
岡山国際サーキットは、WTCCにとってジャストサイズだと思います。
木下隆之さん :
WTCCの"ガチンコバトル"には岡山国際サーキットはちょうどいいね。岡山って、どこからでも前の車を抜くことが出来そうな気がするコース。WTCCならコースのあちこちで、グイグイ攻めていくでしょう。
そうなると絶対に何かが起きる。
キノシタ的な見どころは1コーナーから2コーナーにかけての区間。1コーナーでインを奪っても決して安泰といかないのが岡山。そこが面白いね。
ピエール北川さん :
岡山って、コースが観客のいる場所からとても近いじゃないですか。それこそファンにとっては目の前で次々に激しいバトルが展開されることになるでしょうから、それはもう堪らないですよね。
木下隆之さん :
最新の大規模なサーキットと比べると、どこか"ストリートファイト"的な感じもして岡山は面白いだろうね。
ピエール北川さん :
僕はレース本番以外にも楽しみにしていることがあるんです。
それは、WTCCって開催する地元でレースウィークの木曜日に何かイベントをやって、ファンや地元の人々とコミュニケーションを図るんですよ。
世界最高峰のレースなんだけれど、親しみやすいというのもWTCCの魅力。日本ではどんなことをやるのか、今から楽しみですね。
開催が刻々と近づいている日本で初めてのWTCCにお二人が寄せる期待は大きい。
さらに話題はWTCC的な世界観についてへと膨らんでいく。
ピエール北川さん :
本音でいえば、WTCCのようなレースは日本の中だけでは成り立たないような気もします。
日本のレースって、参加しているのも基本的に日本人ドライバーが主体じゃないですか。日本人以外は"ガイコクジン"と括ってしまうような。
しかしWTCCは世界各地の出身者が集まっていて、バランスされています。自動車メーカーの国籍は限られるものの、例えば「BMWの中でも、オレは●×国の代表選手だ」というような感じでドライバーそれぞれがプライドを持っています。
こうしたワールドワイドなスケールもWTCCを魅力的にしているひとつの要素ではないですかね。
木下隆之さん :
スポーツ心理学で学んだことがあるんだけれど、やはりスポーツを応援するためには何か理由が無いと盛り上がらない。
そして理由として大きいのがナショナリズムなんだよね。世界的な大会なら自分たちはやっぱり日本人を応援したくなるし、国内の大会なら自分の出身地に縁のある選手を応援したくなるものでしょう。
ピエール北川さん :
そうですよね、応援するには選手と何らかの"接点"が欲しくなりますよね。
例えばWTCCのシボレー、アラン・メニュ選手が勝ったとしても、シボレーの母国・アメリカの星条旗ではなく、メニュ選手の母国・スイスの国旗が表彰台で揺れるわけです。
自動車メーカーも戦っているけれど、ドライバーが主役として戦っているのがWTCC。
個人的には日本初開催なんだから、ぜひ日本人ドライバーに走ってほしいですよね。
そう、木下さんが、ぜひ乗るべきですよ!
木下隆之さん :
もうすぐ、「乗ってください」ってオレのところに電話が来るでしょ(笑)。
「GAORA」で放送の解説を務める木下隆之さんもレーシングドライバーとしては本音のところぜひ参加してみたいというWTCC。
対談の最後を締めくくるにあたり、お二人には改めてWTCCの魅力と岡山で開催される"「WTCC
Race of JAPAN」観戦のススメ"を語っていただいた。
木下隆之さん :
最初に言ったように「究極のケンカレース」がWTCC。見どころは色々あるけれど、最近は"純粋なケンカレース"ってあまり見た記憶が無いでしょ?
ピエール北川さん :
そうですね、理屈抜きであんなに正々堂々と"激しい当たり"をするレースはないですよね。
木下隆之さん :
そうでしょ。日本にせっかく、そんな凄いレースが来るんだから、これを見ない手はないよね。
車種がワンメイクじゃないスプリントレースって日本にはあまり無いし、ドライバーの"一発集中勝負"は大いに魅力的。
最近は車の性能がどんどん上がるのと比例して、レースではドライバーのキャラクターがあまり出なくなってきている。その点、スプリントはドライバーの性格やその瞬間の精神状態といった、キャラクターが如実に現れるから面白いね。
ピエール北川さん :
F1なんかもそうですが、最近は「管理されたレース」が目立ちますね。
事前に綿密なシミュレーションがあって、作戦もピットインのタイミングから回数まで練りに練って。
車も空力性能が極まって、チームの資金力勝負みたいな面が表に出てくるようになった。
こうなると、戦っているドライバーの存在が相対的に薄れて、極端に言えば「制御されたマシンに乗せられている」というような感じになってしまいます。
その点、WTCCはとても良い意味でアナログな世界だと思うんですよ。
木下隆之さん :
そういった魅力がある上で、裏ではしっかりWTCCも綿密な戦略を練ったり、凄く技術的に優れた車を造り上げたりと、世界選手権らしい高度なことをやっている。
こうしたバックボーンがあるからこその世界選手権。それ無しに、ただぶつけ合っているとしたら、それは草レースの世界。
同じ世界選手権同士ということでWTCCとF1の特徴を比べてみると、F1が「自動車メーカーのレース」であるのに対して、WTCCは「ドライバーズレース」って言えるんじゃないかな。
2008年10月26日、岡山国際サーキットで決勝レースが開催されるWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)第21戦&第22戦「WTCC
Race of JAPAN」。
長くWTCCを見てきた木下隆之さん、ピエール北川さんともに「見逃せない一戦」と位置づけるこの大会、ぜひみなさんも岡山国際サーキットに足を運んで世界最高峰の白熱したツーリングバトルをお楽しみください!